ナタリー PowerPush - RYUKYUDISKO
もっと多くの人に音楽を届けたい テクノの枠を超えた全方位型アルバムでシーンに問う
RYUKYUDISKOが実に2年振りとなるフルアルバム「pleasure」を9月23日にリリースする。
テクノアーティストである彼らが今回生み出したのは、ポップなメロディと多彩なボーカリストの声で満たされた歌心溢れる作品。多和田えみ、曽我部恵一、SAWA、城南海、BLACK BOTTOM BRASS BAND、iLL、MEG、Dachambo、NAOTO(ORANGE RANGE)、井上ジョー、しおりといった多くのアーティストがこのアルバムに参加している。
この意外性のあるアルバムを作るために、廣山哲史と廣山陽介は何を心に思い描いたのだろうか。インタビューでは2人を直撃し、この2年間に考えたこと、試みたことについて余すところなく話を訊いた。RYUKYUDISKOが考える次の一手が散りばめられたアルバムを楽しむためのお供にしてもらえれば幸いだ。
取材・文/野口理香 撮影/中西求
アルバムのコンセプトは「ポップであること」
──フルアルバムのリリースは2年ぶりですね。まずは「待ってました!」と言いたいです。2年というスパンはRYUKYUDISKOにしては長めだな、と思ったんですが。
哲史 ね。今までだいたい1年ぐらいのスパンで出してきたからね。今回、ゆっくりではないけど、丁寧に、時間をかけて作ったからかな。
陽介 2年の間、制作しながらライブしたり。あとシングルを出したりしてたのもあるけどね。なんでこんなに時間かかったかっていうと、フィーチャリングアーティストや共同作業している人の数が多かったので、お互いのスケジュールの調整がたいへんだったんですよ。あとは曲ができてからボーカリストを選定する作業があったり。
哲史 デモも50曲ぐらいあった中から厳選して選んだんですよ。
──50曲もあると、もう1枚ぐらいアルバムが作れるんじゃないかと思うんですが。
陽介 いや、整理して15曲だったんで、このアルバムに入れなかった曲たちは、ここまで。次からはまた心機一転作っていきたいと思いますね。
哲史 今回のコンセプトに合わなかった曲もあるし。あとはDJで使ったりするかも。
陽介 縁がなかったというか(笑)。
哲史 たくさん作って別に損はないんで。
──哲史さんが今「コンセプトに沿って」とおっしゃってましたけど、お2人が考えるこのアルバムのコンセプトはどんなものなんですか?
哲史 やっぱり「ポップであること」。あとは、今回は歌ものを増やそうと決めてたんですよ。やっぱり歌もののほうが聴きやすいし、より多くの人に届きやすい。歌ってそういう魅力を持ってると思うんですよ。なんだろうな、僕らは曲を作る人間だから、機材がどうこう、楽器がどうこう、曲の構成がどうこうっていうふうに考えちゃうんですけど、聴いてくれる人たちの中にはもっと歌寄りな耳をしてる人もいるかなって。それは「着うた」って言葉が象徴してると思う(笑)。インスト曲でも「着うた」って言うし。
──あぁ、そうですね、言いますね。
哲史 ね、“歌”じゃないのに。あともうひとつ、僕、塾の先生してたんですよ昔。で、事務作業をしてるときに普通にテクノとかを流してたんだけど、そんなとき通りがかった生徒に「この曲どう思う」って聞いてみたら「先生この“歌”、歌がない」って言われたんです。「この“曲”、歌がない」じゃなくて。そうやって感じるような中学生ぐらいの子にも聴いてほしいから、歌ものにしたかったっていうのはある。
──じゃあ、もっと多くの人に聴いてもらいたいという考えが根底にある?
哲史 そうですね。音楽をやってるからには、やっぱり1人でも多くの人に自分たちの音楽を聴かせたいって欲求があるんですよ。そうするためにはどういう表現方法があるのかっていろいろ考えて、最終的に「やっぱり歌ものかなぁ」って思ったんだけど。歌ものがきっかけでもいいんですよ。僕らはテクノが好きで、テクノをばーんって聴かせたいけど、世の中にはテクノに興味を持ってない人も多いわけで。そういう人たちにどうやったら届けられるかを考えると、歌ものだったり、ポップな曲が有効かな、と考えたんです。それをきっかけにリスナーが増えてくれたら、上手にテクノの世界に引っ張っていきたい。
陽介 実は、前回のアルバム(「INSULARHYTHM」)の後に「もうちょっと歌ものを増やしたいね」って話してたんです。でも、歌ものとトラックで聴かせるタイプの曲を完全に分けて考えてるわけじゃなくて、ありとあらゆる表現方法の中のひとつとしてとらえてるんです。選択肢のひとつとして歌ものもあるし、今までやってきたようなインストもあるし、っていう考え方。そういういろんな表現方法を、このアルバムの中に入れ込めたと思う。
哲史 いろんな人に「歌もの多めですね」って言われるんですけど、実は歌ものとトラックもの、半分ずつなんですよ(笑)。
陽介 それを自然にさらっと聴ける1枚ができたなって思います。
哲史 トラックものにしても、自画自賛するのも何ですけど、メロディがしっかりしてるから歌心があると思ってもらえるのかもしれない。
CD収録曲
- MOTHER feat. 城南海
- Starlight Waltz feat. 多和田えみ
- 1978 feat. 曽我部恵一
- SPLASH★ feat. SAWA
- Sound to Bang【Counting Rhyme】
- OK Sampler (WhatAaaa ReChamploo) ※ギター:NAOTO (ORANGE RANGE) / 声:井上ジョー
- てくの NO ひみつ
- Top of the Island (WhatAaaa ReChamploo)
- てぃんさぐぬ花 feat. 多和田えみ
- RKD MARCH feat. BLACK BOTTOM BRASS BAND
- ARIGATO sampling from りんけんバンド
- RYUKYUDISTO feat. Dachambo
- 遥 feat. iLL & MEG
- MY WAY
- ハイビスカス feat. しおり
DVD収録曲
- OK Sampler
- Top of the Island
- Osaka by Okinawa / RYUKYUDISKO×AFRA & INCREDIBLE BEATBOX BAND
- Starlight Waltz feat. 多和田えみ
- MOTHER feat. 城南海
RYUKYUDISKO(りゅうきゅうでぃすこ)
沖縄出身の廣山哲史(左)&廣山陽介(右)の兄弟からなる双子テクノユニット。当初は別々に音楽活動を行っていたが、互いの音楽スキルを共有し理解し合えた頃よりRYUKYUDISKOとしての活動を本格的に開始させる。石野卓球に渡したデモテープがきっかけとなり、2004年6月に彼が主宰するレーベルからミニ・アルバム「LEQUIO DISK(レキオ・ディスク)」を発表。同年7月には日本最大級のテクノイベント「WIRE04」に出演し、入場規制がかかるほどの人気ぶりをみせた。デビュー当時より、一貫して故郷の「沖縄の音」にこだわった、オリエンタルなサウンドを展開し海外でも注目を集めている。また、自身の音源だけでなくm-flo、ORANGE RANGE、AIR、CHEMISTRYなど、数多くのアーティストのリミックスも担当。斬新なアイディアを取り込んだサウンドは、アーティストの新しい側面を引き出すと評判になっている。