ずっと真夜中でいいのに。が主題歌とオープニング曲を担当する映画「さんかく窓の外側は夜」が、1月22日より全国で公開される。
「さんかく窓の外側は夜」はヤマシタトモコの人気マンガを森ガキ侑大監督が実写化した作品。岡田将生と志尊淳が扮する心霊探偵バディがある連続殺人事件の解決に挑む除霊ミステリーエンタテインメントで、ヒロイン・ヒウラエリカ(非浦英莉可)役を平手友梨奈が務める。
本作の公開を記念して、ナタリーでは音楽、映画、コミックとジャンルを横断して全3回の特集を展開。音楽ナタリーでは、映画の世界観を彩るずっと真夜中でいいのに。の魅力をレビューで紐解く。またキャストの岡田、志尊、平手、そして森ガキ監督から寄せられた主題歌「暗く黒く」の感想コメントも掲載しているので、併せてチェックしてほしい。
文 / 森朋之
YouTubeやSNSを介してアーティストとしての魅力を示し、独創的な世界観を反映した生のライブによってファンとのリアルな結び付きを生み出す。さらにアニメ、映画などとのコラボレーションを重ねながら自らの音楽性を拡大し、新しいリスナーを獲得する──ずっと真夜中でいいのに。は、現代のポップミュージックの理想を体現していると言っていい。
ずっと真夜中でいいのに。は、作詞・作曲・ボーカルのACAねによる、特定の形をもたない音楽バンドだ。2018年6月に「秒針を噛む」のミュージックビデオを公開し、突如として音楽シーンに登場。起伏に富んだメロディ、深い物語と精神性を感じさせる歌詞、そして緻密に構築されたサウンドメイクが1つになった“ずとまよ”の楽曲は、瞬く間に音楽ファンの大きな関心を集めた。「秒針を噛む」のMVの再生数は7900万回以上(2021年1月18日現在)。現在も新たなリスナーを引き付けている。耳に残るメロディライン、何度聴いても新たな発見がある奥深さなど、本当に中毒性の高い楽曲だと思う。
その後もずとまよは「脳裏上のクラッカー」「ヒューマノイド」「眩しいDNAだけ」といった楽曲を次々と発表。音楽性と世界観を広げ続け、さらに多くのリスナーを魅了していく。2019年10月にリリースされた1stフルアルバム「潜潜話」はオリコン週間アルバムランキングで5位、iTunesアルバムランキングで1位を獲得した。ライブ活動にも積極的で、ワンマンライブのほか「FUJI ROCK FESTIVAL」「COUNTDOWN JAPAN」などの大型フェスにも出演。これまでに行ってきたYouTube Liveは累計50万人が視聴するなど、オンラインでも存在感を示している。
2020年8月には3rdミニアルバム「朗らかな皮膚とて不服」をリリース。先行配信された「お勉強しといてよ」のほか、繊細さと激しさを併せ持ったボーカルが印象的な「低血ボルト」、快楽的なグルーヴと切ない恋愛物語を映し出す歌が絡み合う「Ham」、グランジロック的なギターとともに鬱屈した感情が炸裂する「JK BOMBER」、“会いたい”という切実な思いを込めた歌が響く「マリンブルーの庭園」など幅広い表現に富んだ本作は、ずとまよの新たな進化を告げている。
また、ずとまよは2020年11月から2021年1月にかけて全国ツアー「やきやきヤンキーツアー(炙りと燻製編)」を開催。タイトル通り“ヤンキー”をテーマにしたこのツアーで、近未来的なステージセット、楽曲の世界観を増幅させる演出でさらなるスケールアップを果たした。特筆すべきはやはり、ACAねのパフォーマンス。正確なピッチ、歌詞がしっかり聴き取れる発声、ダンスを取り入れたステージングなど、すべての要素をアップデートさせ、ずっと真夜中でいいのに。のフロントマンとしての存在感を放っていた。
ずとまよは独創的な音楽スタイルを築き上げながら、新たな表現フィールドにトライし続ける。映画「さんかく窓の外側は夜」の主題歌として制作された新曲「暗く黒く」も、ずとまよの新しい魅力をダイレクトに感じさせてくれる楽曲だ。映画「さんかく窓の外側は夜」は、霊を祓うことができる冷川(岡田将生)と霊を視る能力を持つ三角(志尊淳)が、ある連続殺人事件の解決に挑むミステリーエンタテインメント。呪いを操る女子高生・ヒウラエリカ役として平手友梨奈が出演することでも話題を集めている。ACAねはもともとヤマシタトモコの原作マンガのファン。映画の題名とユニット名の“夜”が共通することもあって、主題歌を担当することになったという。ずとまよが映画の主題歌を手がけるのは、これが初となる。
「暗く黒く」は「触れたくて 震えてく声が 勘違いしては 自分になっていく」というフレーズと繊細な雰囲気のピアノの旋律で始まる。さらにアコギとドラムが加わることで高揚感を増し、サビに入った瞬間、ACAねが内に秘めていたエモーションを解放。その直後にテンポを上げ、聴く者を心地よいカタルシスへと誘う。ドラマティックに展開するメロディライン、奔放なアイデアが注ぎこまれたアレンジ、ジャンルを超越した音楽性が共存したこの曲は、ずとまよのクリエイティブの向上を証明している。孤独や痛みを抱えて生きてきた人が、他者との出会いによって少しずつ変化し、「選び変える勇気が こんなに尊いならば 疑う必要はない 騙し合う必要もない」という心境に至るまでを描いた歌詞は、映画のストーリーにしっかりと寄り添いながら、普遍的なメッセージに結び付いている。心の中に傷や葛藤を感じていたとしても、人との関わりの中で、必ずいい方向に向かえるはず──そんな願いを端的に示しているのが、「連鎖よ続け」というフレーズだろう。
「暗く黒く」は、全国ツアー「やきやきヤンキーツアー(炙りと燻製編)」でもいち早く披露された。すべての言葉に深い思いを込め、楽曲が進むにつれて感情を解放していくボーカルはまさに圧巻。豊かな表現力をたたえたバンドサウンドも印象的で、この先のずとまよのライブにとっても大事な曲になりそうだ。
さらにずとまよは、映画「さんかく窓の外側は夜」のオープニング曲「過眠」も担当している。震えるような歌声、シックな雰囲気のトラック、クラシカルなストリングスが溶け合うこの曲は、映画の始まりを切なく彩っている。映像、物語、音楽が生み出すケミストリーをぜひ、劇場で味わってほしいと思う。
2月10日には2ndフルアルバム「ぐされ」のリリースも決定した。このアルバムには「暗く黒く」「過眠」のほか、「お勉強しといてよ」「低血ボルト」、映画「約束のネバーランド」の主題歌「正しくなれない」など全13曲を収録予定。映画「さんかく窓の外側は夜」とのコラボレーション、そしてニューアルバム「ぐされ」によって、ずっと真夜中でいいのに。の世界はさらに広がっていくはずだ。2021年の活動にも大いに注目してほしい。