音楽ナタリー Power Push - Salley

地盤を固めたSalleyが放つ、無限の可能性

スタンディングライブに影響を受けた曲作り

──アルバム「Clear」には配信シングル「kodama」「Home」「Winding Road」も収録されていますが、制作が始まったときはどんなビジョンがあったんですか?

上口 アルバム全体のことというより、まずはいい曲を作っていこうと思ってました。うらら、スタッフと話し合う中で「今までのSalleyらしさもありつつ、新しい風も吹かせたい」というイメージがあったんですけど、それが曲としてつながったのが「kodama」だったんです。アルバムのマスタリングも「kodama」のサウンドが基準になってるし、全体的な方向性を示してくれた曲だなって。

うらら いつも上口くんが自分で歌ってるデモが送られてくるんですけど、「kodama」のデモを聴いたときはすぐに「これは絶対にシングルになるよ」って連絡したんです。メロディにも心をつかまれたし、歌詞もまったく悩まなくて。「曲が歌詞を連れてきてくれた」って言うとカッコよすぎますけど、まさにそんな感じでスッと出てきたんですよね。上口くんは「自分の作った曲は全部かわいい」という感じだから、「この曲は突出してる」って言ってもピンと来てなかったみたいですけど(笑)。

上口 作ったばかりのときは距離が近すぎて、それがどういう曲かよくわからないんですよ。

──「kodama」が持っているダイナミックなポップネスは、確かにアルバムの全体像につながってますよね。「Wonderland」「スカイライン」もそうですが、今回のアルバムは開放的で派手な曲が多い印象もあるので。

Salley

上口 それもライブの影響が大きいと思います。アルバムの制作に入った頃はライブに対しても手応えを感じていたし、「盛り上がれる曲をもっと作りたい」と思っていたので。特に大きかったのは、去年の夏のワンマンライブ(2016年7月に東京・WWWで行われた「Salley Live 2016 SUMMER『Clear』」)ですね。スタンディング形式のライブだったんですが、お客さんが手を挙げてくれたりして、すごく盛り上がってくれて。そのライブをきっかけにして「じっくり聴く曲だけではなくて、バンドが好きな人なども楽しめるような曲、ライブで一体感が生まれる曲をもっとやりたい」という気持ちが強くなりましたね。

うらら それまでのSalleyのワンマンライブは途中でアコースティックコーナーがあったり、しっとり、ゆったり聴くっていう感じだったんです。それが自分たちの強味だとも思っていて。「Salleyの曲はゆったり聴きたいでしょ?」という気持ちもあったし。でも去年の夏のライブはあえてお客さんを煽ったり、「声出して!」って言ったりして。そのときに「本当はお客さんも声を出したいし、盛り上がりたいんだな」って実感したんですよね。ただ、盛り上がれる曲は限られているし、もっともっと増やしていかないとなって。実は「こういう曲をやりたい」というアイデアもたくさんあるんですよね、自分の中には。まだ上口くんには言ってないけど。

上口 初めて聞きました(笑)。

うららが歌うとちゃんとSalleyの歌になる

──アルバムにはエレクトロテイストの「SPECTRUM」も収録されていて。上口さんは以前からダンスミュージックにも興味があったんですか?

上口浩平(G)

上口 好きですね。テクノ、エレクトロなどのダンスミュージックのシンセの音、ドラムの感触もすごく好きで。そういう音楽の質感は世の中にあふれているし、「Salleyもこういう曲をやるんだ?」という引っかかりになったらいいかなって。ただ、僕はクラブシーンで音楽をやってきた人間ではないので、どうしても少しロック寄りになるんですけどね。

──「SPECTRUM」と並んでいるのがアコースティックテイストの「真昼の月」というのも興味深いです。サウンド、アレンジの幅がすごいですよね。

うらら そこはライブのセットリストを作るときの感覚に似ていて。静かな曲のあとにいきなりアガる曲が来ると「おお!」って思ってもらえるかなって。1曲ずつではなくて、アルバムの流れで聴いてほしいという気持ちもありますからね。

上口 どんなタイプの曲でも、うららが歌うといい感じになるし、ちゃんとSalleyの歌になることも大きいんですよね。ジャンル的に「これは合わないな」という曲がないというか。

うらら 楽しく歌ってるだけなんですけどね(笑)。これは上口くんもそうなんですけど、最近すごく思うのは、音楽に対して先入観がないってことなんですよ。「アイドルの曲は聴かない」とか「売れてるJ-POPは好きじゃない」みたいなこともまったくないし。私は自分の歌に対してずっとコンプレックスを感じていたんですけど、オールジャンル、どんな曲も歌えるのは自分の強味かなって。友達とカラオケに行っても「うららが歌うと、全部Salleyの曲みたいになるね」って言われるんですよ。ほかの人の曲をSalleyの曲にしちゃいけないんだけど(笑)。

上口 ハハハハハ(笑)。

うらら あと、上口くんの作る曲は基本的に難しいんですよ。それを歌いこなせると「イエーイ! 歌えた!」ってうれしくなるし(笑)。それは今回のアルバムも同じですね。今まで以上にいろんなジャンルの曲があるので。

3rdアルバム「Clear」 / 2017年2月8日発売 / Victor Entertainment
初回限定盤 [CD+DVD] 3780円 / VIZL-1089
通常盤 [CD] 3240円 / VICL-64692
CD収録曲
  1. kodama
  2. Wonderland
  3. Winding Road
  4. 小さな嘘
  5. 真昼の月
  6. SPECTRUM
  7. カノジョとカレシ
  8. 言い訳ガール
  9. スカイライン
  10. Home
  11. Clear
初回限定盤DVD収録内容
  • kodama(Music Video)
  • 流星ラヴァー(Music Video)
  • キスしてbaby(Music Video)
  • 冬が来る(Music Video)
  • キスしてbaby(Live at Shibuya www on July 10, 2016)
  • きみのヒーロー(Live at Shibuya www on July 10, 2016)
  • OFF SHOT
「Clear」リリース記念ミニライブ&ジャケットサイン会
  • 2017年2月11日(土・祝)
    東京都 タワーレコード新宿店
    START 15:00
  • 2017年2月12日(日)
    大阪府 タワーレコード梅田NU茶屋町店
    START 13:00
  • 2017年2月12日(日)
    愛知県 タワーレコード名古屋近鉄パッセ店
    START 18:00
Salley(サリー)
Salley

大阪出身のうらら(Vo)と福井出身の上口浩平(G)により2012年に結成された男女デュオ。2013年5月にフジテレビ系アニメ「トリコ」のエンディングテーマ「赤い靴」でデビュー。うららの透き通るような歌声と哀愁を帯びたロックサウンドで描くオリジナルの世界観が話題になり、同作は「2013上半期USEN HITランキング」のJ-POP部門で1位に輝いた。2014年4月に1stアルバム「フューシャ」を、2015年7月に2ndアルバム「エメラルド」を発表。2017年2月にはニューアルバム「Clear」をリリースする。