シンガーソングライター清竜人がプロデュースする異色の“一夫多妻制”アイドルグループ・清 竜人25が再始動を果たした。“旦那”である竜人はそのままに、新たな“夫人”として清さきな(頓知気さきな / femme fatale)、清凪(根本凪)、清真尋(林田真尋)、清ゆな(チバゆな / きゅるりんってしてみて)の4人が参加。個々に活動する5人が集まり、アイドルシーンのみならず音楽シーン全体に新たな旋風を巻き起こしている。
7月11日のお披露目ライブからおよそ4カ月。ステージ上でイチャイチャを展開する唯一無二のパフォーマンスは2014~17年に活動した前体制と変わらぬスタイルだが、アイドルとしての活動経験がある夫人メンバーのポテンシャルは高く、新たな可能性を感じさせる。サウンド面にも変化が見られ、タイトルや歌詞が「♡」だらけだった楽曲のカオティックなテンションから一転、洗練されたリアレンジとともに「♡」は剥奪されている。リアレンジバージョンで披露された「THE FIRST TAKE」のパフォーマンス映像も広く話題に。現体制初のオリジナルソングとして8月にリリースされたシングル曲「青春しちゃっていいじゃん」は“一夫多妻制”のギミックにとらわれない爽快感あふれるポップスだった。
そしてこのたびリリースされたパッケージEP「BOYFRIEND EP」には、新体制2曲目のオリジナルソング「KARESHIいるんだって」と過去曲のリメイク音源「アバンチュールしようよ」「LOVE&WIFE&PEACE」、さらに清 竜人25初の公式リミックス「Will you marry me ? - ZOMBIE-CHANG Remix」「青春しちゃっていいじゃん - DJ DISK Remix」を収録。やはり以前の清 竜人25とは異なるクリエイションの魅力が感じられる。新たに動き出した清 竜人25について、竜人はどのような戦略を立てているのか? また夫人たちはここまでの活動を通してどのような思いを抱いているのか? そして、この新生清 竜人25はこの先どういう展開を見せてくれるのか? 5人に話を聞いた。
取材・文・撮影 / 臼杵成晃
思惑通り?想定外?
──再始動した清 竜人25は「竜人くんとその妻による男女混合ユニット」というフォーマットは先代と同じながら、どことなく違うムードがあると感じます。活動がスタートしておよそ4カ月が経ちましたが、ここまでは思惑通りなのか、それとも想定外のことがあるのか、竜人くんとしてはいかがですか?
清竜人 うーん……どうかなあ。グループとしての広がりとか、クリエイションなどもそうですけど、なんとなく考えていた通りのポジティブな具合に進んでいるかなあと思っています。想定外なところで言うと、まずはメンバーの交代と(笑)、あとは客層ですね。前回の25が好きだった人たちとはいい意味で雰囲気が違う。
──それはけっこう感じます。一般のオーディションで集まった先代と違い、夫人たち4人がもともと名のあるメンバーであることが大きいと思いますけど、夫人のファン層が以前のアイドルシーンの客層とも違うところにあるのかなと。
竜人 新しいお客さんが付いてほしいと考えていたところがありますけど、思ったより早く新しいリスナーが増えてきているのかなと思います。
──そこは新たな夫人を迎え入れるうえでも視野に入れていた?
竜人 もちろんそれもあります。
──夫人たちの実感としてはどうでしょう。皆さんは先代の25についてどういう印象を持っていたのか……ゆなさんは世代的にもしかすると知らない?
清ゆな ちょっと存じ上げなくて……。
一同 うふふふふ。
清真尋 私は清 竜人25はけっこうイチャイチャが激しめのグループという印象があったから、正直「大丈夫かな?」という心配があったんですけど、実際に活動してみて……まあイチャイチャはすごくするんですけど「楽しい」のほうが勝ってます。最初は私のファンの方も戸惑いがあったみたいで、寂しいというか「竜人くんズルい」という見方をしている人が多かったと思いますけど、今は「真尋ちゃんが楽しんでる姿を見れるなら幸せ」と言ってもらえるので。
──イチャイチャ前提でよくOKを出しましたね。
真尋 (笑)。でも私は基本、男女問わず人との距離が近いタイプなのでそれほど抵抗がないんです。
──凪さんは以前から別の形でも竜人くんと接点がありましたけど(参照:ねもぺろ from でんぱ組.inc「ファーストキッスは竜人くん♡」MVに清竜人参加)。
清凪 清 竜人25は2014年結成で、実は私と同期なんです。虹のコンキスタドールで活動を始めたのも2014年で。「清竜人さんがすごく面白いプロジェクトをやられている」と近くで見ていたんですが……一夫多妻制のアイドルなんて当然なかったし、これは革命だと思ったんですよ。いちファンとしてこの革命をどこまで見守っていけるかと思っていたのですが、時が経ってまさか自分が入ることになろうとは。前とは形は違いますが、全員でステージに立ったときのパワーがなんというか、プリキュアみたいで。すごくハッピーで、メンタルケアにもなっています(笑)。
──確かにプリキュア感、アベンジャーズ感がありますよね。
凪 我々ならなんでもできるという気持ちになりますね。
清さきな 実感……たった4カ月だけど、濃すぎてあまり覚えてないんだよなあ。私にとっては、想像通りの楽しいグループです。いい意味で想定外だったのは、集まった夫人たちがホントみんないい子で、仲よくなれる感性の子たちだったこと。私もほかのグループに入ったこともあるし、近くでいろんなグループを見てきたけど、全員が全員仲がいいグループってほとんどないんですよ。4人集まって4人とも仲よくなれたのは想定外のラッキーで。今の活動が何より楽しいのは、このメンバーが集まったからだなと感じています。
夫人たち (無言で拍手)
──もともと夫人同士の接点はなかった?
さきな 私は全員とちょっとずつありました。ゆなに関しては高校の後輩で、付き合いは長いけどずっと先輩後輩の壁を越えられなかったから、今こうして同じグループで活動しているのはすごく感慨深いし、8年越しくらいでやっと仲よくなれました。
──ゆなさんはお披露目ライブで突然新メンバーとして加入するという異例の参加になりましたが(参照:清竜人、いきなり嫁に逃げられるも新しい嫁と即結婚)、清 竜人25の第105夫人としての活動はいかがですか?
ゆな 最初はファンの方たちに反対されるんじゃないかな、嫌がられるんじゃないかなという不安が大きくて、お披露目前にはメンバーに相談してました。でも2回目、3回目とライブを重ねるうちに会いに来てくれるお客さんも増えて、ペンライトを振ったり特典会にも来てくれたり。「私、ここにいてもいいんだ」と思ってからはすっごい楽しいです。
──イチャイチャは大丈夫ですか?
ゆな イチャイチャは恥ずかしすぎる(笑)。リハーサルとかでは遠慮してるのに、本番ではすごいイチャイチャしてくるから、この間なんかびっくりして三度見くらいしちゃって。
真尋 「え? え?」ってよく首振ってるイメージ(笑)。
夫人たちのバランスは
──清 竜人25は設定的に「旦那のことは“竜人くん”と呼ぶ」というのがあったと思うんですけど、さきなさんあたりが早々に崩しましたよね。すでに尻に敷かれている感が出ているというか(笑)、そのあたりも先代との違いが出ているなと。
さきな 最初は気を使って「竜人……くん」みたいな感じで呼んでたけど、普通に邪魔だなと思って(笑)。
竜人 俺の印象だと、さきなよりも真尋が先に竜人って呼び始めた気がする。
真尋 竜人って呼んじゃう。竜人くんだとなんか気持ち悪い(笑)。
竜人 今から竜人くんって呼ばれてもちょっと落ち着かない。
さきな ステージ上で圧をかけるときは逆に「竜人くん」って呼んでる(笑)。
──グループでの活動だとそれぞれの性格や特性で自然と役割分担ができてくるんじゃないかと思いますが、現時点ではどうですか?
竜人 どう?
さきな 私的には、お歌番長(凪)、ダンス番長(真尋)で、テンション・空気感担当(ゆな)。私はおしゃべり番長(笑)。
竜人 最近気付いたんだけど、MC属性で考えると、ゆなが仕切ってるときが一番やりやすい。
ゆな なんでー?
凪 うん。いい、いい。
さきな めっちゃわかる。真尋と凪は真面目だから、進行を任せると個が潰れちゃう感じがして。私は何も覚えられないし、フリーおしゃべり番長なので(笑)。ゆながけっこう器用にできるんだなって思う。
真尋 みんなが見ていてニコニコになっちゃうようなMCをしてくれる。
竜人 それに対して3人がそれぞれの立ち位置で話すのがバランスいいんじゃないかな。(ゆなを指して)今後もぜひ。
ゆな これから私がMC担当?
さきな MC番長。
ゆな やった! やりたかった。司会者。うれしいー。
この時代に出す意味のあるクリエイションを
──先代と変化した点でいうと音楽、サウンド面も大きいですよね。わかりやすいところでは曲名にあった「♡」が剥奪されて、電波ソング的なカオス感よりも洗練されたサウンドに変化しています。そこは新たに清 竜人25を始めるうえで最初から狙っていたんですか?
竜人 そうですね。作品の温度感は、こういう特殊なコンセプトのグループを今の時代にやるからこそ、作品の温度感としてはトレンディじゃないといけないと思っていて。わかりやすく比較すると、前回の25はコンセプトを強く反映させた楽曲だったりだとか、ライブパフォーマンスを大前提で視野に入れた楽曲構成を強く意識していたんですけど、今回はどちらかと言うとメロディがキャッチーで単純に強い曲。1つのポップスとして成立していて優れた曲というのを目指しているんですね。
──“アイドルソング”という枠組もあまり関係ない?
竜人 前回はあえてアイドル然としたクリエイションやパフォーマンスにしていましたけど、それは「“一夫多妻制”でメンバーに男性が1人いる」という特異なコンセプトでアイドルシーンに一石を投じたかったからそういう活動方針だった。今回は、もちろんアイドルとして扱っていただく一面があってもいいんですけど、アイドルという枠にとらわれず、アーティスト清 竜人25として、この時代に出す意味のあるクリエイションを作っていくという気概を持ってやっています。
──新体制最初のオリジナルソング「青春しちゃっていいじゃん」やリアレンジされた過去楽曲にサウンド面での変化は如実に表れていました。最新作「BOYFRIEND EP」には、2つ目のオリジナルソング「KARESHIいるんだって」が収められています。
ゆな めっちゃいい曲。竜人が「一番好き」と言っていて、「おっ、私も一番好きかも」と思いました。
──どのあたりが琴線に触れたんですか?
ゆな なんでだろう。(竜人を見て)なんでだと思う?
竜人 (笑)。まあキャッチーだよね。これまでリリースした「Will you marry me ?」とか「青春しちゃっていいじゃん」と比較するとちょっとアイドル感もあるし。
真尋 1回聴いたら覚えちゃうキャッチーさがある。
凪 トランペットみたいな金管の音が入っ……てるよね? 幻聴じゃないよね?
竜人 入ってるよ(笑)。
凪 新体制の曲では初めてで、それがすごく好きです。
さきな 私はミュージカルっぽい音楽が好きだから、あの、なんちゅうの?
凪 なんちゅうの(笑)。
さきな なんちゅうんかね……。
竜人 おばあちゃんみたいやな。
さきな 大きい感じ。ノリノリというよりは開放感があって、壮大な……(手を広げてゆらゆら揺れながら)こういう感じの音楽が好きなんです。「KARESHIいるんだって」はそういう感じがあって、イヤフォンで聴くのもいいけど、ライブ会場で聴くとより楽しい一体感が味わえると思います。
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リメイクする過去楽曲の選び方は