斉藤朱夏が11月20日に1stシングル「36℃ / パパパ」をリリースした。

8月にミニアルバム「くつひも」でソロアーティストデビューした斉藤にとって、次なる一歩となる両A面シングル。表題曲の1つ「36℃」は冬を意識したラブバラード曲となっている。もう一方の「パパパ」はテレビアニメ「俺を好きなのはお前だけかよ」のオープニングテーマ。恋する気持ちを花が開く様に例えて歌うポップチューンで、個性豊かなキャラクターたちによるラブコメディ作品を華やかに彩っている。音楽ナタリーでは斉藤にインタビューし、カップリングを含む4曲すべての制作過程を聞いた。

取材・文 / 中川麻梨花

がんばってきてよかったな

──8月にミニアルバム「くつひも」でソロデビューされて、今回早くも1stシングルがリリースされるということで。

早いですよねえ。いろんな人に「早いね！」って言われます（笑）。

──じっくりと時間をかけて作ったミニアルバムが世に出て、発売前と比べて何か心境の変化はありましたか？

ミニアルバムの制作中はまだどこかで「これは夢なんじゃないかな」と思っていたんですけど、リリース直後にフリーライブをやらせてもらって、そこでようやく「自分は本当にアーティストになったんだな」と実感しましたね（参照：斉藤朱夏が誕生日にソロデビュー曲披露、ファンからの“最高のプレゼント”に涙）。アーティストになりたいという自分の目標が実現したことで、「これまでがんばってきてよかったな」と思えました。あと、SNSとかでもミニアルバムを聴いてくださった皆さんから温かいコメントをいただいて、それがすごく自分の身に染みて……ソロデビューすることを発表したときに「やったー！」ってファンの皆さんが喜んでくれた一方で、中には「えっ、ちゃんとできるの？」という声も多少はあったと思うんですよ。全員が全員、プラスに捉えてくれるわけではないのはわかっていて。でもミニアルバムをお届けして、楽曲を聴いてもらって、ソロデビューに対して「うーん」と思っている方々に「斉藤朱夏、本気でアーティストやるんだな」ということを伝えられたかなという実感はあります。

──ミニアルバムの手応えがしっかりとあったからこそ、そんな中で次のシングルを出すのはプレッシャーもあったのではないでしょうか。

めちゃめちゃありました。デビューミニアルバムで素敵な楽曲を歌わせていただいたので、「次はどんな作品になるんだろう？」ときっとみんな期待するだろうなって。ミニアルバムでそのとき歌いたかったことはすべて歌わせてもらったので、これだけ短いスパンで1stシングルを出すことになって、次はどういう作品にしたらいいんだろうと考えましたし。

──デビュータイミングでは「ミニアルバムというぜいたくな形でリリースさせてもらいます」とおっしゃっていましたが、今回両A面シングルということで、これもまた豪華な形ですね。デビューから3カ月で、すでに持ち曲が10曲もあるという。

ぜいたくすぎて、なんかもうこの先が怖いです……！ しかも両A面なうえに、通常盤と期間生産盤でそれぞれ違うカップリング曲を作ったんですよ。今いい思いをしてるぶん、「あそこまでしてあげたんだから」って将来スタッフさんにいじわるとかされたらどうしよう（笑）。めっちゃプレッシャーですよ。

──（笑）。

でも、私はプレッシャーをかけられたほうが燃えるタイプなので。今回もミニアルバムに引き続きハヤシケイ（LIVE LAB.）さんに全曲歌詞を書いてもらって、素敵な作品になったと思います。

「愛してる」と言いたかった

──表題曲の1つ「36℃」は冬を舞台にした、女の子目線のラブバラードです。

1stシングルをリリースするにあたってどういう曲を作っていくのかをスタッフさんと話し合っていく中で、「冬の恋愛の曲を作ろうか？」という案が出たんです。11月にリリースすることはもともと決まっていたので。「じゃあちょっと考えてみようかな」と思って、私のほうで曲のもとになるキーワードをメモしたものをケイさんにお渡ししました。

──ミニアルバムにも「あと1メートル」「くつひも」のような恋する女の子の心情を描いた曲はありましたが、今回はもっとストレートなラブソングになりましたね。

ミニアルバムでは甘酸っぱい青春を思い出させるような曲を歌わせてもらったんですけど、今回はもっとストレートなラブソングを歌ってみたいなと思ったんです。1stシングルでいきなりこんなストレートなラブソングを出すのは早いのかな、もう少し温めたほうがいいのかなという気持ちもありつつ……。

──取っておこうかなという思いもあったんですね。

ありましたねえ。でも1stシングルだからこそ、ストレートにいきたいなと思って決めました。

──「36℃」では寒い冬だからこそ“君”の体温を感じる、そして互いの体温こそがどんな愛の言葉よりも気持ちを伝え合うという心情が描かれています。メモの時点で体温を思わせるようなワードを書かれていたんですか？

“肌寒い”とか“君のぬくもりがほしい”みたいなワードは書いていたと思います。そこからケイさんが人の体温、“36℃”というところにフォーカスを当ててくれたんでしょうね。

──メモにはほかにどういったことを書かれたんですか？

サビに出てくる“愛してる”という言葉は書いていました。今回、それは絶対に言いたかったんです。

──重い言葉をチョイスしましたね。

「斉藤朱夏、本気でアーティスト活動に取り組んでます」ということをもっとわかってほしいという気持ちもあって、このタイミングで簡単には言えないこの言葉を選びました。最初は“大好き”にしようかなと思ったけど、ちょっと軽いなと思って。“愛してる”って重たくて簡単に言っちゃいけない言葉だからこそ、主人公の女の子は本当にこの男の子が好きで、将来を見据えて言ってると思うんです。あと、メモには主人公の女の子が好きな男の子の誕生日にプレゼントをぐしゃぐしゃにしながらも雪道を歩いて会いに行って、みたいなシチュエーションも書いていましたね。

──少女マンガがお好きな斉藤さんにとって、ラブソングは得意分野ですよね。

そうなんです！ 学生時代はみんなの恋愛相談を聞いていて、私が恋のキューピットになるから任せとけって感じでした（笑）。いろんな話を聞いていたから、恋愛のシチュエーションのストックはたくさんあるんです。