ナタリー PowerPush - 斉藤和義

孤高の“歌うたい”が明かした楽曲制作・レコーディングの裏側

タイアップ曲もアルバム曲も書き分けてはいない

──このアルバムの中にはCMソングやテレビ番組のタイアップ曲も入ってます。でも斉藤さんの曲は今に限ったことではなく、「歩いて帰ろう」とか比較的早い時期からタイアップの付いた曲がありましたよね。そういったタイアップ曲とアルバム曲を書く際って、意図的に書き分けていたりするんですか?

いや、一緒ですよ。

──タイアップが付くことをあえて意識したりはしない?

インタビュー写真

最初に絵コンテを見せてもらって、絵に合いそうな曲を用意することはあります。今映画のサントラを作ってて、まさにその映画を観ながら曲を付けているんですけど、自分の曲であって自分の曲でない感じがして面白いですね。だから意識して分けて書くわけではないです。実際には何年か前に書いた曲でも、たまたま合いそうだからと使うこともあるし。「やぁ 無情」にしても、もともとアルバムの曲として作っていたものだったんです。CMに使われるとそれっぽく聴こえるけど、自分としてはシングルっぽくない曲なんですよ。

──絵に合わせた曲作りというのは、聴き手の頭の中にその絵を思い浮かばせるような感覚でしょうか?

そうですね。いつもは自分で自分にお題を出して曲を作るけど、人からもらったお題で作ると普段の自分から出てこないものが生まれたりして、そこがまた面白い。自分の発想にないものを作るのがね。例えばミュージシャンの人が10人いたとして、「コースター」というタイトルで曲を作ってくださいって言われても、10人が違う曲を作ると思うんです。だから僕は与えられたお題に対して、僕なりの「コースター」って曲を作りたいなと常に思ってます。

新曲はツアーで生き物みたいに成長していく

──アルバム発売後には、過去最長になるという全国ツアーもスタートしますね。

もともとツアーは好きなので、いっぱいやりますよと言ってたら本当にこんなことになってたんですけどね。本数的にはそんなでもないけど、期間は今までで一番長くて。単純に爆音の中にいる時間って楽しいじゃないですか。それでいろんなところに行って演奏して、半ば遊んでいるようなもんなんですよね。それもあって、ツアー中は精神衛生上一番いいんですよ。ライブのときって自分でもビックリするくらいテンションが高いときがあって、微妙にハイな状態が続いたりするし。まぁ周りからはやる気がないように見えてるかもしれないけど(笑)、ぜんぜんそんなことないですよ。だからライブはたくさんやりたいですね。

──ツアーで初めてバンドの皆さんと新曲を合わせるわけで、ツアー中に曲自体がどんどん変化していきそうですよね。

10本くらいのツアーでも、最初と最後ではぜんぜん違ったりするしね。最初の初々しい感じもいいし、それが最終的にこうなったっていうのも面白い。この曲はドラムのカウントで入ろう、これはジャム的要素を入れようと話してからセッションすると、曲がぜんぜん違う感じになっていくんです。最近は、ライブの前にテーマじゃないけど冗談ぽく「今日はアドリブデー」「今日はわりと忠実に」とメンバーに言うと、そこでまた変わっていく。ホント、曲自体が生き物みたいですよ。

──斉藤さんは弾き語りでもライブをしていますよね。ギター1本だとバンドとはまた違うアプローチになると思いますが、弾き語りでやることの面白みはどういうところですか?

バンドサウンドも好きですけど、その音のもとになってる骨格はボーカルとギターなので、それをたまに確認したくなるんです。もともと弾き語りはデビュー前からやっていたし、バンドも弾き語りも両方好きなんですけどね。バンドでずっとやってるとひとりでやりたくなるし、ひとりでやってるとバンドでやりたくなるし。4~5年前に武道館で弾き語りライブをやったんですけど、今年は大阪城ホールでもやります。

──弾き語りってイメージ的にとても親密な感じがありますが、1万人規模の会場でやることに違和感はないですか?

ないですね。むしろデカイほうがいいなと思っていて。小さいライブハウスでやるのも楽しいけど、デカイ会場でひとりぼっちで寂しい感じになるのもたまにはいいもんですよ(笑)。

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ニューアルバム『月が昇れば』 / 2009年9月16日発売 / SPEEDSTAR RECORDS

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  • 通常盤 [CD] 3150円(税込) / VICL-63401 / Amazon.co.jpへ
CD収録曲
  1. COME ON!
  2. LOVE & PEACE
  3. 映画監督
  4. ドント・ウォーリー・ビー・ハッピー
  5. 後悔シャッフル
  6. やぁ 無情
  7. 天国の月
  8. Phoenix
  9. Bitch!
  10. Summer Days
  11. ハローグッバイ
  12. アンコール

初回限定盤:ブックケース&豪華フォトブックレット付き

斉藤和義(さいとうかずよし)

アーティスト写真

1966年栃木県出身。大学の頃から曲作りを始め、1993年「僕の見たビートルズはTVの中」でデビューを果たす。シングル「歩いて帰ろう」がテレビ番組「ポンキッキーズ」で注目を集め、その後も「歌うたいのバラッド」などのナンバーで多くのファンを獲得。シングル「ウエディング・ソング」は、リクルート「ゼクシィ」CMソングとしても話題に。また、音楽以外でも映画「八月のかりゆし」に出演するなど、その素朴なキャラクターのファンも少なくない。