音楽ナタリー PowerPush - さかいゆう
“作品至上主義”な男が夏の終わりに贈る新作
本気を出させてくれてるものが締め切り
──アレンジはレコーディングメンバーと共同で進めていったそうですが、どんな工程だったんですか?
もともとの叩き台は僕が持っていって、それをどう演奏してミックスしようかっていうのはみんなで考えました。いろんな曲を聴いて研究して、こういうのいいよね、こういうのいいよねって言い合って10曲分くらいのいい要素を集めるというか。具体的に言うとコードとかメロディは全部オリジナルなんですけど、キックの作り方とかスネアの音色とか、そういう土台の部分はみんなで聴いていろんな音楽を参考にしました。様式を借りてるって感じですね。それは1人でやるより楽しかったですよ。
──さかいさんは他のアーティストとのコラボ経験も豊富な一方、「ONLY YU」という“1人多重奏アルバム”も作っていますよね。1人で作る楽しさと、今回のように気の知れた友人たちと作る楽しさ、それぞれを経験して、今考えるにその一番の差とは?
どっちも楽しいんだけど、1人でやると終わらないですね。真面目に作っちゃうから、ずっと修正かけちゃう。それによって突発的な面白さがなくなったらダメだなと思うんですけど。人と一緒にやるほうは、「これいいよね」「あ、いい」。これで終わり。2人で「いい」って言ったものは、あとで聴き返してどうこうっていうのがあんまりなくて。
──でも1人で作る曲も、落としどころをつけて納品しなきゃいけないですよね。そこはどういう基準なんですか?
締め切りです。
──なるほど(笑)。
僕がたぶん大御所みたいな自分で決定できる立場だったら、ズルズル伸びていくと思います。今の僕の場合はもっと圧が来ますからね。
──「絶対ここを越えるな」っていう。
「困ります困ります」って(笑)。まあ締め切りに助かってる部分もあります。実は、本気出したら間に合うんですよね。その本気を出させてくれてるものが締め切りだったりもしますね。
水みたいでありたい
──1stシングル「ストーリー」が発売されたのが2009年10月なので、もうすぐメジャーデビュー5周年になります。この5年を思い返してみて、自分の成長点はどんなところだと思いますか?
ちょっとピアノがうまくなった。
──(笑)。
歌もちょっとうまくなった。あの頃よりはいろんな歌が歌えるようになったかなあ。そのぐらいですかね(笑)。
──生み出す音楽性とかは変わっていない?
それはね、成長してるというより日々変わっていってると思います。日々変わっていく自分を愛してあげながら、肯定しながら曲を作ってるという感じですね。
──ほお。
それは自分のスタンスみたいなものが確固たるものになったからかなと思いますね。キャリア5年って20年とかの人に言わせたらまだまだなんだろうなとは思うんですけど、こうやって移り変わっていく中、5年間クビにならずに続けられたっていうのは、そんなに間違いはないのかなと思ってて。社会人として半人前だなと思うことはけっこうあるとは思うんですけど、少なくとも周りにいるスタッフの人たちとはうまくいってるのかなと。
──1stアルバム「Yes!!」を出したときのことって覚えてます?
もう遠い昔のことで全然覚えてない(笑)。
──ナタリーの当時の特集では「僕のことは土佐の猛犬だと思ってください」と言いつつ、変わらず冷静にひょうひょうと答えてましたよ(参照:さかいゆう「Yes!!」インタビュー)。
あ、「さかいさんはどんなアーティストになりたいんですか?」ってけっこう聞かれて、うまい言葉が見当たらなくて困った時期はありますね。それは覚えてる。「30歳でデビューして、先輩方には小田(和正)さんとかスキマスイッチさんとかいらっしゃいますけど、今後どういうふうになっていきたいですか?」とか、けっこう聞かれたんです。たぶん「わかんないです」「誰みたいにも、どうにもなりたくないです」って答えたと思うんですけど。
──その質問って今聞かれたらどう答えますか?
なるようにしかならないですね。僕は真面目に音楽をやるだけ。自分の好きな、自分がクオリティ高いって思うものを集結させて、自分が満足して聴けるものを作りたいなと思いますね。それがヒットするかヒットしないかは、また別の話ですけど。
──自分なりに実直に、ということですね。
なんか水みたいでありたいなとは思います。変わっていく部分と変わらない部分とがある。変わる部分は、時代に伴ってそうなっていくと思うし、僕は新しい音源もたくさん聴くから、それを吸収して音楽に反映されたりするんですよ。変わっていってもいいと思う。でもずっと変わんない芯の部分もある。どこが変わらないかは、自分が思うのと人が思うのとで違うだろうし、100人いたら100通りあるなと思うんです。
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収録曲
- サマーアゲイン
- あの夏の僕にグッバイ
- Headphone Girl
- 時季(とき)は巡る(Remix at big turtle STUDIOS)
- 薔薇とローズ(Remix at big turtle STUDIOS)
- サマーアゲイン(backing track)
ライブ情報
さかいゆう TOUR ONLY YU #4
- 2014年9月13日(土)沖縄県 桜坂劇場 ホールB
- 2014年9月20日(土)栃木県 悠日カフェ
- 2014年9月24日(水) 北海道島田音楽堂
- 2014年9月29日(月)静岡県 LiveHouse 浜松 窓枠
- 2014年9月30日(火)三重県 M'AXA
- 2014年10月2日(木)滋賀県 SHIGA U★STONE
- 2014年10月3日(金)愛媛県 松山キティホール
- 2014年10月5日(日)熊本県 CIB
- 2014年10月7日(火)岡山県 MO:GLA
- 2014年10月14日(火)福島県 創空間 富や蔵
さかいゆう 5th Anniversary SPECIAL LIVE
- 2014年11月20日(木)大阪府 梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ
- 2014年11月22日(土)東京都 中野サンプラザホール
さかいゆう
高知県出身の男性シンガーソングライター。20歳で上京し、独学で音楽を始める。2001年に単身渡米しロサンゼルスでストリートパフォーマンスを行いながらピアノを習得。帰国後の2004年頃よりソロ活動を本格化させ、2009年10月にシングル「ストーリー」でメジャーデビュー。胸を打つ歌詞、透明感あるハイトーンボイスが年齢や性別を超え厚く支持されている。また客演も多く、これまでにマボロシ、KREVA、RHYMESTERなどさまざまなアーティストとコラボレーションを行っている。2014年1月には3rdアルバム「Coming Up Roses」をリリースし、その後全国ツアーファイナルで渋谷公会堂ワンマンライブを成功に収めた。同年9月にミニアルバム「サマーアゲインEP」を発表。10月に全国公開される音楽ドキュメンタリー映画「LOVE SESSION」にはレーベルメイトであるOKAMOTO'Sとともに出演し、RIP SLYME、島袋寛子、Crystal Kay、吉田美奈子とのセッションを繰り広げている。