音楽ナタリー Power Push - 最終少女ひかさ「最期のゲージュツ」特集 但野正和(Vo, G)×あいみょん
ハングリー精神あふれる“終われない”2人
降りてきた言葉はなるべく使うようにしてる
──あいみょんさんは作詞に煮詰まったりはしないんですか?
あいみょん しないんです、作詞はめっちゃ早いんです。
但野 マジ!?
あいみょん 私、携帯で作詞してるんですけど、人にメールを送る感じで書いてるんで。
但野 僕も紙とペンで作詞するのに憧れながら、携帯で書いてます(笑)。しかも曲を書き始めたときは、歌詞を先に書くのが正義だと思ってたんだけど、今はもう全部、曲が先。あいみょんは?
あいみょん 同時に作ってます。何が一番効率的かっていうのを考えたときに、同時に作ればギターも持ってない移動中にでも頭の中で曲作りができるんですよね。
但野 僕もどんな状況でも曲を作ってますね。メロディが頭にあって、そこにハマる言葉を探してる。
──あいみょんさんは例えば「死ね」という言葉をすごくキラキラしたメロディと声で歌われますけど、最終少女ひかさも今作収録曲「ハルシオン」で「眠剤をくれよ」とポップに歌われていたり。そのギャップがスゴイですよね。
但野 軽い気持ちで使っちゃうんですよね。でも降りてきた言葉は「そういうことなんだな」って、なるべく使うようにしてて。特に今回の「最期のゲージュツ」は歌詞に自分のハングリーさがやけに出てるなって思います。
どこに行けばいいのかわからないけど、終われない
──「人生賭けて歌っている」と歌う「Rolling Lonely review」は、「グッドバイ」に収録されている「商業音楽」のその後のストーリーのような感じがしますね。
但野 こういう曲はやっぱり言いたいことがはっきりあって歌ってますね。歌だったらこういうことも言えちゃいます。
あいみょん 私もハングリー精神だらけですよ。
但野 「満ち足りないもんなんだな」と思ったんですよね。全国流通とかしたことなかったときは、CDがCDショップに並ぶってすごいことだと思ってたから、それがゴールだと思ってた。でも実際に並んでみたって、まったくグッとこなくて。
あいみょん あー、確かに(笑)。
但野 ワンマンライブをしてソールドアウトしたら、泣いちゃうと思ってたのに、「まだ足りねえな」って思っちゃうし。全然満たされない。B'zとかのレベルじゃない俺が言うのも何だけど。でも昔の俺はそこに行ければ十分だと思ってた時期もあったから。
あいみょん 私も思ってました、CDをリリースするなんてすごいことだって。だけどどこがゴールかはまったくわからなくて、ただハングリー精神がある(笑)。今、一番やりたいところでライブをやっても、ここがゴールだ、おしまいや!みたいな感じには……。
但野 なる気がしないよね(笑)。どこに行けばいいのかわからないけど、終われないんです。
あいみょん 事務所の人とかに「『いつ音楽辞める』って言うかわからないけど、よろしくおねがいします」みたいな感じで始めたにも関わらず、やればやるほど、すべてに愛着が湧いて。まだまだ辞められへんなって思います。何より、曲を作って周りの人に褒められることが好きですしね(笑)。褒められることでさらに生まれるハングリー精神もあるんです。
但野 僕も褒められたいんです。なんなら歌うことより、褒められることが好きかもしれない。あと僕は、イマイチって言われるのが怖いんです。そういう弱さって邪魔なようで、音楽をやる原動力でもあるんでしょうね。だって自分が最強だったら、今の僕がいいなって思うような歌詞は書けないなって思う。弱いからこそ、そこが自分にとっての武器になってる。
──但野さんは過激な言葉や強いメッセージを書くときに自分自身にも刃を向けて奮い立たせてるところがあるのかなと。そこが聴き手にも刺さってるんでしょうね。
但野 誰かを傷付けるような言葉を歌うなら、同じ分の刃物を自分にも刺さなきゃってイーブンにしてるというか。そうじゃなきゃ信用してもらえないし、分かり合えない気がしてます。
──なるほど。オザケンへの憧れや、友達がいない問題など、お二人のいろんな共通項も見えた対談でしたがいかがでしたか。
但野 またあいみょんと対バンするのが楽しみになりました。俄然やる気ですよ!
あいみょん 厚かましいですけど、これからの最終少女ひかさがどうなっていくのか私も楽しみにしてます!
収録曲
- A.N.Z.N
- ハルシオン
- レイラ
- Rolling Lonely review
- 半分人間
- ロリータ
- さよなら最終少女
収録曲
- 愛を伝えたいだとか
- ハッピー
- MIO
ツアー情報
最終少女ひかさ「GEKOKUJO! -2017巣立ち-」
- 2017年5月14日(日)大阪府 Shangri-La(ワンマンライブ)
- 2017年5月16日(火)香川県 高松TOONICE
- 2017年5月17日(水)広島県 CAVE-BE
- 2017年5月19日(金)福岡県 public space 四次元(ワンマンライブ)
- 2017年6月9日(金)東京都 UNIT(ワンマンライブ)
- 2017年6月11日(日)愛知県 CLUB ROCK'N'ROLL(ワンマンライブ)
- 2017年6月23日(金)北海道 Sound Lab mole(ワンマンライブ)
最終少女ひかさ(サイシュウショウジョヒカサ)
2013年結成。北海道札幌市在住の但野正和(Vo)、ダシュンキ(G)、ラモネス(Key)、KOTA(B)、イワノユウ(Dr)からなる5人組バンド。2015年3月にタワーレコード限定のシングル「いぎありわっしょい」を、2016年4月に初のフルアルバム「グッドバイ」をリリースした。2017年3月には新作ミニアルバム「最期のゲージュツ」を発売した。
あいみょん
兵庫県西宮市出身のシンガーソングライター。歌手に夢見ていた祖母や音響関係の仕事に就いている父の影響で音楽に触れて育ち、中学時代にソングライティングを始める。2015年3月に発表したタワーレコード限定シングル「貴方解剖純愛歌~死ね~」など、センセーショナルな世界観の楽曲でSNSを中心に話題を集め、同年「tamago」「憎まれっ子世に憚る」という2枚のミニアルバムを発表した。2016年11月に1stシングル「生きていたんだよな」でワーナーミュージック内のレーベルunBORDEよりメジャーデビュー。2017年5月にはメジャー2ndシングル「愛を伝えたいだとか」をリリースする。