サンダルテレフォン初のリミックスアルバム「REMIXES」がリリースされた。
サンダルテレフォンは以前より作品のカップリング曲としてリミックス音源を発表し、ライブのセットリストにも頻繁に組み込んできた。ライブの戦力にすることを前提にリミックス音源を制作しているグループは、アイドル以外のシーンを見渡しても珍しいだろう。「REMIXES」では2020年8月発表の1stミニアルバム「Step by Step」の全収録曲をクラブダンスミュージックにリアレンジ。全8トラックを通して楽曲、そしてグループの新たな一面を楽しむことができる。
またこのリミックスアルバムの発売ともう1つ、サンダルテレフォンにとっての年内の重大なトピックがメンバーの西脇朱音の卒業だ。西脇は12月29日のライブをもって芸能界から退く予定で、かねてからの夢であった気象予報士の試験合格に向けて勉学に専念。2019年春の始動以降、4人体制で変わらず活動してきたサンダルテレフォンにとって、1つの大きな節目となる。音楽ナタリーでは個別のソロインタビューとメンバー全員へのインタビュー両方を行い、それぞれが抱える思いや「REMIXES」の話を聞いた。
取材・文 / 近藤隼人撮影 / 臼杵成晃
小町まい インタビュー
メンバー同士ライバル意識がある
──西脇さんが卒業するという話を最初に聞いたとき、素直にどう思いましたか?
まず寂しかったですね。「辞めちゃうんだ……」って。驚きはありましたが、今は気持ちが落ち込んでいるわけではなく、前を向いて送り出そうという思いになっています。
──最年長メンバーである西脇さんは、サンダルテレフォンにどんな色や魅力をもたらしたと思いますか?
朱音はグループの中で一番アイドルっぽいメンバーじゃないですか。新規ファンの方がサンダルテレフォンの現場に行こうと思うとき、朱音がその入り口になっていたのかなと感じます。あと、グループをまとめているのは(夏芽)ナツなんですけど、朱音も最年長として裏で優しい言葉をかけてくれていて。いつも笑顔でニコニコしているところに助けられてきました。私はアイドルになりたての頃、嫌なことがあるとそれと向き合うことを放棄しがちだったんですよ。朱音も最初の頃は似ているところがあって……年下の私が言うのもおかしいんですけど、成長してきて泣かなくなったし、すごいなと尊敬することが多くなりました。
──ではサンダルテレフォン結成から約2年半、自分自身が一番成長したと思うところはどこでしょう?
私、前は自分のことしか考えてなかったんですよ。初歩的な話だと、ダンスの振りをちゃんとそろえようという意識が芽生えましたし、周りに合わせる協調性を持てるようになりました。活動を始めた頃は自分のことでいっぱいいっぱいだったんです。でもちょっとずつ余裕が出てきて、周りが見えるようになりました。
──グループ全体のことを気にかけられるようになったんですね。ほかのメンバーの特徴で、自分にはない、うらやましいと思うポイントはありますか?
ナツはMCのトーク力や、質問に対して即座にちゃんとした答えを返せるところ、(藤井)エリカは私だったら我慢できないなと思うことにもしっかり大人な対応ができるところがすごいと思います。朱音はやっぱり愛嬌ですね。人に好かれる能力がうらやましいなと感じます。
──メンバー同士の結束力もここまで一緒に活動してきて変わってきました?
そうですね。最初の頃は楽屋で特に何も話さず、何も確認せずにステージに上がっていて、それを注意されることも多かったんですよ。そういうことに対する意識が最近は変わってきたかなと思います。
──どういう理由で以前は楽屋内で話さなかったんでしょう?
何なんですかね……サンダルテレフォンはあまりほかの人に干渉しないメンバーばかりなんですよ。あと、たぶんですが、お互いにライバル意識みたいなものが強かったのかなと思います。少なくとも私はほかのメンバーに対するメラメラした気持ちがあって。みんながみんな自分が一番と考えていたほうがグループとして上に行けると思うので、ライバル意識は大事ではあるし、今も負けたくないという思いはあるんですけど、そういう気持ちの持ち方というか、メンバーへの意識が全体的に変わってきました。
──グループとして着実に経験を積んで、階段を登っているという実感もあります?
対バンライブなどで、新規ファンの方の数が増えていることを感じられるようになりました。楽曲に助けられているところが大きいですが、うれしいですね。あと、リリースイベントを全国でやらせてもらえるようになり、私たちのライブを観てもらえる機会が増えたと実感しています。でもコロナの影響でできないこともあったし、自分的には今年はもっと上にいけると思っていたので悔しい気持ちもあります。来年は3人体制になりますが、私は今のサンダルテレフォンのよさを残しつつ、グループの雰囲気をガラッと変えたいなと考えているんです。「いい意味で変わったな」「3人体制もいいな」と感じてもらえるようになりたいです。
──2022年にクリアしたい自身の課題を挙げるとしたらなんでしょう?
ダンスですね。パフォーマンス全体。今よりレベルアップしたいなとずっと思っているんですけど、なかなかできてなくて。
──歌についてはどうですか? YouTubeにカバー動画もいくつか上げていて、それなりに自信を持っているのではと感じているのですが。
いや、ないです(笑)。いろんなアーティストさんの歌を聴いたときに感じる感動の気持ちを、自分はまだお客さんに与えられないと思うので、もっと上手になりたいです。
夏芽ナツ インタビュー
卒業を受け入れられなかった
──夏芽さんは西脇さんの卒業の話を最初どう受け止めましたか?
実感がなくて、受け入れられないという気持ちが大きかったです。3人になることが全然想像できなくて、4人で話し合ったらもしかしたら卒業を考え直してくれるんじゃないかという淡い期待もあって。でも、卒業の理由を聞いてからは応援しようという気持ちがどんどん大きくなりました。その理由がもしグループの未来のことだったら話し合って解決できるかもしれないけど、個人の夢があるということで、マイナスな辞め方じゃないなって。ファンの人も寂しいはずだから、朱音が心置きなく卒業できるように私たちが気持ちよく送り出すことが大事だなと思っています。
──西脇さんは夏芽さんにとってどんな存在ですか?
私が一番頼りにしてきたメンバーですね。見た目はホワッとした雰囲気があるんですけど、意見をはっきり言ってくれるので、MCのことなどで朱音に相談することも多かったです。あと、グループ内のことをよく見てくれていて、元気のないメンバーがいると一番に気付いてくれるんですよ。みんなのお姉ちゃんのような存在です。
──3人体制になり、ダンスの立ち位置や歌割りが変わってくることに対して不安は覚えませんでした?
「Follow You Follow Me」の「NonNonNon」や、「SYSTEMATIC」の「あまのじゃく?」など、朱音にしか雰囲気が出せないパートもあるので正直不安ですね。でもここで代わりの子を新たに入れてしまうと、その新メンバーにも、朱音にも、ファンの方にもよくないなと思っていたので、朱音が抜けたところを3人でカバーしていくのがいいなと考えています。朱音の真似をするのではなく、まいちゃんのセクシーな歌い方とか、違う方法でカバーできたらなって。
──単に人数が変わるのではなく、新しい見せ方も試してきたいと。ここまで約2年半活動してきての手応えはどのように感じていますか?
活動を始めた頃は、「曲がいい」という視点でこんなに多くの方にグループのことを見つけてもらえると思っていなかったです。初期に出ていた対バンライブも今と界隈が違ったし、当初思っていたのとは違う方向に進んでいった感覚があります。去年の夏にミニアルバム「Step by Step」を出したあたりから、私としては手応えを感じるようになってきて。サンダルテレフォンの売り出し方や、グループの魅力の出し方がわかってきた感じがあります。
──以前のインタビューで話していた「楽曲に負けたくない」という思いも有限実行できている?
サンダルテレフォンの名前が知れ渡り始めた時期は楽曲が先行していたんですけど、最近はパフォーマンスを褒めてくださる声も増えてきていて。ちゃんと有言実行できているというか、目に見える形でお客さんに伝わってるんだなと実感しています。
──各メンバーの長所やキャラクターも、よりはっきりしてきたのではないでしょうか。
そうですね。まいちゃんは歌がすごく上手だし、ステージに立ったときのカリスマ性が圧倒的にあって。身に付けようと思っても身に付けられないオーラ、自分のスタイルを持っていると思います。あと、甘え上手な一面もあるんですよ。私は「自分でやらなきゃ!」と思って人に頼れないタイプなので、そういうところもうらやましいです。エリカはメンバーの中で特にネガティブ思考な面があるんですけど、自分のことを客観的に見れていて、すごく努力家なんです。そして朱音は独特のアイドル的なオーラが唯一無二で、スタイルもいいところがうらやましいですね。知識も抱負なのでMCではすごく助けられてます。これからは知識が欠けたグループにならないよう、頭をよくしてきたいです(笑)。
──(笑)。ほかに2022年の抱負や目標があれば聞かせてください。
この先どうなるのか、まだ見えないことが多くて不安や怖さもあるんですけど、私は4人のサンダルテレフォンがあったことを忘れたくないし、ファンの方にも忘れてほしくないんです。3人になってパフォーマンスの迫力を出すのも難しくなると思いますが、朱音という素敵なメンバーがいたことをいろんな人に知ってもらうためにもサンダルテレフォンを大きくしていきたいです。
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藤井エリカ / 西脇朱音 インタビュー