音楽ナタリー Power Push - 高岩遼(SANABAGUN.)×尾崎世界観(クリープハイプ)×社長(SOIL & "PIMP" SESSIONS)
“メジャー”の先輩と語るSANABAGUN.の過去現在未来
別に渋谷ストリート発じゃねえし
──SANABAGUN.のパフォーマンスを観ているとラップが大きい要素という気がしていましたけど、意外にもMCの岩間(俊樹)さんが加入したのはけっこうあとなんですね。
高岩 そうなんですよ。
社長 でもみんなラップするよね? 地下道みたいなところで撮影してるMV(「もう実家帰りなよ」)のやつとか。
高岩 みんな一応しますね。
尾崎 練習してるわけじゃないんですか?
高岩 いや、してないっす。あれはもう遊びです。
社長 へえー。みんなすごいよなーあれ。
尾崎 そういう感じがすごいんですよね。サッとできるところが。
高岩 「もう実家帰りなよ」はとりあえずラップクルーにディスられようと思って作ったやつなんですけど(笑)。
社長 あははは(笑)。でも、みんながラップして最後にMCの彼が出てくるじゃん? やっぱ段違いだよね。キター!って感じするもん。
高岩 そうですよね。やっぱラッパーとしてフロウがやっぱありますね。
──2013年4月以降は渋谷駅周辺の路上で腕を磨いていき、いろいろなライブハウスのイベントにも呼ばれるようになりました。2014年8月にはP-VINE RECORDSからアルバム「SON OF A GUN」もリリースして、音源でも一部の音楽ファンに知られる存在になりますね。
高岩 SANABAGUN.はもともと俺がジャズエイジというかエンタテインメント性の高いスタイルのジャズが好きっていうことで、最初からライブもショースタイルでやってるんですけど、路上で立ち止まってくれる人に与えるイメージとか、世間の捉え方が少し違うんだなとは思いましたね。例えば「SON OF A GUN」を出させていただいたときも、「渋谷ストリート発」みたいな触れ込みで。別に渋谷ストリート発じゃねえしみたいな。
一同 (笑)。
高岩 そのジレンマは今も抱えつつ。
社長 ああ、SOILも最初はね、「ストリートでジャムセッションを重ねて……」みたいなこと言われてたけど、実はSOILとしてストリートライブって1回しかやったことないんだよ。メンバーそれぞれはやってるんだけど。うちらはそのときからちゃんとハコでやってたの。そういうちょっとした誤解みたいなことはわかります。特にそれを訂正することでもないけど。
高岩 そうなんすよねー。
尾崎 僕はまだ路上を観れていないんですよね。観たいんですけど。
高岩 もうすぐやらなくなっちゃうんです。あと3回なんで、ぜひ(※取材は10月上旬)。
尾崎 観に行きます。「お金入れてください」って、あの感じいいですよね。今、音楽がいろんな方法でタダで聴かれてく中で、ああやって路上で、聴かせてる側から「金くれ」ってのは逆にカッコいいというか。見ていてなんか刺激受けますね。
高岩 とんでもないっす。「お金くれー」って必死っすね(笑)。
メジャーはいいところですよ意外と
──今回「メジャー」というアルバムでメジャーシーンに打って出るわけですが、もとからメジャーデビューしたいという気持ちはあったんですか?
高岩 そうですね。半分ジョークで半分本気なんですけど、「NFLのハーフタイムショーでやろうよ」みたいな話をしてバンドが始まってるんで、でかいとこでやりたいなという気持ちはありました。「メジャー行ったら路上やんなくていいらしいよ!」「うおー給料もらえんの!」みたいな感じで今回の盤を出させていただいて、ここからっすね。
社長 いいね。そういう目標がちゃんとハッキリしてるのってすごい大事だと思う。
尾崎 今メンバーはみんな働いてるんですか?
高岩 何人かバイトしてますね。僕はこの間辞めました。
尾崎 なんのバイトしてたんですか?
高岩 代官山のフレンチレストランのウェイターやってました。金持ちのちゃらんぽらんにサービスするっていう。
尾崎 ちゃらんぽらん(笑)。
──尾崎さんと社長は、メジャーで初めて音源が出るときの心境っていかがでしたか?
尾崎 うれしかったですねえ。11年ぐらいかかってメジャーデビューしたので。ずっと悔しい気持ちがあって、やっと出せたときは復讐したっていう感じもありましたし、やっぱりすごいうれしかったです。でも出してからが大変でしたね。メジャーデビューを目標にしてやってきたけど、そこから始まるっていうことに改めて気付いたときに、常に作品を出し続けるのはしんどい部分もあるなあって思いましたね。
高岩 なるほど。
尾崎 ずっと必死にCDにしたいと思って、誰にも頼まれずに自ら作っていたものが、逆に作らなきゃいけなくなって、「この日に出すからここまでに作る」っていう感覚になっていったので。求められるのはうれしいけど、やっぱり中途半端なものは作りたくないし、そこは大変でしたね。
社長 僕らは逆に、インディーズ時代がないんですよ。SOIL & HEMP SESSIONSとしてスタートしたときから、メジャー契約を目標にいろんなライブハウスに出たり、自分たちでプロモーションしたりして。インディーズレーベルから声をいただきつつも、お断りしてメジャーにこだわってデビューしたんです。で、ビクターと契約したタイミングで鍵盤のメンバーが変わってSOIL & "PIMP" SESSIONSって名前になったので、SOIL & "PIMP"の歴史とメジャー活動期間はほぼ同じで。
──なぜメジャーにこだわったんですか?
社長 やっぱりステージングにこだわりたい、ちゃんと予算がある中でパフォーマンスを見せたい、とタブゾンビがよく言っていて。照明とか演出とかも含めてトータルで魅せられるライブをやるためにはメジャーと契約しなきゃいけない、みたいなことはメンバー間でよく話してました。プラス、その先に海外での活動っていう目標があったから、そのためのステップとしてメジャー契約したかったというのもありますね。
高岩 俺らも、もっと作り込んだライブができるようになるのはうれしいですね。
社長 俺は尾崎くんの言っていた点では、大変と思ったことがないんですよ。SOILは楽器で感情表現をするので作詞の作業が無いっていうのもあると思いますが。制作をしていく上で締切を設定されることはもちろんあるけど、その締切があることでクリエイティビティが向上すると思っています。スタッフとも、一緒にミーティングをして感想を言い合ってクオリティを高めるっていう作業はするけど、「こういうのを作って」とか音楽的には口出しされない12年を過ごしているので、僕はいい環境にいさせてもらってると思います。いいところですよ意外と、と言いたいですね。
高岩 そうなんですね。
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収録曲
- SANABAGUN Theme
- カネー
- J・S・P
- デパ地下
- 渋谷ジョーク
- 居酒屋JAZZ
- 在日日本人
- まさに今、この瞬間。
- 人間
SANABAGUN.(サナバガン)
高岩遼(Vo)、岩間俊樹(MC)、隅垣元佐(G)、小杉隼太(B)、櫻打泰平(Key)、澤村一平(Dr)、高橋紘一(Tp)、谷本大河(Sax)からなる、メンバー全員平成生まれの8人組ヒップホップグループ。2013年の結成当初から東京・渋谷駅周辺で毎週路上ライブを開催しスキルを磨く。2014年8月にアルバム「SON OF A GUN」をリリースし、タワーレコードのバイヤーが選ぶ「タワレコメン」に選出された。2015年10月にビクターエンタテインメント内レーベル・CONNECTONEからアルバム「メジャー」でメジャーデビューを果たした。
クリープハイプ
尾崎世界観(Vo, G)、長谷川カオナシ(B)、小川幸慈(G)、小泉拓(Dr)からなる4人組バンド。2001年に結成し、2009年に現メンバーで活動を開始する。2012年4月に1stアルバム「死ぬまで一生愛されてると思ってたよ」を、2013年7月に2ndアルバム「吹き零れる程のI、哀、愛」をリリース。2014年12月には「寝癖」「エロ / 二十九、三十」「百八円の恋」といったシングル曲などを収めた3rdアルバム「一つになれないなら、せめて二つだけでいよう」を発表した。2015年は5月に映画「脳内ポイズンベリー」主題歌の「愛の点滅」をリリースしたほか、4カ月間におよんだ全国ツアーの総集編となる単独公演を東京・日比谷野外大音楽堂で実施。9月には明星「一平ちゃん 夜店の焼そば」のCMソングを収録したニューシングル「リバーシブルー」をリリースした。
SOIL & "PIMP" SESSIONS
(ソイルアンドピンプセッションズ)
元晴(Sax)、丈青(Piano)、タブゾンビ(Tp)、秋田ゴールドマン(B)、みどりん(Dr)、社長(アジテーター)からなる6人組バンド。東京・六本木のクラブで知り合った仲間で2001年に結成される。2003年に「FUJI ROCK FESTIVAL '03」に出演して以来、国内外のフェスに参加。2004年に1stアルバム「PIMPIN'」でメジャーデビュー。2006年には椎名林檎とともに映画「さくらん」のテーマ曲を担当。次々と作品をリリースしながら、「グラストンベリー・フェスティバル」「モントルー・ジャズ・フェスティバル」など海外の大型フェスに出演し、ワールドワイドに活動する。2013年には10周年を記念してRHYMESTER、椎名林檎をそれぞれフィーチャリングゲストに迎えたシングル、全曲コラボレーションアルバム「CIRCLES」、初のベスト盤「"X" Chronicle of SOIL& "PIMP"SESSIONS」をリリース。2015年7月にブルーノート東京でライブを行い、その模様を高音質で録音したライブアルバム「A NIGHT IN SOUTH BLUE MOUNTAIN」も発表した。