表題曲「覚悟を決めろ！」ができるまで

──アルバムの1曲目「覚悟を決めろ！」はエッジの効いた疾走感のあるロックチューンで、サバシスターの新たな一面を感じられる1曲です。レコーディング時に込めた思いや意識したことは？

GK　ドラムとしては今までになかったタイプの曲で。自分の中で挑戦の1曲でした。ライブで完璧にできたらめっちゃカッコいいんだろうなと思って、今練習しています。でも演奏していて楽しいんですよ。初めて四つ打ちも取り入れたし、ヘドバンタイムもあって。演奏するのも楽しいですし、ライブでは聴いても観ても楽しいんだろうなと思います。

なち　私としては「こういう曲が作りたかった！」というものができました。四つ打ちの曲は前からやりたいと思っていたんですけど、満を持して「この曲で入れたいよね」と思える曲で、ようやく四つ打ちを入れられたのがうれしかったし、マイナーコードの曲も初めて作れたのでよかった。あとは、初めてギターのリフを考えたんです。イントロと間奏のヘドバンタイムにぴったりの激しめなギターリフを。

るみなす（G, Cho）

るみなす（G, Cho）

──初めてだったんですか？

なち　はい。今までは歌詞とメロディがほぼ同時にできて、それに合うようにコードを付けるところまでが私の仕事という感じで。これまでリフは、るみなすに「デレレーン♪って感じで始まるギター考えて」と言って作ってもらっていました。だけど、この曲に関してはイメージが最初からあって。それをもとにリフから考えていったので私にとって新しい挑戦でした。今回のアルバムでは初めてソロを弾いている曲もあるんですよ。

──ギタリストとして成長した期間だったんですね。「このアルバムでは新しいことに挑戦してみよう」と思って臨んだのでしょうか？ それとも自然と？

なち　このアルバムを作っている時期に、急にギターにハマったんです。それまでギターはそんなに好きじゃなかったんですけど、ハマってから練習し始めて。

GK　練習動画をお母さんに送ってたよね？

なち　うん。今までギターのコピーをしたことがなかったんですが、初めてギターコピーをして、毎日お母さんに送っていました。そこからギターのリフとかソロのフレーズを考えてみようかなという気持ちになりました。

──なちさんはPIZZA OF DEATH社長でもある横山健さんの大ファンとのことですが、サバシスターで活動したことで、対面も果たしました。ギターにハマったのは横山さんと出会えたことが大きい？

なち　そうですね。実はライブ用に、GibsonのES-335という大きな形のギターを健さんに借りていて。それまではギターに興味がなさすぎて、ずっとセカンドストリートで買った2万円もしない中古ギターを使っていたんです。サマソニもそのギターで出ていたんですけど、チューニングが合わなくなってきちゃって。そのタイミングで健さんにギターを借りたんですが、そのギターがすごく弾きやすくて！ 私はギターのストラップを短くしているということもあって「こんなに手元が見えて弾きやすいなんて！」と思いました。それで「ギター弾くの、楽しいやん！」って（笑）。

──ようやくギターが好きになったと。

なち　はい。ギターへの理解が深まることで、「こういうことがやりたい」というものも実現できるようにもなるだろうし、すごい進歩だなと思います。

──るみなすさんは「覚悟を決めろ！」のレコーディングで印象的だったことはありますか？

るみなす　スタジオで試行錯誤したんですよね。2番Bメロの、階段で降りていくようなコード進行は私がスタジオでポロッと言ったのが採用されたところですし、そうやってみんなで持ち寄ったものが形になった曲。ヘドバンタイムのところも、もともとはもっとメタルチックだったんですけど、ちょっとやりすぎかなと言って音を減らして。制作過程でいろいろなドラマがあった曲ですね。あと、私は四つ打ちの曲が好きなので、今まで聴いてきたバンドの曲を念頭に置いて◯◯を考えてみるとか、ワクワクしながら作りました。

──いつも以上に全員で作り上げたような。

なち　作り方自体は今までと変わっていないけど、全員がサバシスターの曲に対する理解が深まっているのかなと思います。「こうしたほうがよくなるよね」とか「じゃあ、自分はこういうものを考えてくるね」というのを、以前よりもみんなが提案できるようになってきているんだと思います。

GK（Dr, Cho）

GK（Dr, Cho）

目でも耳でもサバシスターを楽しめる

──これまでよりもレコーディングや制作にさまざまな人が関わった作品だと思いますが、そういった中でGKさん、るみなすさんは、なちさんがギターにハマったような変化や成長は何かありましたか？

GK　私もドラムは好きだけど、機材には興味がなかったんです。だけど、今テックで入ってくれているKOZOさん（MUGWUMPS、ex. Wienners）にいろいろ教えてもらううちに、自分の好きな音がわかってきて。ここにきてドラムに興味が湧くように（笑）。自分の好みを知ってからシンバルも新調したんですよ。

るみなす　それで言うと私も、マスタリングやミックスでじっくり個々の音を聴く時間が増えたので、自分の好きな音や気持ちのいい音を理解しました。自分の音だけじゃなくて、ボーカルやドラム、ベースに対しても「これは好きだな」というものが見えてきて。これからレコーディングを重ねていくたびに、耳がもっとよくなっていって、自分にとって、バンドにとっての正解が見つけられるようになって、それが自信につながっていくのかなと思いました。

──皆さんの音楽への興味や好奇心も刺激された制作期間だったんですね。そうやって作り上げたアルバム「覚悟を決めろ！」は、バンドにとってどのようなアルバムになったと思いますか？

るみなす　発売日の1週間後、3月15日が結成2周年の記念日なのですが、この2年間を詰め込んだようなアルバムになっていると思います。CDを出すたびに「名刺のような1枚です」と言っているんですが、今回は本当に名刺のような1枚になったと思います。さらに今回は初めて映像も付きます（CD＋DVD盤にはライブ映像とドキュメンタリーを収録したDVDが付属）。そこで人間的な面も知ってもらえると思うので、耳だけでなく、目でもサバシスターを好きだなと思ってもらえたらうれしいです。

サバシスター

GK　私事なんですけど……「しげちゃん」という曲は、私のぬいぐるみ・しげちゃんの曲で。初ライブからずっとやっているんですが、初ライブでやった曲で音源になっていなかったのがこの曲だけだったんです。そんな大事な曲が収録されているので、私にとってすごく大事な1枚になりました。曲自体も成長しているだろうし、しげちゃんも喜んでいると思います。

なち　新しい曲も既発曲も、ずっとライブでやってきた曲も入っていて、“サバシスターの1stアルバム”としてふさわしいものができたなという気持ちです。メジャーから出すアルバムだとか、PIZZA OF DEATHに所属して初めての作品だとか、そういうふうに見られることはもちろんあるんだろうけど、そういうことは関係ないと思えるくらい、自分たちのやりたいことを詰め込むことができました。

特典：スリッパなど遊び心いっぱい

──DVDのお話もありましたが、タワーレコード限定流通盤にはさらにスリッパが付きます。どうしてスリッパだったのかというのが気になりまして……。

なち　今までいろいろなグッズを作ってきましたけど、ライブ会場で販売するものだったので、ライブで使えるものや身に着けられるものが主でした。だけど今回はお店をCDに買いに行ったときとか、CDがお家に届いたときにもらえるものなので、ライブハウスで欲しいものとは違うものがいいよねという話になって……最終的にスリッパになりました。今後もこういう機会があったら、次はトイレットペーパーとか、電球とか、買っていくと家が完成するみたいなものを作っていけたらいいなと思っています（笑）。

──今はサブスクなどデジタル配信が主な時代ですが、CDを手に取ってほしいというこだわりもあるのでしょうか？

なち　そうですね。私は好きなバンドはCDを買うし、モノとしても集めたい。それに、私たちのCDは、ジャケットの紙の色から文字の色、書体から全部自分たちで考えて、1文字ずつ自分で打っているんです。PIZZA OF DEATHまで行って、デスクワークを（笑）。そういうものが画面上だけで終わるのはすごく寂しいなと思うし、一生懸命作り上げたすごく思いのこもったものなので、純粋にみんなの手に届いてほしいなという気持ちは、自分が作り手側になってより感じるようになりました。今回のジャケットのタイトルも鉛筆で描いたんですよ。

るみなす　レコーディング中に試行錯誤していたよね。

なち　そうそう。ジャケットをこれにしたことによって、ツアーグッズの題字とかも手描きしなくちゃいけなくなっちゃって（笑）。鉛筆で描いて、スキャンして、色を付けて……って。そういう作業を1つひとつやっているので、ぜひCDを手に取ってほしいです。

サバシスター