音楽ナタリー PowerPush - サンドクロック
友達とも仕事仲間とも違う 「2LDK」という新しいカタチ
滝田周(Vo, Key)、永田佳之(Vo, G)のシンガーソングライター2人によるユニット、サンドクロック。生まれや育ち、性格、演奏する楽器、声質、音楽性など何もかも違う2人は、衝突と試行錯誤を繰り返しながらユニットとしてのスタイルを確立し、6月にミニアルバム「EPOCH」でメジャーデビューを果たす。親しみやすくポップな曲調を得意とする滝田、リアリティのある歌と豊かなグルーヴを感じさせるサウンドを志向する永田が作り出す楽曲は、J-POPファンを中心に幅広い支持を獲得しそうだ。
今回音楽ナタリーでは滝田、永田にインタビューを実施。「2LDKをルームシェアするような感覚」で結成されたというサンドクロックのこれまでのキャリアを語ってもらった。
取材・文 / 森朋之 撮影 / 小坂茂雄
このまま何もしなかったら、人生の最後に後悔すると思った
──取材の前にライブを観させてもらったのですが、本当に2人の関係が対等なんですね。どちらもメインボーカルで、それぞれが作詞作曲した楽曲を歌うというスタイルで。
永田佳之 もともとソロのシンガーソングライター同士でしたからね。サンドクロックとして活動することで、それまでやってきたことだったり、パーソナルな部分を削ってしまわないようにしたくて。それは結成したときから話してました。
滝田周 うん、そうですね。
──どんな経緯で、2人でユニットを組むことになったんですか?
滝田 ライブハウスでたまたま対バンしたんですよ。それが4年くらい前なんですけど、お互いの曲を聴いて、衝撃を受けて。
永田 声がいいと思ったのかな……? まあ、その頃の滝田は音楽を始めたばっかりですからね。
滝田 そう、24歳のときに始めたんですよ。そのときのライブはまだ3回目くらいですね。
永田 だからピアノもうまいわけではなくて。
滝田 下手でしたね(笑)。超緊張してたし、震えながらやってたんじゃないかな。
──それにしてもかなり遅いスタートですよね。24歳って、社会人になりたての年齢じゃないですか。
滝田 そうですね。周りの友達や家族からも「おいおいおい、どうした?」みたいに言われました(笑)。小さい頃から音楽に興味があったし、歌うことも好きだったんですけど、けっこう厳しかったんですよ、ウチの家庭が。両親が教師で、わりと道が決まっていたところがあって。
永田 しかもお父さんは野球部の監督ですからね。滝田はコネでピッチャーやってたそうです。
滝田 そこはコネじゃないけどね(笑)。ずっとギターやピアノをやってみたいと思っていたし、軽音楽部に入りたいと思ったこともあったんですけど、学生時代はずっと野球をやっていました。
──でも、24歳のときに好きなことをやろうと決めた?
滝田 はい。大学まではきっちり人生をこなしてたんですよ。法学部に進んで、就職の内定ももらっていたし。でも、そのときに自分の人生の未来像が見えてしまった気がして。このまま何もしなかったら、人生の最後に「なんだったんだろう?」と思うだろうなって……。音楽を始めるのはこのタイミングしかないと思ったし、僕としては「やっとやりたいことができる!」という前のめりな感じだったんです。
最初の2年くらいは絶え間なくケンカしてた
──永田さんはすでにシンガーソングライターとして活動していたんですよね?
永田 そうですね。ギター1本を持って日本一周の旅を終えて、大阪から上京してきた頃に、滝田と出会って。
滝田 僕はとにかく「ライブだ! うれしい!」っていうテンションで、共演者にめっちゃ話しかけてたんですよね。でも、永田の雰囲気は真逆だったんです。
永田 「俺に話しかけるなよ」っていう感じだったんで。
滝田 楽屋の隅のほうに1人で座ってましたからね。僕はそういう雰囲気に気付かず、「何歳ですか?」「どんなアーティストが好きなの?」って話しかけて(笑)。
永田 (笑)。まあ、仲良くしゃべってたんじゃないですか。
滝田 そのときから少しずつ話していく中で、本当に自分とは違うというか、知れば知るほど「真逆なんだな」ということがわかってきて。曲のタッチも性格もまったく違うんだけど、それが面白いなと思ったんですよね。で、「一緒にやってみたらどうだろう?」という話をして。
永田 最初にストリートライブをやってみたんですけど、そのときの雰囲気もよかったんですよね。初めて横に並んだときに、「こっちのほうが売れるかもな」って思って。
滝田 絵的にもね。
──1人でやるより、2人でユニットを組んだほうが注目されやすいだろう、と。
永田 それもありましたね、正直。2人並んだときにしっくりきたし、ギター(永田)とピアノ(滝田)というのもちょうどいいし、作る曲のキャラは違うけど、ユニットとして成立させられるんじゃないかなって。その上で「おのおのやりたいことをやる」というワガママなコンセプトなんですけどね(笑)。一緒にユニットを組もうと思ったとき、最初に「ルームシェアしようぜ」って言って誘ったんですよ。
滝田 「サンドクロック」というユニットを成立させるためには、2人が集まれるリビングと個々の部屋が必要だよねって。2LDKですね。
──“2人でユニットを組む=2LDKの部屋で共同生活する”というイメージ?
永田 はい。最初の2年くらいはひどかったですけどね。ケンカが絶えなくて。
滝田 いつもぶつかってましたね。
永田 マジメになるポイント、大事にしているところが全然違うんですよ。「どうしてそこをいい加減にやるかな。そこは大事やろう!」っておのおのが思ってる状態で。
滝田 例えば路上ライブのときって、「サンドクロックです。聴いていってください」みたいなPOPを手書きするじゃないですか。僕はそこにもこだわって、キレイに書きたいんですよ。でも永田にやってもらうと、適当な字でバーッと書いて。
永田 ハハハハハ(笑)。
滝田 ライブハウスに出るときのセットリストも適当で、字とか間違えてるし。
永田 こっちとしては「(内容が)わかればええやろ」っていう感じだったんですけどね。僕のほうからするとその頃の滝田は、どっちかと言うと「楽しければいい」というテンションだったと思うんですね。
滝田 実際、楽しかったからね。音楽をやり始めたばかりで、全部が新しかったんで。
永田 僕からすると「楽しいだけじゃなくて、もっと伝えないといけないことがあるやろ?」という感じだったんですけどね。
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収録曲
- EPOCH ~始まりの詩~
- 1+1
- グリーディーランド
- サロペット
- IN THOSE DAYS
- モノクローム
サンドクロック Release One-Man Live
「EPOCH」
- 2015年7月18日(土)
神奈川県 Yokohama O-SITE
OPEN 17:30 / START 18:00 - 2015年9月13日(日)
福岡県 ROOMS
OPEN 17:30 / START 18:00 - 2015年9月22日(火・祝)
東京都 Mt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASURE
OPEN 17:30 / START 18:00
サンドクロック
それぞれソロのシンガーソングライターとして活動していた滝田周(Vo, Key)と永田佳之(Vo, G)が、ライブで共演したことをきっかけに2011年5月に結成したアコースティックデュオ。「ひっくり返すたびに入れ代わり、混ざり合う砂時計」というユニット名の由来の通り、音楽的なルーツもアーティストとしてのタイプもまったく違う2人が互いの個性をぶつけあっている。2012年に島村楽器主催の音楽コンテスト「HOTLINE2012」で全国グランプリを獲得。当初は神奈川・伊勢佐木町でストリートライブを中心に活動していたが、2013年5月よりメインの活動場所を都内のライブハウスにチェンジする。2014年12月に初の全国流通作品「LOG」を発表。2015年6月にメジャーデビュー作となるミニアルバム「EPOCH」をリリースする。