音楽ナタリー PowerPush - 斉藤由貴×KERA
斉藤由貴、歌手デビュー30周年でKERAと再会
斉藤由貴の歌手デビュー30周年を記念したアルバム「ETERNITY」がリリースされた。
「誰もが味わった特別な恋の瞬間へのオマージュ」をテーマに制作された今回のアルバムには、彼女のボーカルによる「Top Of The World」や「Cheek To Cheek」といったスタンダードナンバーのカバーや、斉藤と縁のある武部聡志と谷山浩子が手がけたオリジナル曲が収録される。
アルバムの発売を記念して音楽ナタリーでは、彼女の熱心なファンとして知られるKERA(ケラ&ザ・シンセサイザーズ)との対談を企画。斉藤の歌手デビュー作品「卒業」を「レコードが擦り切れるほど聴いた」と語るKERAに、自身の音楽遍歴などを交えながら斉藤の魅力を紐解いてもらった。
取材 / 臼杵成晃 文 / 倉嶌孝彦 撮影 / 上山陽介
“たまらない何か”に惚れて
──KERAさんが斉藤由貴さんの大ファンだということは、KERAさんファンの間では有名ですが、そもそもどういうきっかけで好きになったんですか?
KERA もうずいぶん昔のことになるからきっかけは覚えてないですけど、とにかく騒いでましたね。由貴ちゃんのデビュー作「卒業」はレコードが擦り切れるくらい聴いてました。最初にお会いしたのは、僕がやってたラジオ番組に来てもらったとき。ディレクターに「同じレコード会社の人ならゲストに呼びやすい」と言われたから「じゃあ斉藤由貴は?」って(笑)。由貴ちゃんサイドからOKもらって小躍りしたのを覚えてますね。
斉藤由貴 女優としての私じゃなくて、歌がお好きだったんですか?
KERA もちろん女優としての斉藤由貴も、歌手としての斉藤由貴も、どちらも好きでした。なんか、今、同窓会でコクってるような気持ちだな(笑)。
斉藤 私、正直に言うと歌には自信がないから「歌が好きです」って言っていただくとすごく不思議な気持ちになるんです。もっと上手に歌う方や、インパクトのある方がたくさんいる中で、なぜ私の歌を好きって言ってくださるのかなって。
KERA 由貴ちゃんの歌にはこう、たまらない何かがあるんですよ。
斉藤 歌詞が魅力的ってこと?
KERA 確かに、ほかのアイドルと違って自立した歌詞が多いよね。甘ったれたことを言わないというか。もちろん歌詞だけじゃなくて、包み込むような声がやっぱりいいんだよなあ。
──KERAさんはLONG VACATION(1990~95年に活動したユニット)で「青空のかけら」をカバーしましたが、あれはどういう経緯で?
KERA 単純に大好きだったからですよ。あの曲は当時レコード会社でサンプル盤を2枚もらったのを覚えています(笑)。LONG VACATIONは4ビートの曲が多くて、「青空のかけら」もハネたアレンジで演奏したんです。しかも歌詞の語尾を男の口調にちょっとだけ変えて。
斉藤 あの曲は、女の子が不実や勝手をする男子に一方的に別れを告げて1人で旅立つ歌なんですけど、それを男性目線に?
KERA いや、目線を変えたわけじゃなくて、「ないわ」とかを「ないさ」に変えたくらい。だから男が彼女を置いて立ち去っていく話になっているわけじゃないんだよね。原曲そのままの経緯を男が自戒してる、みたいな感じ。
斉藤 どんなふうに聞こえるんだろう。すごく興味ある。
いい意味でアイドルっぽくなかった
──斉藤さんが歌手デビューした1985年はおニャン子クラブが出てきた年でもありますよね。キャピキャピとしたアイドルが多い中で、斉藤さんはちょっと異彩を放つ存在だなと思ってたんですよ。
KERA うん。由貴ちゃんはね、まったくアイドルっぽくなかった。
──あまりガツガツしたタイプにも見えないし、そもそもどうして芸能界に入ることになったのかなと。
斉藤 きっかけは親に薦められたからなんです。神経質で内向きな性格の私を心配した母が、何か違うことをさせようと思ってオーディションの話を持ってきて。うまくいくはずないと思っていたら、オーディションに受かって「ミスマガジン」のグランプリまでいただいて……。でも、私は周りを引っ張っていくタイプじゃないし、キラキラして見ている人たちを圧倒するようなアイドルではなくて。周りの皆さんが「これをやってみよう」「あれをやってみよう」って動いてくれて、私はそれに合わせるのに必死でした。
KERA 僕のラジオに出てもらったのは、「はね駒」(1986年に放送されたNHK朝の連続テレビ小説)に出てた頃かな。
斉藤 はい。覚えています。
KERA それでドラマかなんかのトークをしていたら、由貴ちゃんが「主人が」って言ったんですよ。僕がビックリして「えっ、結婚してるんですか?」て聞いたら、「いえいえ、ドラマの」って言われて。もうね、20歳そこそこの感じじゃないんですよ。受け答えは冷静だし、理路整然と話してくれるんですよね。なんでこんなに整理してしゃべれるんだろうって不思議に思いましたから。
斉藤 イヤなタイプじゃないですか? 言葉がしっかりした女って。
KERA いや、あのね、うーん、女としてはどうかな(笑)。女としてはわかんないけど、演出家として人を見るとき、僕はとにかく言葉を大事にしてるんですよ。僕は笑いから演劇の世界に入った人間だし、演じてらっしゃるとわかると思うんですけども、言葉自体が別に可笑しくなくても、関係性やそこに漂う空気によって可笑しみって生まれるでしょう?
斉藤 そうですね。
KERA 特に僕のやってる芝居は、悲劇的なことと喜劇的なことを、ほぼ同時に舞台上に現出させるようなものが多いんですね。陰惨としか言えないようなシーンの直後にドッと客が笑うみたいな。そういうことをやるためには、言葉に対する感覚はすごく重要で。言葉を大切にしてる俳優さんには、男女こだわらず好感を抱きますね。今こうやって話をしていても感じますけど、言葉の組み立て方がうまい人だなあという印象だったんですよ、ラジオで話したときは。
斉藤 そうだったんですか(笑)。でも当時の私から見たKERAさんは、すごくうらやましい存在でした。私は周りの方にいろいろ用意してもらって、その中でやっていくスタイルだったから、厳然とした自分のスタイルというか、カラーがあるのはすごくカッコいいなって。
KERA 自分で決めてくしかなかったからね。誰も決めてくれないし。芸能界とはまったく別の人間ですよ。そんな僕らも当時は、数は少ないけど「夜のヒットスタジオ」みたいな音楽番組に出させてもらってたんだよね。ひどく疎外感を感じながら(笑)。正直言って、興味本位の暇つぶしにスターたちを眺めに行っていた感じが強い。由貴ちゃんのことを「アイドルっぽくなかった」と言いましたけど、そうは言ってもやっぱり“スター集団の中の1人”っていうふうに見てましたね。
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- ニューアルバム「ETERNITY」2015年3月11日発売 / ヤマハミュージックコミュニケーションズ
- 初回生産限定BOX [CD+グッズ] 8100円 / YCCW-10257/B / Amazon.co.jp
- 通常盤 [CD] 3240円 / YCCW-10258 / Amazon.co.jp
CD収録曲
- Top Of The World
- Tea For Two
- Cheek To Cheek
- Lovin’ You
- Blue Moon
- Stardust
- When I Fall In Love
- Across The Universe
- 窓あかり
- 永遠
天使のララ Presents 斉藤由貴 30th Anniversary Concert
- 2015年3月13日(金)東京都 シアタークリエ
OPEN 18:30 / START 19:00 - 2015年3月14日(土)東京都 シアタークリエ
[1回目]OPEN 12:30 / START 13:00
[2回目]OPEN 18:00 / START 18:30 - 2015年3月15日(日)東京都 シアタークリエ
OPEN 12:30 / START 13:00
斉藤由貴(サイトウユキ)
1984年に行われた「第3回 ミスマガジン」でグランプリに選ばれ芸能界入り。85年に「卒業」をリリースし歌手デビュー。同年4月に放送がスタートしたドラマ「スケバン刑事」で初めて主演を演じる。86年に発表した「悲しみよこんにちは」で、同年開催の「NHK紅白歌合戦」へ初出場し、紅組キャプテンを務めた。また89年に発表した井上陽水のカバー「夢の中へ」は大ヒットを記録した。歌手活動と並行してドラマ、映画、舞台などの女優業に力を入れているほか、詩、小説、エッセイなどの著作業も行っている。2015年3月に歌手デビュー30周年を記念したアルバム「ETERNITY」をリリースするほか、30周年記念コンサート「斉藤由貴 30TH ANNIVERSARY CONCERT」を開催する。
KERA(ケラ)
1963年1月3日、東京生まれ。1982年にバンド有頂天を結成し、翌1983年には自主レーベル「ナゴムレコード」を立ち上げる。ナゴムレコードからは有頂天のほか筋肉少女帯、たま、カーネーション、電気グルーヴの石野卓球とピエール瀧が所属した人生(ZIN-SAY!)、俳優として活躍する田口トモロヲがボーカルを務めるばちかぶりなど個性的なアーティストを多数輩出した。有頂天はTHE WILLARD、LAUGHIN' NOSEとともに「インディーズ御三家」として全国区で注目を集め、1986年9月にシングル「BYE-BYE」とアルバム「ピース」でメジャーデビュー。1991年の有頂天解散と前後して活動を始めたLONG VACATIONでは約4年間で20作以上の作品をリリース。LONG VACATIONの活動休止後、1995年に結成したケラ&ザ・シンセサイザーズでは現在までに5枚のオリジナル作品と1枚のベストアルバムを発表している。またケラリーノ・サンドロヴィッチ名義で劇作家、脚本家、演出家、映画監督としても活躍しており、1999年、主宰するナイロン100℃への書き下ろしである「フローズン・ビーチ」での岸田國士戯曲賞をはじめ、受賞歴多数。テレビ東京系列で現在放送中のテレビドラマ「怪奇恋愛作戦」では脚本・監督を担当している。
- ケラリーノ・サンドロヴィッチ - 株式会社キューブ オフィシャルサイト
- ケラリーノ・サンドロヴィッチ (@kerasand) | Twitter
- ケラ&ザ・シンセサイザーズ
- ケラ&ザ・シンセサイザーズの記事まとめ
ケラリーノ・サンドロヴィッチ・ミューヂック・アワー ♯008
2015年4月3日(金)東京都 新宿LOFT
<出演者>
ケラ&ザ・シンセサイザーズ / 新宿ゲバルト / J.トンプソン商会(KERA+中村哲夫)
料金:前売 3900円 / 当日 4400円(ドリンク代別)
<衣裳協力>
ワンピース タルボット
(タルボット ジャパン:03-6698-5971)
ピアス ヴァンドームブティック
(ヴァンドームヤマダ:03-3470-4061)