ナタリー PowerPush - Salley
カラフルポップな1stアルバム「フューシャ」
280馬力ある車が40キロで走る“余裕感”
──「プレゼント」は、ギターのカッティングが印象的ですね。
上口 「あたしをみつけて」で、うららの声と楽曲の相性が合っている曲が作れて自分の中で納得した部分もあったんですけど、それだけじゃない、違う色も見せたいと思って作りました。攻めてる感というか、トゲ感っていうのを出したいと思って、J-POPをベースにして例えばフュージョンとか、そういうアプローチをちょっとだけ入れてみたいなって思って。
──なるほど。
上口 レコーディングのミュージシャンの方々がうまい人たちばかりなので、この曲は特に楽しかったですね。「あれやってください。これやってください」って言ったら、さらにすごいものが出てくるので、どこまで行くんだろうってワクワクしながら。
──この曲にはベースに山口寛雄さん、ドラムに中村優規さんが参加されてますよね。
上口 実はバックミュージシャンの方がすごいスキルを持ってるんやけど、曲の世界観を大切にしてシンプルなことをやるっていうのがSalleyの音楽のこだわりでもあるんです。280馬力ぐらいの車が40キロ出すときの、あの“余裕感”みたいな(笑)。
──あはは(笑)。
うらら 速度守ってるみたいな。
上口 これまでの作品ではそれがすごく出せているなと思っていて。でもせっかくアルバムなので、そういったリミッターを解除してミュージシャンの方たちにも攻めのアプローチをしてもらいたいと思ってこういう16ビートのスリリングな楽曲を作りました。結果すごく満足しています。
うらら 「プレゼント」のレコーディングは本当に楽しかったですね。リズム録りのときに他の皆さんのやりとりを見ているのも楽しかったし、こういうファンキーな曲を歌えることもうれしかったですね。さっき「バラードのほうが自分のフィールドだ」って言いましたけど、この曲を上口くんが送ってきたってことは、私こういうのも歌っていいんだって許可されたっていうような感覚があって。で、この曲を聴いたときに「Tomboy」って言葉は絶対に入れたいなと思ったんです。
──「おてんば娘」っていう意味ですよね。
うらら その意味を聞いたときに、すごくかわいいと思ったんです。女の子だけど“boy”が付いているのってかわいくないですか? 私、小さい頃に趣味が女の子らしくないって言われたことがあって、それが納得がいかなくて。で、大学時代の先輩に「うららはわかりやすい形のおてんば娘だ」って言われて妙に納得したことがあったんですね。そういう経験を全部肯定したいという気持ちがあって、そこから書いていきました。
──では小さい頃の自分に向けて歌っている?
うらら 幼い頃の自分に向けながら書きつつ、今現在自分の居場所がないって感じている人とかに聴いてもらって、「大人になればそういうものから解放されるんだな」「好きなことやっていいんだな」って思ってもらえたらいいなっていう感じです。
──アルバムの最後を飾る「My little girl」はティンホイッスルやフィドルがアイリッシュな雰囲気を醸し出す、Salleyらしい1曲ですね。
上口 サビのあとにもう1つサビがあるっていう構成の楽曲作りたいなと思って作りました。どうなるか心配な部分はあったんですけど、うららが伸びやかに歌ってくれたので、結果壮大な感じになりました。
──この曲のうららさんの歌い方って日本民謡っぽい気がしたんですがいかがでしょう?
うらら 私も意識してはいないんですけど、そういう民謡っぽい歌い方をする癖があるみたいで。自分的には曲調に合わせて歌ったら自然とそうなっただけなんですけど、歌いやすかったですね。一番高いところで力を抜けたというか。
──楽曲のアイリッシュの雰囲気と、うららさんの民謡っぽい歌い方が妙にマッチしていると思いました。
うらら アイルランドにも八百万信仰みたいな考え方があるらしくて、日本の文化と通ずるものがあるのかもしれないですね。どちらも同じ島国の文化だし。私、アイルランド民謡と知らずに日本の童謡だと思って聴いていた曲もたくさんあったりしたので。
──聴いていてすごく癒されるというか、この曲でアルバムが終わるのはすごくいいですね。
上口 ありがとうございます。ディレクターの案で、ドラムロールで始まって終わるっていう構成にしたんです。そういうアレンジも含めて、自分の想像していたものよりも、すごくいい形で仕上がったと思います。
うらら ドラムロールの終わり方が、なんかこう鼓笛隊が横を通り過ぎてまた旅していくのを見ているような感じになったというか。アルバムが「その先の景色を」っていう2人で初めて作った曲で始まって、この先どうなるのかなって期待してもらえるようなこの曲で終わっているのが、自分的にもすごくお気に入りです。
まだ自分たちも知らないSalleyを見つけにいきたい
──こうして作り終えてみて、今の手応えはいかがですか?
うらら まだSalleyっていうユニット自体の歴史は浅いけど、結成してからこれまでのSalleyの気持ちがすべて詰まった紹介盤になったと思います。
上口 最初も言ったかもしれないですけど、全曲に全力投球できたので満足感もありますし、逆に次はまた新しいことにもチャレンジしてみたいという気持ちも出てきました。僕ら自身もまだ知らないSalleyを見つけに行くきっかけの1枚になったというか。
──リリース後には初のワンマンツアーがスタートします。前回取材させていただいたときに、「広島の「SOUND MARINA '13」に出演して『私はまだ3曲の人間だと実感した』」(参照:Salley「その先の景色を」インタビュー)とおっしゃっていましたけど、今の心境はいかがですか?
うらら あのときは大多数の人に観られることがこんなに疲弊するっていうことが実感としてわかっていなかったので、さすがに広島のときよりは多少成長はしていると思います(笑)。プレッシャーはもちろんありますけど、自信を持って自分らしくパフォーマンスしたいですね。
上口 Salleyのことを聴いてくれる人がいるおかげで作品をリリースすることができるので、自分の中で完結させずに感謝の気持ちをしっかり伝えられるようなライブをしたいです。ワンマンライブをやることが初めてなので、やってみたらまた違う発見があるかもしれないし、それを楽しみにしつつまずは初ワンマンに全力で臨みたいと思います。
- ニューアルバム「フューシャ」/ 2014年4月9日発売 / Victor Entertainment
- 初回限定盤 [CD+DVD] 3780円 / VIZL-649
- 通常盤 [CD] 3240円 / VICL-64145
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CD収録曲
- その先の景色を(album mix)
- Agreed Greed
- green
- カラフル
- リセットの呪文
- fuchsia
- 赤い靴
- 青い鳥
- プレゼント
- 愛の言葉(album mix)
- 各駅停車
- あたしをみつけて
- My little girl
初回限定盤DVD 収録内容
- Salley Diary 2012-2014
- MUSIC VIDEO
(赤い靴 / green / その先の景色を / あたしをみつけて) - LIVE (Live at SHIBUYA CLUB QUATTRO on December 30, 2013)
(赤い靴 / Down by the Salley Gardens / その先の景色を / green)
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iTunes Storeにて配信中!
- Salley「Live Tour 2014 Spring」
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- 2014年4月18日(金)
愛知県 名古屋CLUB QUATTRO - 2014年4月20日(日)
大阪府 梅田CLUB QUATTRO - 2014年4月26日(土)
東京都 LIQUIDROOM ebisu
- 2014年4月18日(金)
Salley(さりー)
大阪出身のうらら(Vo)と福井出身の上口浩平(G)により2012年に結成された男女デュオ。2013年5月にフジテレビ系アニメ「トリコ」のエンディングテーマ「赤い靴」でデビュー。透き通るようなうららの歌声と哀愁を帯びたロックサウンドで描くオリジナルの世界観が話題になり、同作は「2013上半期USEN HITランキング」のJ-POP部門で1位に輝いた。その後「green」「その先の景色を」「あたしをみつけて」と3枚のシングルをリリースし、4月9日に1stアルバム「フューシャ」を発表。4月18日から4月26日にかけて初のワンマンライブとなる東名阪ツアーを実施する。