saji|出会いと別れが織りなす6編のストーリー

sajiが4月1日にミニアルバム「ハロー、エイプリル」をリリースした。

昨年7月にphatmans after schoolから改名したsaji。短編小説をコンセプトとした彼らのミニアルバム「ハロー、エイプリル」には出会いと別れが訪れる春にぴったりな全6曲が収められている。音楽ナタリーではリスタートを切って9カ月が経とうとするsajiに「ハロー、エイプリル」の制作過程をはじめ、バンドの考える理想の大人像や、10代リスナーへの思いを聞いた。

取材・文 / 秦理絵 撮影 / 星野耕作

「ファ……」と言わなくなった

──前回のインタビューでは「phatmans after schoolからsajiに改名して違和感がある」という話もありましたけど。そろそろバンド名には慣れましたか?(参照:saji「ツバサ」インタビュー

ユタニシンヤ(G) そうですね(笑)。名乗るときに、最初に「ファ……」と言わなくなりましたね。

ヤマザキヨシミツ(B) うん、違和感はなくなりました。覚えやすいし、今は変えてよかったと思っています。

──その言葉が聞けてよかったです。去年12月にリリースされたsajiのメジャーデビューシングル「ツバサ」は、ソフトバンクの髙田知季選手の登場曲にも使用されたそうですね。

ユタニ あ、そうなんですよ。ファンの方から「流れてたよ」という情報をもらいました。で、自分たちも調べてみたら、実際に登場曲として使っていただいて。

ヤマザキ 僕はソフトバンクが好きなので、めちゃくちゃテンションが上がりました。

──東京・UNITで開催された初のワンマンライブ「saji 1st Live 2019~尾羽打チ枯レズ飛翔ケリ~」がソールドアウトできたのも、再始動の弾みになったのでは?

ユタニ まずはチケットを売り切ったことにホッとしました。

ヤマザキ 改名して、お客さんも戸惑った部分があったと思うんですけど、ちゃんとライブを待ち続けてくれたのはうれしかったですね。

ユタニ 僕個人で言うと、あの日のライブで1つ挑戦したことがあって。キャベツ確認中のキャプテン★ザコさんというバルーンアートの第一人者と言われる芸人さんがいるんですけど、その方が作ったバルーンに乗って、集まったファンの方にワッショイしてもらったんですよ。あとでTwitterを見てたら、それが好評だったみたいで。やってよかったなと思いました。

──ああいう演出にチャレンジしようと思ったきっかけはあったんですか?

ユタニ phatmans after schooからsajiに変わったことで、ほかのバンドとは違うパフォーマンスをしたいなと思ったんです。自分で言うのもなんですけど、もともと僕らはいい楽曲を作っている自信はあったので。それプラス何か1つやりたいなという思いでしたね。

saji

カッコいい大人とは

──ヨシダさんはワンマンライブを振り返っていかがでしょう。

ヨシダタクミ(Vo) 去年は、改名から新体制に移行する準備に追われてたので、まだ僕らもちゃんとsajiとしての気持ちでは動けてなかったんです。でも12月のワンマンを節目に、改めてお客さんの顔を見たり、ライブの雰囲気を体感したうえで、「これがsajiなんだな」って自分の中でストンと腑に落ちたものがありまして。2020年に入ってから、僕の中のマインドも変化しましたね。

──というのは?

ヨシダ まずダイエットをして、かなり痩せたんですよ。

──そう言えば、次のアルバムが出るまでに20kg痩せる宣言をしてましたよね(笑)。かなりほっそりしましたけど、何キロぐらい痩せたんですか?

ヨシダ 13kgです。ラスト1カ月ぐらいで、あと7kg落とせたら、罰ゲームで彼(ヤマザキ)とディレクターがバンジーだし、落とせなかったら俺ら(ヨシダとユタニ)がバンジーをすることになってるんです。

──すごい賭けですね(笑)。

ヨシダ そういうチャレンジをしてるのも、今自分の中で「カッコいい大人ってなんだろう?」というのを考え始めたからなんです。僕がバンドを始めたときは、まだ高校生なんですよ。でもsajiというバンドは大人になってから始めたものじゃないですか。まだ死んでないからこれが自分の人生のどの地点にあたるかはわからないですけど、人生の中でももう中期、後期のタームに入ってくるなと思ったんです。そこで「カッコいい大人がやるバンドってどういうものだろう?」と考えるようになったんです。

──なるほど。

ヨシダ 「カッコいい」にもいろいろ種類があると思うんですよ。例えば僕が今目指しているように、見た目がシュッとしてるのがカッコいいとか。曲作りの観点で言うと、いろいろな人の話を聞けるようになるのは大人だけだなと思ったんです。10代のときって、大人の意見に対して「うるせー、バカやろう」と反発して聞く耳を持たないじゃないですか。おじさんとかに「俺が若いときはね」とか、「俺が見てきたバンドたちはね」と言われても、「知らんし」って思うわけですよ(笑)。でも、今はおじさんたちが言ってたことも一利あると思えるんです。別にsajiは人の意見をうかがいながらやるバンドではないですけど、お互いの意見を尊重しながら作っていくのも面白いんじゃないかなと思ったんです。