音楽ナタリー PowerPush - さかいゆう
“作品至上主義”な男が夏の終わりに贈る新作
さかいゆうが新作「サマーアゲインEP」を発表した。ナタリーのさかいゆう特集は、山崎まさよし、冨田ラボ、クレイジーケンバンドの横山剣と対談企画が3回続いており、単独インタビューを実施するのは「How's it going?」のリリース時以来2年3カ月ぶり。今回はそんな機会に、新作の話題に加え、作品作りにおけるスタンスやモチベーションを改めて聞いた。メジャー活動5周年を迎える彼の変化したところ、変わらないところとは。
参照記事:
さかいゆう×山崎まさよし「僕たちの不確かな前途」対談
冨田ラボ「Joyous」&さかいゆう「薔薇とローズ」対談
さかいゆう×横山剣(クレイジーケンバンド)「Coming Up Roses」対談
さかいゆう「How's it going?」インタビュー
取材・文 / 鳴田麻未 撮影 / 佐藤類
“夏コンプレックス”
──「サマーアゲインEP」には、夏にテーマにした3つの新曲と「時季は巡る」「薔薇とローズ」のリミックスなどが収録されます。このようなミニアルバムを出すことになったのは、どんな経緯だったんですか?
まずはコンセプチュアルなものにしようと思って。夏の中でも、夏真っ盛りというよりは、秋に向かう夏の終わりかなと。そっちのほうが自分には合ってるし、もっと情緒的になれるかなとイメージできたんで。で、そこに特化したものを書きましたね。
──夏はこの季節特有の感覚というか、夏のせいにしてなんでもできるところがあって、それは新曲群の歌詞にも少なからず盛り込まれてますね。
まあ僕自身に“夏コンプレックス”があるんですよね。そういうアゲアゲになりたい自分もいるんですけど、今まで夏にそういう恋愛沙汰がなくて。僕、合コンとナンパしたことないんですよ。
──あ、そうなんですか。
「サマーアゲイン」は、夏の出会いみたいなものへの憧れもありますね。そういう若者特有のドキドキ的なものを通らずにきたんで。夏の遊びというか、ひと夏の重くない恋みたいな。それは意識はしました。
──なるほど。
この曲で、結局2人は付き合ってないわけです。主人公はちょっと仲良くなって告白しようか悩んでる。夏の終わりのそういうシチュエーションってドキドキするだろうなと思って書きました。
黒さとポップさの狭間で
──今作はOvallのメンバーであるShingo Suzukiさん、mabanua、関口シンゴさんとレコーディングをして、リミックスも元origami PRODUCTIONSの専用スタジオのbig turtle STUDIOSで制作するなど、盟友と呼べるアーティストたちと作ったことも特徴ですね。
そうですね。Ovallとずっとやりたかったんですよ。ビリー・ジョエルのカバー集で「ストレンジャー」を一緒に演奏したり(参照:槇原、土岐、ゴス、YO-KINGら10組ビリー・ジョエル名曲盤)、Ovallのアルバムに僕が歌で参加させていただいたり(参照:Ovall新アルバム内容発表、ゲストにさかいゆう&青葉市子)という流れで、一緒にやるなら今かなと思ってやりました。低音の効いた太い音で、ビートを大事にするような曲にしたいなと思ったし。特にシンゴっち(Shingo Suzuki)とは密にやりとりしましたね。
──Ovallとは昔から交流があったんですよね?
ずーっとありますね。
──さかいさんの交友関係はオーガスタ所属アーティストの中でも異彩を放ってると思いますが、このあたりはメジャーで活動しているからといって派手に変わらず、渋谷のアンダーグラウンドシーンでやっていた頃といい意味で同じですよね。
はい。インディーズ当時は聴く音楽がブラックミュージックにかなり偏ってて、黒いのをやるのがちょっとだけ面倒くさくなったんですね。自分が得意なファンクとかヒップホップじゃないサウンドもやりたいなと思ってた。そんな時期にちょうどオーガスタから話が来て。最初は自主でやろうとしてたんですけど、もともとポップスも好きだし、受けることにしたんです。
──へえ。
僕は、そのときに一番好きなものを、好きな人と、ずっと好き勝手にやってるって感じです。だけど玄人の人はね、なんか「黒くなくなった」とか、かと思えば「ポップじゃなくなった」とかワケわかんないこと言うんですよ。
──ははは(笑)。
それに、突き詰めていくとOvallも歌謡曲やポップスが好きなんですよ。みんなそこは通ってる。だから、ブラックミュージックが好きで、でも日本人っていう僕らにしかできないサウンドはやっぱりあるんですよね。日本人の好きなコード進行とか、ベターッとした質感とか、侘び寂びとか。
──だから2曲目の「あの夏の僕にグッバイ」みたいな曲ができたりしたんですね。これはかなり王道のポップチューンですよね。
それもあると思いますね。でも、いわゆる聴き慣れたJ-POPとはどこか違う部分はあると思います。
次のページ » 本気を出させてくれてるものが締め切り
収録曲
- サマーアゲイン
- あの夏の僕にグッバイ
- Headphone Girl
- 時季(とき)は巡る(Remix at big turtle STUDIOS)
- 薔薇とローズ(Remix at big turtle STUDIOS)
- サマーアゲイン(backing track)
ライブ情報
さかいゆう TOUR ONLY YU #4
- 2014年9月13日(土)沖縄県 桜坂劇場 ホールB
- 2014年9月20日(土)栃木県 悠日カフェ
- 2014年9月24日(水) 北海道島田音楽堂
- 2014年9月29日(月)静岡県 LiveHouse 浜松 窓枠
- 2014年9月30日(火)三重県 M'AXA
- 2014年10月2日(木)滋賀県 SHIGA U★STONE
- 2014年10月3日(金)愛媛県 松山キティホール
- 2014年10月5日(日)熊本県 CIB
- 2014年10月7日(火)岡山県 MO:GLA
- 2014年10月14日(火)福島県 創空間 富や蔵
さかいゆう 5th Anniversary SPECIAL LIVE
- 2014年11月20日(木)大阪府 梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ
- 2014年11月22日(土)東京都 中野サンプラザホール
さかいゆう
高知県出身の男性シンガーソングライター。20歳で上京し、独学で音楽を始める。2001年に単身渡米しロサンゼルスでストリートパフォーマンスを行いながらピアノを習得。帰国後の2004年頃よりソロ活動を本格化させ、2009年10月にシングル「ストーリー」でメジャーデビュー。胸を打つ歌詞、透明感あるハイトーンボイスが年齢や性別を超え厚く支持されている。また客演も多く、これまでにマボロシ、KREVA、RHYMESTERなどさまざまなアーティストとコラボレーションを行っている。2014年1月には3rdアルバム「Coming Up Roses」をリリースし、その後全国ツアーファイナルで渋谷公会堂ワンマンライブを成功に収めた。同年9月にミニアルバム「サマーアゲインEP」を発表。10月に全国公開される音楽ドキュメンタリー映画「LOVE SESSION」にはレーベルメイトであるOKAMOTO'Sとともに出演し、RIP SLYME、島袋寛子、Crystal Kay、吉田美奈子とのセッションを繰り広げている。