ナタリー PowerPush - SALU×tofubeats
メジャーフィールドで躍る、2人の地方在住者
SALUが2ndアルバム「COMEDY」をリリースする。ナタリーではこれを記念して、SALUが話してみたいアーティストとの対談を企画。そこで彼が挙げたのがtofubeatsの名前だった。
以前からtofubeatsの音源を愛聴し、できることなら「tofuくんのトラックにラップを乗せてみたい」と思っていたというSALU。SALUの楽曲を「一貫して自分の人生をテーマにしてる感じがいいなと思うし、新鮮に映る」と高く評価するtofubeats。両者の初対面の場では、新作の話題のみならず、神戸と厚木という地方在住者ならではの“東京”観やスタンスも語られた。
取材・文 / 三宅正一(ONBU) 撮影 / 高田梓
お会いできてホントにうれしい限りです
──まずは今回、SALUさんがtofuさんと対談したいと思った理由から聞かせてください。
SALU 1年半くらい前にtofuくんのインストを地元の先輩に聴かせてもらって「なんだこれ!?」って思ったんですよ。
tofubeats なんでインストを?
SALU 曲はtofuくんがERAさんとやった「夢の中まで」だったんですけど。聴かせてくれたのは、あぐらCREWっていうグループの先輩で。その人はウソつきなんで、「これ、俺が作ったビートなんだよ」って言ってたんですけど(笑)。なんとなくウソだってわかってたから、「なんすか、これ超ヤバいじゃないですか! 誰だか教えてくださいよ」って聞いたらtofuくんのビートだったという。音楽的にすごく面白かったし、驚きもあって。それからずっといつか関わらせてもらえたらなと思ってたんですよね。でも、みるみるうちに有名になられてそろそろ声をかけないと一生交われないだろうなって。
tofubeats あははははは(笑)。SALUさんから対談の話が来てるって聞いたときはめちゃくちゃビックリしました。ワーナーの人に「なんかの間違いじゃないですか?」って聞いたくらいで。
SALU 間違いじゃないっす(笑)。
tofubeats SALUさんのプロデューサー、BL(BACHLOGIC)さんのトラックつながりで言えば、DOBERMAN INCは高校時代にリアルタイムで聴いてたので。BLさんの動向はずっと追ってたし、SALUさんの曲もいちリスナーとして聴いていて。BLさんがSALUさんのために「One Year War Music」を立ち上げて、それからメジャーデビューするという流れももちろん把握してます。今日、初めてお会いするのでひさしぶりにSALUさんの曲を聴きながらここに来たんですけど。
SALU ありがとうございます。すいません、突然声をかけて(笑)。
tofubeats いえいえ。でも、それこそ「夢の中まで」を最後にヒップホップのトラックメイクをやってなかったから余計にビックリしたというのもありますね。
SALU 自分のスキルがそこに追いつけるなら、tofuくんがやられてるジャンルの垣根を越えるようなトラックにラップを乗せてみたいなと純粋に思うし。だから今日、こうやってお会いできてホントにうれしい限りです。
SALUさんは一貫して人生をテーマにしてる感じがいい
──tofuさんはラッパーとしてのSALUさんをどう見てるんですか?
tofubeats 今日改めて聴いて、やっぱり独特なスタイルだなと思いました。セルフボースティングするでもなく、そこを完全にはスルーしすぎるでもないバランスで、SALUさん以外の何者でもないスタイルを確立していて。目の前の事柄をラップする人はほかにもいますけど、SALUさんは長い射程で人生を描いていますよね。僕はラッパーのスキル的なうまい、下手にあんまり興味がなくて。曲でその人がどういう人かわかるタイプのラッパーが好きなんです。僕が最近そういう曲を作ってないから余計にそう思うのかもしれないんですけど、SALUさんは一貫して自分の人生をテーマにしてる感じがいいなと思うし、新鮮に映りますね。
SALU 光栄です。
──tofuさんが現行の日本語ラップシーンをどう見ているかも気になります。
tofubeats 昔から洋邦問わずヒップホップは大好きで。結局、自分のヒップホップを突き詰めていくとディスコになってたみたいなところがあるんですよね。ヒップホップから学んだことを昇華したらディスコになった、みたいな。その上で日本語ラップシーンを見ていると、目に見えている人だけじゃなく、もっと大きいものとか遠くにいる人を相手にしてもいいのになって思うところはあります。
──メジャーのフィールドで活動する上で日本語ラップ村の向こう側を見ることをSALUさんは意識してると思うんですけど。
SALU 村という言葉をお借りするなら、僕は村から出ているとも思うんですけど、最終的には村を捨てたくなくて。
tofubeats 基本的な足場はそこにあるというか。
SALU そうっすね。村の外に出て狩りをして、たまに村に戻ってみんなに「俺はこんなのゲットしたんだけど、みんなはどうよ?」って言ったり、村のみんなが「こんなのできたよ」って見せてくれたら、俺がそれを外に持っていきたいという気持ちがあって。シーンが僕のことをどう思ってるかはわからないですけど、僕は勝手にそう思ってます。
- SALU ニューアルバム「COMEDY」 / 2014年5月21日発売 / 2916円 / TOY'S FACTORY / LEXINGTON / One Year War Music / TFCC-86472
- 「COMEDY」
収録曲
- 100th Monkey
- New Balance
- 東京ゾンビ
- Comedy
- BMS
- Goodtime
- Weekend
- ムーンチャイルド
- Spaceboy
- 堕天使パジャマ
- Sphere
- Painkiller(Bonus Track)
- tofubeats ミニアルバム「ディスコの神様」 / 2014年4月30日発売 / unBORDE
- 初回限定盤 [CD+カセットテープ] 2160円 / WPZL-30807~8
- 通常盤 [CD] 1620円 / WPCL-11708
CD収録曲
- ディスコの神様 feat. 藤井隆
- Her Favorite feat. okadada
- 衣替え
- HANERO
- ディスコの神様 feat. 藤井隆(tofubeats remix)
- ディスコの神様 feat. 藤井隆(Carpainter remix)
- ディスコの神様 feat. 藤井隆(Instrumental)
- Her Favorite feat. okadada(Instrumental)
- 衣替え(Instrumental)
初回限定盤カセットテープ収録曲
- ディスコの神様 feat. 藤井隆 カセットver.
- ディスコの神様 feat. 藤井隆 カセットver.(remix)
SALU(サル)
1988年、北海道生まれのラッパー。2010年に当時はまだ無名の存在だったにもかかわらず、SEEDAが所属するSCARSの「CASH & THE CASHER」で客演ラッパーとしてフィーチャーされる。翌2011年にはSEEDA「黙る時代は終わり」、JAY'ED「ブレイブ・ハート」、SIMON「Change My Life」といった楽曲に次々とフィーチャーされ、話題の存在となった。2012年3月、BACHLOGICが立ち上げたレーベル「One Year War Music」から1stアルバム「In My Shoes」を発売。翌年6月にはミニアルバム「In My Life」でTOY'S FACTORYよりメジャーデビューし、2014年5月に2ndアルバム「COMEDY」をリリースする。
tofubeats(トーフビーツ)
1990年11月26日生まれ。神戸在住のトラックメーカー / DJ。中学時代からWEB上で自作の音源を発表し、高校時代には自作のCD-R作品をリリースする。2010年3月発表の「Big Shout It Out」、2012年6月発表の「水星 feat. オノマトペ大臣」がそれぞれiTunes Storeチャートを中心に話題を集める。2013年4月に初のオリジナルCDアルバム「lost decade」をリリース。同年11月には森高千里やの子(神聖かまってちゃん)をボーカリストに起用したミニアルバム「Don't Stop The Music」でワーナーミュージック・ジャパン内のレーベル・unBORDEからメジャーデビューを果たした。2014年4月には藤井隆をフィーチャリングした新作ミニアルバム「ディスコの神様」を発表した。