ナタリー PowerPush - サンボマスター
メンバーが熱く明かす 音楽の力、音楽の宿命
サンボマスターが、キャリア初となるベストアルバム「サンボマスター 究極ベスト」をリリースした。
ベスト盤には、CD2枚組に計34曲、初回限定盤DVDにビデオクリップとライブ映像それぞれ11曲+特典映像「10年分の『そのぬくもりに用がある』」という計57曲を収録。ディスク収録容量の目一杯まで詰め込んだその内容は、メンバー主導で決められたものだという。過剰なまでに情熱的で、愚直にロックンロールに身を捧げ、そしてときに世の中の常識からはハミ出してしまうサンボマスターというバンドのあり方を、とてもよく象徴する1枚になっている。
3月23日にリリースされる予定だったベスト盤は、東日本大震災の影響でリリースが4月6日に延期された。震災の日以降、メンバーの3人も福島県出身の山口隆(Vo, G)を中心に自らTwitterなどで情報発信し、さまざまなアクションも起こしてきた。
未曽有の災害の中で、表現者たちの1人ひとりに「自分には何ができるのか」という問いが突きつけられたとも言える今回の震災。彼らがそのときどんなことを思ったのかも含め、話を訊いた。
取材・文/柴那典
僕は聴いた人の闇を食いつくしたい
──この取材をしているのが3月28日です。大きな震災から2週間がたち、いろんな人が、いろんなことを考え、行動しています。そして、音楽がこういうときにすごく心の支えになるということを僕自身も実感したし、そういう声を多く聞いています。そういう中で、山口さん自身がどういう思いで今回のベストアルバムを届けたいと思っているのか、まずはそこから今回のインタビューを始めたいと思うんですけれども。
山口隆(Vo, G) どんな思い……それを言うには、言葉を選ばなきゃいけないですね。だから乱暴な質問と言っちゃあ乱暴な質問だとは思うんですけれど……。やっぱり、僕は、聴いた人の闇を食いつくしたいんですよね。その人が夜に寂しくなったりするようなときに、ロックンロールで、その闇を食いつくしたい。そういうことです。
──わかりました。震災以降の話は改めて後にするとして、まずは、今回のベスト盤について聞かせてください。この作品は、非常に濃い内容になっていると思うんです。単純に曲数も多いし、1曲1曲を単に並べたというよりも、バンドのあり方をすごく凝縮している感じがする。
山口 これはね、ニューアルバムのつもりで作ったんですよ。
──というのは?
山口 この値段にしたのも、57曲入れようと言ったのも、音楽好きな人に「やりやがったな!」「あいつら、やっぱり面白ぇな」って思ってもられるものを作りたかったからなんですよね。「この値段でこんなに曲数入れて、あいつら会社のエラい人からイヤな顔されただろうなあ!」という。それに、内容を突き詰めると、そういうものにならざるを得なかったんですよね。みんなが手にとりやすくて、濃いものを目指すわけですから。
──ちなみに、ベストを出そうと決まったのはいつ頃のことでした?
木内泰史(Dr) 去年の12月ですね。
山口 「3月下旬リリースなんですけれど、どうですか?」って最初に言われた。「あ! これ、期末に合わせてきたな」って思いましてね(笑)。でも、ここでノーと蹴るよりも、これを利用してロックンロールと胸を張って言えることをやったほうがいいなと思って。それで、最初に値段を交渉したんです。
CDとDVDの容量一杯ギリギリまで入れた
近藤洋一(B) 最初にメーカーの方が提案してくれたのは、シングルの17~18曲を収録して、初回限定盤にDVDを付けてという形でしたね。
山口 それを聞いて「だったらもっと安くしてくれませんかねぇ!?」って言ったんです。CD2枚組にして、初回盤にはDVDを付けて税込みで3675円くらいにしたい。通常盤もCD1枚分の値段にしたい、と。そしたら「わかった、そこは飲もう」と言ってもらったんで、それから57曲入れることに(笑)。
近藤 制作費もバッチリかけましたね。
──リマスタリングもやってるんですか?
山口 やってます! 全曲やってますとも。もちろん、当時の雰囲気を損なわないようにはしましたけれど。丁寧に作りましたよ。金かかったなあ、ホントに。
──DVDの収録内容も含めて「ベストを出すならここまでやらないと」という意識があったんでしょうか。
山口 そうですねえ。いつのまにかブレーキが効かない感じになってました。
木内 最初にCDとDVDの容量を聞いたんですよ。ソニー・ミュージックが保証する、どんな機種でも再生できるCD1枚のギリギリの容量が78分16秒で、DVD1枚が120分。その容量一杯ギリギリまで入れようと思いましたね。「もっと入れてもいいんじゃないか?」って言ったんですけど、「じゃあ画質を落とすしかないね」って言われて、それは諦めました(笑)。
山口 副音声のコメンタリーもたっぷり入れましたからね。
[DISC 1] サンボマスターグレイテストヒッツ
- 世界はそれを愛と呼ぶんだぜ
- 希望の道
- 世界をかえさせておくれよ
- できっこないを やらなくちゃ
- 光のロック
- 青春狂騒曲
- ラブソング
- 歌声よおこれ
- 君を守って 君を愛して
- 美しき人間の日々
- very special!!
- I Love You
- きみのキレイに気づいておくれ
- 手紙
- 全ての夜と全ての朝にタンバリンを鳴らすのだ
- 月に咲く花のようになるの
- そのぬくもりに用がある
[DISC 2-1] 日本語ロックの金字塔
- さよならベイビー~2003年 スプリットアルバム「放課後の性春」
- これで自由になったのだ
- 熱中時代
- ふたり~2003年 スプリットアルバム「放課後の性春」
- 新しく光れ
- 人はそれを情熱と呼ぶ
- 週末ソウル
- 夜汽車でやってきたアイツ
- 想い出は夜汽車にのって
- 愛しさと心の壁
- 新しい朝
- 朝
- 愛しき日々
[DISC 2-2] あなたに贈る完全未発表音源
- スーパーガール(新曲)
- 絶望と欲望と男の子と女の子(Live/2006年5月11日 渋谷クラブクアトロ)
- 夜が明けたら(Naked/2003年10月20日 スタジオインパクト)
- あなたといきたい(Live/2010年7月17日 ZEPP TOKYO)
初回盤DVD収録内容
- ビデオクリップで綴るサンボマスター篇
- 日本語ロックの金字塔ライブ篇
- 10年分の「そのぬくもりに用がある」
サンボマスター
山口隆(Vo, G)、近藤洋一(B, Cho)、木内泰史(Dr, Cho)によるスリーピースバンド。メッセージ性の強いストレートな歌詞と、ファンクやソウルからの影響を感じさせるロックンロールサウンドを特徴とする。
2000年に結成。2003年7月、オナニーマシーンとのスプリットアルバム「放課後の性春」でメジャーデビュー。同年夏の「FUJI ROCK FESTIVAL '03」ROOKIE A GO-GOステージに出演し、12月には1stアルバム「新しき日本語ロックの道と光」をリリースする。2005年発表のシングル「世界はそれを愛と呼ぶんだぜ」がドラマ主題歌に起用され、大ヒットを記録。さらに2007年9月に東京・両国国技館にてワンマンライブ「世界ロック選抜<ファイナル>サンボマスター vs サンボマスター」を敢行。それまでに発表していたレパートリー全55曲を6時間かけて披露し、大きな話題を呼んだ。
その後も、シングルがCMソングやアニメのエンディングテーマに起用されたことで、着実に新しいファンを獲得。2011年4月には、CD2枚組に計34曲、初回限定盤DVDにビデオクリップとライブ映像それぞれ11曲+特典映像という、計57曲が詰め込まれた初のベストアルバム「サンボマスター 究極ベスト」をリリースした。