サバシスターは、なち(Vo, G)、るみなす(G, Cho)、GK(Dr, Cho)の3人からなるガールズバンド。2022年3月に結成されて以降、瞬く間にインディーズシーンで注目の存在となり、大型ロックフェスなどへの出演を果たしてきた。そして結成から2年目の2024年、彼女たちはPIZZA OF DEATHとのマネージメント契約およびポニーキャニオンからメジャーデビューすることを発表。まさに破竹の勢いで躍進しており、3人はワンマンライブを実施するよりも早く、メジャーの道に進むこととなった。
音楽ナタリーではそんなサバシスターの活動に迫るべく、3人にインタビュー。それぞれのルーツや、PIZZA OF DEATHを選んだ理由、メジャーデビューにあたっての心持ち、そして1stアルバムの手応えについて話を聞いた。
取材・文 / 小林千絵撮影 / 西槇太一
PIZZA OF DEATHの印象
──皆さんは結成5カ月で「SUMMER SONIC 2022」に出演し、以降もさまざまなイベントに引っぱりだこです。そして今年1月にPIZZA OF DEATHに所属することが発表されると、ロックファンを中心に話題となりました。
なち(Vo, G) 私としては「売れたい」とか「こういうふうになりたい」とかそういうものはなくて、楽しく自分たちの音楽をやりたいという気持ちが一番大きくて。いろいろなレーベルや事務所からお話をいただいている中で、「こういう見せ方で売り出したい」と言ってくれたところもあったし、「何年以内にZeppでやりましょう」とプレゼンしてくれるところもありました。もちろんそれぞれ魅力的でしたけど、PIZZA OF DEATHはライブの動員とかSNSのフォロワー数といった数字よりも、「カッコいいものとかカッコいいやり方を大事にしたい」という考え方で。それが私の根本にあるものや音楽をやっていくうえでの意味みたいなものと重なったので、ベストな選択だと思っています。
──実際に所属バンドとして活動を始めてみて、PIZZA OF DEATHについてどのように感じていますか?
GK(Dr, Cho) 私は事務所やレーベルをあまり知らなかったのですが、ほかの大きなところだったら、こんなに親身になってくれなかったのかもしれないなとは思っていて。たぶんPIZZA OF DEATHの人たち1人ひとりが、私たちのことを好きでいてくれて……わかんない、勝手に思ってるだけかもしれないですけど(笑)。好きでいてくれて、一緒にやっていきたいと思ってくれているというのを感じるんです。それがよかったなと思うし、がんばらなきゃという気持ちになります。
るみなす(G, Cho) 私はPIZZA OF DEATHのことをまったく知らなかったわけじゃなくて。フェスではWANIMAを絶対に観に行っていたし、Hi-STANDARDの曲もライブハウスでよく流れていたから知っていました。なちがピザを好きなのも知っていたけど、「我々の音楽はピザには合わないんじゃないか、入ったとしてもうまくやっていけないんじゃないか」という不安が大きくて、自信がなかったというのが正直なところでした。でもピザの皆さんが信じてくれるんだったら、私も信じて一緒に進もうと思って。実際に入ってみると、PIZZA OF DEATHの皆さんとは自分の悩みや思っていることを話す機会も多いし、「こんなに居心地のいい場所があるんだ!」と思ったくらい、すごく信頼できます。
──そしてさらにポニーキャニオンからメジャーデビューも果たします。なちさんが、PIZZA OF DEATHを選んだ理由として「楽しく自分たちの音楽をやりたいから」とおっしゃっていましたが、メジャーデビューに関してはどう考えていたのでしょうか?
なち メジャーとかインディーズというくくりであまり考えていなくて。ただ、メジャーデビューするということは仕事になるということ。だからちゃんと音楽をやらなきゃいけなくなると思ったし、事務所とレーベルがほぼ同時に決まったので、ここから本気でプロのミュージシャンとしてやっていくという決意が固まりました。自分の根本にある芯は保ったまま、カッコいいものをやるというのが一番で、レーベルもそれを理解してくれるところを選んだつもりです。自分たちのやっていきたいことをサポートしてくれて、バンドがより大きくなれると思うところを選びました。
3人がサバシスターになるまで
──躍進中のサバシスターですが、音楽ナタリーに初登場ということで、幼少期に聴いていた音楽や楽器を始めたきっかけなど、皆さんの音楽遍歴を教えてください。
GK 楽器の遍歴で言うと、3歳からピアノとバイオリンを習っていて、その頃は家や車の中でもクラシックを聴いていました。小学生のときに「太鼓の達人」にハマり、中学生になってからドラムを習い始めました。その頃から今でも好きな音楽はamazarashiで、影響を受けたのはBUMP OF CHICKENです。
るみなす 私は中学生のときからずっとアニメが大好きだったので、聴く音楽もアニソンやゲーム音楽が中心でした。ONE OK ROCKやFACTの曲もアニソンとして好きでした。そんな中でアニメ「けいおん!」に憧れて中学2年生のときにエレキギターを習い始めたのが、楽器に触れたきっかけです。
なち 私は小さい頃から音楽がめっちゃ好きで。特にCMの曲が好きで、「CMソングはほとんど歌えます」という園児でした。あとは「おかあさんといっしょ」とか「いないいないばあっ!」の歌が入っているCDをずっと車の中で聴いていました。童謡とかCMソングみたいな、わかりやすくて誰でも知っているような曲が、今の私のルーツにあると思います。小学校に入ってからはピアノを習うようになって、中学3年生まで続けてました。今思えば、ピアノも、1人で弾くよりも合唱の伴奏とか人と合わせるほうが好きでしたね。ギターを始めたのはテレビで(横山)健さんを見てから。そこでバンドに興味を持って、保育園から一緒だった親友に「ベースをやって」とお願いして、バンドを組みました。
──コピーバンドではどういった曲を?
なち Hump Back、TETORA、yonigeといったガールズバンドと、THE BLUE HEARTSの曲を。ガールズバンドの曲は私が歌っていたんですけど、THE BLUE HEARTSはベースの子が歌うという謎の振り分けをしていました。
GK そうだったんだ。知らなかった!
──絶対に自分で歌いたいというわけではなかったんですね。
なち はい。健さんに憧れていたということもあって、ボーカルよりもコーラスのほうが好きだったんです。本当はサバシスターでもコーラスをやりたかったんですけど、コーラスができる人ってギターがうまくないとダメというイメージがあって。私はコードしかギターが弾けなかったので、ボーカルにしました。
──お話を聞くと3人のルーツや音楽性はさまざまですね。サバシスターを結成した際、イメージしていた理想のバンド像はあったんですか?
GK いや。初めて会ったときに一応好きなバンドは共有していたけど、方向性とかは決めていないですね。一緒にやりたいっていうだけで。
──とにかくバンドを組みたい、と。
GK そう。「ガールズバンドを組みたい」ってだけだったから、方向性とかはなく「うちらでできることをやってみよう」という感じでした。
なち 最初GKちゃんと2人でスタジオに入ることになり、生まれて初めてオリジナル曲を作りました。自分がどういう曲を作れるかもまだわからなかったんですけど、10曲くらい作って。そこにドラムが入ってギターが加わって……って数曲が完成したときに、このバンドの方向性が見えたという手応えがありました。
GK これまでいろいろな曲を聴いてきて「ありきたりなことを歌っているな」と思うことが多かったんですが、なちの曲はなちの日常1つひとつが歌詞になっていたので、すごく面白い曲を作る子だなと思いました。さっき、子供の頃CMとか童謡が好きだったと言っていましたけど、それが曲作りに生きているんだろうなって。
怒り、悔しさ、決意、いろいろ
──そして1stフルアルバム「覚悟を決めろ!」が完成しました。特に表題曲をはじめとする新曲では、本音や等身大の強い思いがつづられている印象ですが、どんな構想があったのでしょうか?
なち 「アテンション!!」(2023年3月)というEPを出した頃から「次にアルバムを作るなら“怒りアルバム”を作りたい」と思っていました。そのときはメジャーとかそういう話はまったく決まっていなかったんですが、ライブでやっているけどまだ音源にしていない曲には怒りや悔しさから生まれた曲がけっこうあったので。そんな中でメジャーデビューの話も進んでいったので、音楽をやるうえで思ったこととか決意も曲にできて、結果的に怒りや悔しさなどの強い気持ちをテーマにした作品になりました。
──ライブで演奏していたとはいえ、これまでにリリースされた楽曲は明るくてキャッチーなものや、ポップなものが多かったと思います。怒りや悔しさを歌うことで、これまでの明るい雰囲気とのギャップが生まれるのではないかなど、不安などはありませんでしたか?
なち 私はジャンルに縛られるのが嫌で。反骨精神というわけではないですけど、例えば「ロックバンドをやっています」と言っても「そんなのロックじゃねえよ」って否定されたり、「パンクバンドをやっています」という自己紹介に対して「パンクじゃない」と言われるのが嫌だから。そもそも、自分のルーツになっているさまざまな音楽ジャンルを取り入れ、それらを自由な形で音楽作りに反映させたいから自分で「ロックバンドです」とか「パンクバンドです」と言いたくない。これまで出した曲にはロックンロールみたいなのからバラードまであるし、恋愛ソングだってある。今回もいろいろなタイプの曲に挑戦してきたので、どう思われてもいいというか。そこはずっと変えていないスタイルです。
──とにかく自分のやりたい音楽をやっていく。
なち そうですね。周りに何か言われると落ち込んでしまうタイプなので、何か言われる前に、自分の道を確立して、自分で納得できるやり方を見つけてやっていくというスタイルです。
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表題曲「覚悟を決めろ!」ができるまで