音楽ナタリー PowerPush - TAISEI(SA)×カジヒデキ対談

同級生2人が語る青春時代とそれぞれの道のり

何が起こるかはわからないけど、何かは起こしたほうがいい

──「BRING IT ON!」はいろいろと新しいエッセンスが感じられるアルバムですが、シンガロングできる曲の力強さとキャッチーさはSAの真骨頂だなと改めて感じました。

カジ うんうん。シンガロング、すごく憧れるんですよね。僕はフットボールが好きだから。だから自分の曲にも一緒に「オーッ!」って叫べるものを入れたりするんだけど、SAみたいにカッコいい感じにはなんなくて。

左からTAISEI、カジヒデキ。

──今回のアルバムに関してはやはり、野音のあの空間でシンガロングすることを意識したんじゃないでしょうか。

TAISEI それは非常にありますね。僕らが今のメンバーになって14年やってきた中で、SAのために何かやりたい、SAのために拳を上げたいっていう……やっぱ熱いのよウチらの客は。そういう子らを一堂に会したいなと。3000人集まる野音という場所で決起して、「おう俺は北海道から来たコムレイズ(SAファンの総称)だ」「俺は九州のコムレイズだ」ってさ、1回集まって肩組んでほしかったの。それに向けてのアルバムだから、いつも以上にコムレイズに向けて作っている作品ではある。

──それこそ初期のSAから追いかけている人もいれば、最近フェスなどで観てハマった若いリスナーまで、幅広い層が一堂に会する場となるでしょうね。

TAISEI そうそう、最近は若い子も多くて。「SAのライブは客が怖いしなあ」みたいな先入観がやっぱあると思うんだけど、そうじゃないんだよということをこのアルバムでも提示したかったし、何より「SAのライブは楽しいぜ?」ってことがよくわかるアルバムにしたかった。今はネット世代だの草食系だのって言うけど、ギラついてる奴はいっぱいいるんですよ。時代なんて関係なく、若くてギラついてる奴はいっぱいいる。「な? お前もそうだろ?」ってところをくすぐってやりたいんだよね。カジくん聴いてる若くておしゃれな子たちにも(笑)。「SAのボーカルってカジくんの同級生なんだ。聴いてみようかな。……ええーっ! 何これ?」って(笑)。

カジ ははははは(笑)。

TAISEI 何が起こるかはわからないけど、何かは起こしたほうがいいんだよ。この対談も何かのきっかけになったらいいよね。

カジ コムレイズに向けて作ったって言ったけど、すごく間口の広いアルバムだなと思うよ。やっぱポップなんですよ。もちろんパンクスが好きなゴリゴリな部分はすごくゴリゴリなんだけど。

TAISEI ちゃんとゴリってるでしょ(笑)。でも自分がポップなもんが好きだと、ポップじゃないものを作るほうが難しいんだよね。アルバムなんだから、自分の内面をさらけだしたみたいなダークな曲が1曲ぐらいあってもいいんじゃないかと思うんだけど、やっぱりしっくりこないんですよ。

TAISEI×カジヒデキ、同級生コラボ実現!?

──これをきっかけに、2人が今の自分の音楽で交わるところが観てみたいですね。わかりやすいところでは対バンとか。

TAISEI そうそう、日高(央)くんも言ってたよ。「SAとTHE STARBEMSとカジくんとで対バンやりましょうよ」って。

──ああ、THE STARBEMSが間に挟まるとなんか違和感ないですね(笑)。

カジヒデキ

カジ もちろん喜んでやるよ!

TAISEI SAもみんなボーダー着るからさ(笑)。

カジ じゃあ僕は革ジャンを着て(笑)。

──今日のお話を聞いていたら、対バンだけではなく、いっそ一緒に音楽を作っても面白いんじゃないかと思いました。カジさんのプロデュースで、TAISEIさんのSAとはまた別の引き出しを開けてみたり。

カジ ああー、なるほど。きっといろんなことができるでしょうね。今パッと浮かんだのだと、エルヴィス・プレスリーみたいなのをやっても面白いだろうし。

TAISEI The Honeydrippersみたいなのやってよ。

カジ うんうん、いいよね。あえて今風にアップデートしたスタカン(The Style Council)みたいなのもいいかも。

──今日のこのファッションに合わせた感じで。

TAISEI リーゼントじゃない頭でジャケット撮ってみたいよね、1回ぐらいは。

心意気は常にカッコよく

──今のSAが現メンバーになって14年目ということは、15周年も間近に控えていることになりますが、今後バンドでどういうことをやりたいとか、15周年に向けて何か考えていることなどはありますか?

TAISEI

TAISEI うーん、それほど壮大な計画はないけどね。バンドは続けていきたいと思ってるし、この歳になったからこそ音楽の可能性というものをもう少し追求していきたいですね。自分のミュージシャン人生で何ができるのか。それこそ今言ったカジくんのプロデュースなんかもアリだろうし、いろんな挑戦はしていきたいなと思う。バンドマンとしてはもちろん、歌い手としても。そういうことをやってもいい歳になったのかなって気がしてて。痛々しいパンクバンドにだけはなりたくない。いつでもスタイリッシュでいたいなあと思う。

カジ それは重要だよね。

TAISEI いい意味でも悪い意味でも、そういうこと考える歳になったのかな。肩肘張って「俺はパンクスだからよ」って言ったって50手前なんだから。カジくんにはずっと王子様でいてほしいけどね(笑)。

──お2人ともキャリアで言えば、もはや中堅ではなくベテランと言える領域だと思うのですが、そういう実感はありますか?

カジ 年齢だけはね(笑)。ライブをやるといまだに初期衝動みたいなのが出ちゃうし、そうじゃないと自分で居心地が悪いというか。決めすぎてカッチリやるのは……本当はそういうことやってもいい年齢なのかもしれないし、傍からみると音楽スタイル的に決め込んだものをやってるように思われるかもしれないけど、なんかできないんですよね。そうじゃないとライブやった感じがしない。それはやっぱり学生の頃パンクに影響を受けたからだと思う。ライブはそういうもんだっていう。今でも短パンだし。今日はたまたま履いてないけど(笑)。確かにそれが痛々しくなってきたら嫌だし、TAISEIくんが言うようにいつもスタイリッシュでいたいなと思いますね。音楽だけじゃなく、生き方としてもそういう心持ちでいたいというのはすごくあるかな。

TAISEI 僕はよくライブで「カッコつけていこうぜ」って言うんですよ。それは洋服をってことじゃなくて、気持ちとか心意気ね。心意気は常にカッコよく生きていかないと。

カジ うんうん。こういうタイミングでTAISEIくんとゆっくり話せたのはうれしかったな。野音は観に行きたいな。

TAISEI ぜひぜひ!

左からTAISEI、カジヒデキ。
SA ニューアルバム「BRING IT ON!」2015年4月8日発売 / 2484円 / PINEAPPLE RECORDS / PAC-009
SA ニューアルバム「BRING IT ON!」
収録曲
  1. RISE TO ACTION
  2. GO ALL THE WAY
  3. 青春に捧ぐ part2
  4. あったけぇうるせぇ R&R バンド
  5. 雄叫び
  6. BELIEVE IN MAGIC
  7. 破滅型ダンディー
  8. YOUR DOOR
  9. グロリアス・ボーイ
  10. OKEY-DOKEY
SA リマスターアルバム「GREAT OPERATION FOR REVIVE」2015年4月8日発売 / 2592円 / PINEAPPLE RECORDS / PAC-010
SA リマスターアルバム「GREAT OPERATION FOR REVIVE」
収録曲
  1. DON'T DENY, GIVE IT A TRY!!
  2. THIS IS ALL I NEED
  3. DEATH OR SUBMISSION
  4. DIE WITH HONOR
  5. BORIN' BORIN'
  6. DRAWING YOUR FLAG
  7. FOR THE UNITY
  8. CHAIN
  9. KNOW RIGHT FROM WRONG
  10. LOOK UP TO THE SKY
  11. FOR WHO, FOR WHAT
  12. UPSTART BOYS
  13. BORSTAL BREAKOUT
  14. REVENGE OF GUTTER BOY
  15. runnin' BUMPY WAY <Ver.mov!>
  16. DELIGHT <Ver.mov!>
  17. FIGHT BACK TEARS
  18. PUMP IT UP
SA(エスエー)
SA

1984年、当時高校生だったTAISEI(Vo)が中心となり結成したパンクバンド。キャッチーなメロディで人気を集めるも、3年弱で解散する。その後TAISEIのソロプロジェクトとして1999年に再始動。NAOKI(G)の加入をきっかけにバンドとして活動し始め、KEN(B)、SHOHEI(Dr)を迎えた4人編成となった。高い演奏力を持って繰り出されるパンキッシュナンバーと、熱いパフォーマンスで老若男女からの支持を集めている。2015年4月にニューアルバム「BRING IT ON!」をリリースし、同年7月には東京・日比谷野外大音楽堂にてワンマンライブを行う。

カジヒデキ
カジヒデキ

1967年千葉県出身のシンガーソングライター。1989年結成の男女混成バンド・bridgeでベースを担当し、1993年3月に1stアルバム「Spring Hill Fair」をリリース。1995年のバンド解散を経て、1996年8月に「マスカットe.p.」でソロデビューを果たす。そのポップな音楽性とキャラクターが幅広い支持を受け、一躍“渋谷系”シーンの中心的存在に。他アーティストの楽曲提供やプロデュースなども多数手がけつつ、コンスタントにリリースを重ね、2008年公開の映画「デトロイト・メタル・シティ」に提供した「甘い恋人」はスマッシュヒットを記録した。2012年3月に自身のレーベル「BLUE BOYS CLUB」を立ち上げ、同年5月に約2年半ぶりのニューアルバム「BLUE HEART」をリリース。以降、2013年2月に「Sweet Swedish Winter」、2014年8月に「ICE CREAM MAN」とコンスタントにアルバムを発表している。