音楽ナタリー Power Push - 最終少女ひかさ「最期のゲージュツ」特集 但野正和(Vo, G)×あいみょん
ハングリー精神あふれる“終われない”2人
「この人死ぬかも!」って思う人にすごい惹かれる
──ある意味、ライバル関係みたいなものなんですかね。
あいみょん 「ひかさがやってる音楽は私には絶対できひん」って思うから、ライバル視するもんじゃないんかもなっていう気持ちもあるんです。
但野 僕はあいみょんの言葉の使い方に憧れますね。センスがいいし、おしゃれだなと思う。「どうせ死ぬなら」(2015年12月リリースのあいみょんのアルバム「憎まれっ子世に憚る」収録曲)の「どうせ死ぬなら二度寝で死にたいわ」って歌詞とか。シリアスなメッセージ性の中に絶妙な面白さがあると思う。熱くてストレートな曲もあるし。
あいみょん 基本的にはあんまり考えずに書いてて「どうせ死ぬなら二度寝で死にたいわ」ってワードが浮かんできたから曲を作り始めるとか、そういう感じなんですけどね。私も最終少女ひかさの「いぎありわっしょい」は衝撃でした。
──お二人それぞれの歌詞の過激さっていうのはどういうところからきてるんでしょうか。
但野 過激だとかって言われたり、イメージで“メンヘラミュージシャン”に括られたりっていうのは、自覚はあるんですよ。そっち側に思われるんだろうなとか。だけど作詞をするときにも言葉を使ってやろうっていう気持ちもないし。僕が面白いなって思うからああいう歌詞を書いてるだけで、それがどう届くかとかっていうのは考えてないんですよ。
あいみょん 私だって最初はフリッパーズ・ギターに憧れててオザケンみたいになりたかったんです。「ああいう渋谷系の音楽カッコいい、やりたい!」と思ったんですけど。なんだかんだ自分にできひん音楽にのめり込んじゃうことが多いんだなって思ってあきらめることも多くて。最終少女ひかさみたいな、ボーカルが暴れてるというか、そういうバンドも好きなんですよね。ボーカルがすぐ死にそうなバンドというか。
但野 不健康な感じね(笑)。
あいみょん そう、映像とかライブとかで観てて「この人死ぬかも!」って思う人にすごい惹かれるんですよ。ホントは死なないと思うんですけど。
但野 うん、死なないですけどね(笑)。うれしい言葉ですよ、死にそうって。
「人に認めてもらいたい」っていう欲がハンパじゃない
あいみょん たぶん、儚い人間が好きなんですよ。ギリギリの表現というよりも、但野さん自体がギリギリに見えるんです。本当はまったくそうじゃなくて全然ハッピーなのかもしれないですけど、ステージに立つと全然人が変わる感じがするし。最終少女ひかさを演じてるのか素なのかまったくわからないですけど。儚い感じがいいです。
但野 そもそも俺が好きなミュージシャンもそういう人たちが多かったのかな。もしかしたら歳をとってから音楽を必死になってやり始めたからかもしれないけど、メディアとかに出る前のバンドって、地元の小さいライブハウスでライブをするしかないと思うんです。そんな中でお客さんを増やしていくことは大変なことだったし、そこで自分ができることって、とにかく持ってるもんを全部出さなくちゃどうにもなんなかったんですよね。あいみょんが「いろんな音楽を好きだけど、これはできない」と思ったように、自分ができることって、だんだんわかってくると思うんです。僕も自分が一番向いてるなと思ったやり方が今のスタイルだったので。僕はいまだにすごいブレてる人間だから、人のライブを観て「あんまりエネルギッシュにカロリー高めのライブしないでこんなふうにちゃんと音程とか気にして歌おう」とか思うこともあるんです。でも実際にステージに立ってみたらライブの途中でいつものようになっちゃうんですよね。自分がステージで「こんなふうでありたい」という以上に、「人に認めてもらいたい」っていう欲がハンパじゃなかいから、それが自分が生きるステージのやり方だというか。そこしかないというか。
あいみょん 但野さんは1人で弾き語りをしてたときもあったりとか、いろんなやり方をしてきたんですもんね。それで今のスタイルになってるんだ。私もブレてるんで、人のライブを観てすぐ真似しようと思ったりとかしますよ、できないんですけどね。
但野 できないよね。でも僕は最近、ブレてていいやって思ってる。僕は男としてadidasのスニーカーばっかり持ってるようなヤツに憧れてたんだけど、最近は「adidasもNew Balanceも履いちゃおう」みたいになってる。あと僕もオザケンは好きでしたね。
あいみょん そうなんだ!
但野 僕は小学生の頃、初めは川本真琴が好きだったんだけど。その時期にオザケンの「痛快ウキウキ通り」がラジオで流れてきて、すごくいい曲だなと思って。でも僕は自分のセンスを信じてない子供だったから、母さんとか父さんに「これは誰?」って聞くのが恥ずかしくて。車の中でかかってたカセットテープはいつも、大黒摩季とかMr.Childrenとか竹内まりやで、でもある日、自力でまた「痛快ウキウキ通り」にたどり着いたんだよね。自分にはないものだけど好きだったな。
あいみょん 私も大好きだったけど、自分には無理だなって諦めましたね。
──憧れを自分の音楽スタイルに取り入れてみようとかもなかったんですか?
あいみょん 最初は音楽にそこまで興味がなかったんですけど、オザケンに出会った15歳くらいから一気に音楽を聴き始めて、私が一番好きなのは男性のシンガーソングライターなんだってことに辿り着いて。自分は女性なので、取り入れようとは思わなかったですね。
但野 僕も好きで聴いてたけど「オザケンの方向でがんばろう」って思ったことはないですね。アコギを始めたのは川本真琴の影響で、僕はあきらめきれなくて往生際が悪いので、いいなと思ったら取り入れようとしたりするんですよ。だからギターの高さとかもいまだによく変えますもん(笑)。
あいみょん ああ、それはわかるかも(笑)。
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収録曲
- A.N.Z.N
- ハルシオン
- レイラ
- Rolling Lonely review
- 半分人間
- ロリータ
- さよなら最終少女
収録曲
- 愛を伝えたいだとか
- ハッピー
- MIO
ツアー情報
最終少女ひかさ「GEKOKUJO! -2017巣立ち-」
- 2017年5月14日(日)大阪府 Shangri-La(ワンマンライブ)
- 2017年5月16日(火)香川県 高松TOONICE
- 2017年5月17日(水)広島県 CAVE-BE
- 2017年5月19日(金)福岡県 public space 四次元(ワンマンライブ)
- 2017年6月9日(金)東京都 UNIT(ワンマンライブ)
- 2017年6月11日(日)愛知県 CLUB ROCK'N'ROLL(ワンマンライブ)
- 2017年6月23日(金)北海道 Sound Lab mole(ワンマンライブ)
最終少女ひかさ(サイシュウショウジョヒカサ)
2013年結成。北海道札幌市在住の但野正和(Vo)、ダシュンキ(G)、ラモネス(Key)、KOTA(B)、イワノユウ(Dr)からなる5人組バンド。2015年3月にタワーレコード限定のシングル「いぎありわっしょい」を、2016年4月に初のフルアルバム「グッドバイ」をリリースした。2017年3月には新作ミニアルバム「最期のゲージュツ」を発売した。
あいみょん
兵庫県西宮市出身のシンガーソングライター。歌手に夢見ていた祖母や音響関係の仕事に就いている父の影響で音楽に触れて育ち、中学時代にソングライティングを始める。2015年3月に発表したタワーレコード限定シングル「貴方解剖純愛歌~死ね~」など、センセーショナルな世界観の楽曲でSNSを中心に話題を集め、同年「tamago」「憎まれっ子世に憚る」という2枚のミニアルバムを発表した。2016年11月に1stシングル「生きていたんだよな」でワーナーミュージック内のレーベルunBORDEよりメジャーデビュー。2017年5月にはメジャー2ndシングル「愛を伝えたいだとか」をリリースする。