音楽ナタリー PowerPush - サンドクロック
友達とも仕事仲間とも違う 「2LDK」という新しいカタチ
性格がまるで違うからこそ、お互いに補い合える
──それまでのキャリアが違いすぎますからね。滝田さんは「やっと好きな音楽をやれる」という喜びが強かったんだろうし、永田さんはそれまでのライブ活動の中で「そんなに甘いものじゃない」ということを知っていたわけで。
永田 まあ、それでも2人で活動を続けて、コマを進めていくうちに「ここは自分が間違ってたな」とか「この部分に関しては、相手の言うことを聞こう」というのもわかってきて。そこでうまく混ざったんじゃないですかね。
滝田 「サンドクロックで成功したい」という気持ちの熱量は一緒だったと思うんですよ。確かにケンカは数え切れないほどしましたけど、「解散」という言葉は1回も出てないです。ぶつかっても、常に「じゃあ、どうしようか」という話をしていたので。
永田 結成するときから「2、3年後に“顔見るだけでむかつく”みたいな時期も来るから」という話をしてましたからね。実際そうなったときに「ほら、来た来た」みたいな(笑)。
滝田 その瞬間は「もう無理!」って怒ってるんですけどね(笑)。とにかくモメにモメて、その中で行き着いたのが今の関係なんですよ。だから、このタイミングでメジャーデビューできるのはすごくよかったと思います。
永田 もうモメることも残ってないしな。
──大人の恋愛みたい(笑)。そこには「サンドクロックとして活動していれば、必ず活路が見出せる」という確信もあったんでしょうか?
永田 そうですね。滝田に会ったときに、大衆に受け入れられやすいというか、「滝田はみんなに愛される要素を持ってるな」と思ったんですよ。僕はどっちかというと、賛否両論があるタイプなんです。学生のときから、クラスの中で好き嫌いが分かれるほうだったんで(笑)。
──すごく好かれるか、苦手と思われるかが分かれると。
永田 シンガーソングライターとしてもそういう感じだったんですよね。だから、いろんな人から支持を集めそうな滝田と組むのはいいんじゃないかって。
滝田 自分はわりと生真面目で、1つのことに集中すると、周りを無視してやってしまうところがあって。そうなると、どうしても見落としてしまう部分が出てきちゃうんですよね。逆に永田は常に視点を変えて見ることができて、状況適応力に優れているんです。それは僕が持っていないところだし、お互いに補い合えるんじゃないかな、と。
──なるほど。ルーツになっている音楽に関しては?
永田 それも全然違いますね。僕はジェイソン・ムラーズ、エド・シーランみたいなヒップホップのノリがあるアコースティックな音楽が好きで。
滝田 僕はサンドクロックを結成するまではほとんど洋楽は聴いてなくて。スピッツ、Mr.Childrenなどの歌モノの曲が好きでしたね。
──確かにまったく違いますね。
永田 そうですね(笑)。僕はラウル・ミドンも好きなんですけど、「State of Mind」を完コピして路上ライブでカバーしても、全然人が集まらないんですよ。でも、ゆずの「いつか」を2人でやると、ワーッと人が集まってくれたりして。そういう状況を見ると、自分の好きなノリを貫いて浮いてしまうより……めちゃくちゃうまくなれば別なんでしょうけど、もっと幅広い人たちに受け入れられる曲で勝負したいというのも、ユニットを組んだ理由なんですよね。聴きやすくて、しっかり日本語が乗った歌というイメージですね。
初めての共作で新しい扉が開いた
──サンドクロックとしてのライブを始めてから、すぐに手応えは感じられたんですか?
滝田 最初のライブは、永田佳之、滝田周のツーマンライブだったんです。それぞれのお客さんに来てもらって、ライブの最後に「実は今日からサンドクロックとして一緒にやります!」と発表して。そのときに(メジャーデビューミニアルバム「EPOCH」に収録されている)永田の「1+1」、僕の「モノクローム」を一緒に歌ってるんですよね。もともとあった曲を2人で歌うためにアレンジして。
永田 お客さんも盛り上がってくれましたね。
滝田 まあ、ちょっとお客さんが分かれてたけどね(笑)。
永田 (永田と滝田の)どっちかを観に来てるわけやからな。まあ、それは今も同じなんですよ。お客さんの中には“永田派”“滝田派”があったりするので。もちろんサンドクロックとして応援してくれる人も多いし、全然気にしてないんですけどね。
──シンガーソングライター同士、ライバルみたいなところもある?
永田 そうですね。路上ライブをやってた時期に、滝田が「週に1曲ずつ持ってくるようにしよう」って言い出したことがあって。1週間に1曲のペースだから、いくつかはヘボい曲も入ってきちゃうんですよ。そういうときに相方が「おお!」と思うようないい曲を持ってくると、サンドクロックとしてはうれしいんですけど、個人的には「ヤバいな」って焦るというか。
滝田 うん、それはありますね。
──そうやって切磋琢磨できるのも、シンガーソングライターユニットの強みなんでしょうね。メジャーデビューミニアルバム「EPOCH」にも2人の曲がちょうど半分ずつ収録されていますが、1曲目の「EPOCH ~始まりの詩~」の歌詞だけは、滝田さんと永田さんの共作。
滝田 このアルバムのために作った曲なんですけど、歌詞を一緒に書いたのは初めてですね。今まではずっと、おのおのが曲を書いて、作ったほうがアレンジや歌い分けも決めてたので。
永田 共作はなかなかうまくいかないんです。一緒に作ったら、必ずぶつかるし、意見が分かれるじゃないですか。そうなると「じゃあ、自分でやる」ってことになるので。
滝田 そうそう(笑)。「EPOCH ~始まりの詩~」も最初から共作するつもりではなくて。もともと僕が作っていたんですけど、メジャーデビューのタイミングということもあるし、「今までの自分よりも一歩踏み出した歌詞にしたい」という気持ちがあって。新しいタッチで書こうと思ったんですけど、なかなかうまくいかなかったんですね。そのときに「永田のアイデアをもらおうかな」と。で、「ここを埋めてみてくれない?」と歌詞を渡したんです。
永田 埋めてやりました(笑)。「わかりやすい歌詞を書こう」という話があったから、そこを自分がやったという感じですね。もともと滝田はわりと抽象的な歌詞が多くて、僕はどっちかというとわかりやすく書くのが好きなので。
滝田 最初は「2人で書いたら違和感が生じるかもな」と心配してたんですが、実際はそんなこともなくて。聴いてみたらちゃんとまとまっているし、しかも、僕だけでは出せない世界観もある。サンドクロックとしても、新しい扉が開いた曲だと思いますね。
永田 そう、意外と混ざるんやなって。
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収録曲
- EPOCH ~始まりの詩~
- 1+1
- グリーディーランド
- サロペット
- IN THOSE DAYS
- モノクローム
サンドクロック Release One-Man Live
「EPOCH」
- 2015年7月18日(土)
神奈川県 Yokohama O-SITE
OPEN 17:30 / START 18:00 - 2015年9月13日(日)
福岡県 ROOMS
OPEN 17:30 / START 18:00 - 2015年9月22日(火・祝)
東京都 Mt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASURE
OPEN 17:30 / START 18:00
サンドクロック
それぞれソロのシンガーソングライターとして活動していた滝田周(Vo, Key)と永田佳之(Vo, G)が、ライブで共演したことをきっかけに2011年5月に結成したアコースティックデュオ。「ひっくり返すたびに入れ代わり、混ざり合う砂時計」というユニット名の由来の通り、音楽的なルーツもアーティストとしてのタイプもまったく違う2人が互いの個性をぶつけあっている。2012年に島村楽器主催の音楽コンテスト「HOTLINE2012」で全国グランプリを獲得。当初は神奈川・伊勢佐木町でストリートライブを中心に活動していたが、2013年5月よりメインの活動場所を都内のライブハウスにチェンジする。2014年12月に初の全国流通作品「LOG」を発表。2015年6月にメジャーデビュー作となるミニアルバム「EPOCH」をリリースする。