saji|リスタートを切る3人がツバサに託した夢

人間臭くありたい

──「まだ何者でもない君へ」はビックバンド形態のスウィングジャズですよね。

ヨシダ これは映画の「スウィングガールズ」で有名ですけど、ベニー・グッドマンの「Sing, Sing, Sing」のイメージで作っていったんです。

── “ここは地獄か? 天国か?”という歌い出しが印象的でした。自問自答している曲ですよね。

ヨシダタクミ(Vo)

ヨシダ この曲の主人公は夢を諦めた人なんです。そういう人間が、昔の自分を回顧して、「なんで夢を捨てなきゃいけなかったんだろう?」と思っている。大人になるにつれて、いろいろな言い訳をして、自分を納得させてきたんですよね。でも、まだ夢を見てもいいんじゃないかってリスタートを切ろうとしてるいるんです。だからタイトルには「まだ何者でもない君へ」という自分への手紙みたいな意味を込めました。

──この曲も「夢」をテーマにしているけど、1曲目の「ツバサ」とは意味合いが違いますよね。リスタートという部分では今のsajiの心境にも近いのでは?

ヨシダ そう、今の自分ならではの曲が書けたんですよ。たぶん中学高校の僕らでは書けなかったですね。なぜなら当時の僕には2度目、3度目がないから。それを人生の中で経験したからこそ出てきた歌詞だと思います。僕はこういうふうに書く歌詞の内容が変わっていくこともよしと思っています。

──「放課後のカッコいいやつ」という意味だったphatmans after schoolから、大人になったのがsajiへと変化したわけですからね。

ヨシダ そう。もちろん1つのことを変わらずに貫くカッコよさもあるけど、変わっていくことである意味、人間臭くありたいなというのはありますね。

──逆に言うと、その人間臭さは、phatmans after school時代から変わらない部分なんじゃないかと思います。リスナーと同じ目線で生きていこうとしているというか。

ヨシダ 確かに。僕らは押し付けられるのが嫌いだから、僕らから押し付けることもないんですよ。僕、曲の中では「行け!」とは言わないんです。「一緒に行こうぜ」とか「がんばろうぜ」なんですよね。「ツバサ」では「飛べるさ」と歌っているけど、それも基本は「俺も一緒にいるから」ってスタンスなんです。あくまで同じフィールドにいる、同じ目線で生きていこうというのは、ずっと変わらないと思います。

The Beatlesのスタンスに共感

──「猫と花火」「まだ何者でもない君へ」を聴くと、sajiのルーツにブラックミュージックも根付いているのかなと感じます。そのあたりはどうですか?

ヤマザキヨシミツ(B)

ヨシダ 僕らは洋楽を聴いて育った邦楽バンドなんですよ。そこまで深堀りはしてないですけど、デトロイトで流行ったモータウンのビートとか、ブルースも音楽の1つとして聴いているって感じです。もともと僕に関して言うと、親が聴いていた音楽の影響が大きいですね。Carpentersが好きですし。家でThe Beatlesのベスト盤が流れていたので、歌詞を覚えるぐらい聴いていたし。The Beatlesの偉大なところは、実験的なことをバンドに落とし込んだことだと思うんです。ディレイとかオーバーダビングもそうですけど。今当たり前とされていることを、積極的に取り入れたんですよね。そういうなんでも取り入れていくっていうThe Beatlesのスタンスは、sajiにもつながっていますね。

ヤマザキ 僕も、その曲がなんのジャンルかもわからずにさまざまな音楽を聴いて育ってきました。今回は「このビートには、こういうフレーズが合うだろうな」というのを、自分の中から引き出して、1曲1曲作った感じですね。結果、いいバランスのシングルになったと思います。

──3曲ともサウンドアプローチは違うけど、sajiらしいポップな楽曲になってますよね。

ヨシダ そういうふうに聴いてもらえると、うれしいですね。

ユタニにお金持ちになってほしい

──今後sajiはどういうバンドを目指していくんでしょう?

ヨシダ ユタニがよく「武道館でやりたい」って言いますね。

ユタニ ずっと夢なんですよね。

ヨシダ プラスアルファで言うと、彼にお金持ちになってほしいです。

──「彼に」って、ユタニさんにですか?

ヨシダ 彼がお金持ちになるということは、とりもなおさず、僕らもお金持ちになっているはずですから。昔、周りの大人に「バンドは夢を持たせる職業だ」と言われたんですけど、全然わからなかったんですよ。でも今はわかります。例えば彼が売れて、豪邸を建てて、高級車を持って、すごく高そうなギターを弾いている。それを見て「僕もユタニくんみたいになりたい」と思う子がいたらいいなと思うんですよ。そういうステレオタイプなミュージシャンになりたいです。

ユタニ 憧れられたいよね。

ヤマザキ 僕は彼にサングラスを買ってあげます。

ユタニ 「これ、20万円もするの!?」っていうやつね(笑)。

ヨシダ 今はコンプラ重視の時代だから、目立たず騒がずにいろと言われるんです。でも「僕らは出る杭であれ」と思います。この仕事をしていて全員に好かれることはまずない。知らない人に石を投げられるような仕事じゃないですか。でも、ずっと出続ければ、いずれ杭ではなくなるんですよ。

──そういう人がレジェンドと呼ばれるわけですよね。

ヨシダ そういう存在になりたいです。

ライブ情報

saji 1st Live 2019~尾羽打チ枯レズ飛翔ケリ~
  • 2019年12月18日(水) 東京都 UNIT