日本テレビのオーディション番組「0年0組 -アヴちゃんの教室-」から誕生した7人組“オルタナティブ歌謡舞踊集団”、龍宮城が1stフルアルバム「裏島」をリリースした。そして2025年2月22日、龍宮城は東京・日本武道館のステージに立つ。
アヴちゃん(女王蜂)のプロデュースによる独自性の高い音楽とパフォーマンスで、国内外で活性化を極めるメンズグループ、ダンス&ボーカルグループの中でもとりわけ異彩を放つ龍宮城。音楽的なジャンルは多岐にわたり、ポエトリーリーディングや演劇的要素を取り入れたステージングは複雑な余韻を残す。1stアルバム「裏島」は、そんな彼らのオルタナティブな特異性が明確に刻まれた1枚だ。
初のオリジナルアルバムを完成させ、日本武道館という大舞台を控える7人は、今現在どのような思いを抱えているのか。今年行った2つのツアーを通して感じている手応え、さらに音楽性を拡張したアルバム「裏島」での挑戦、武道館のステージに懸ける思いを聞いた。
取材・文 / 臼杵成晃撮影 / 曽我美芽
龍宮城、日本武道館と戦う
──龍宮城の日本武道館公演までおよそ4カ月となりました(取材は10月下旬に実施)。開催発表のあと、夏は全国ツアーで各地を回り、「EBiDAN THE LIVE」や「バズリズムLIVE」などの大規模イベントへの出演もありました。現時点での武道館公演への心構えとしてはいかがでしょう。自信にみなぎっていますか? それとも?
S ちょうど1stアルバムからタイトル曲の「裏島」が先行配信されたばかりですが、改めて龍宮城は曲に助けられているというか、音楽が背中を押してくれているなと感じました。もちろん僕らはリリース前から聴いていましたけど、サブスクで聴いたときに改めて、ほかのアーティストとは明らかに違う音楽性を持った、曲が強いグループなんだなって。武道館への準備が少しずつ進んでいて、普段のライブではやれない演出や、新曲のパフォーマンスなどの準備をしている中で、現時点では武道館で龍宮城の音楽を表現することに対して楽しみしかないです。
──あからさまに個性的な音楽を武器に持つ龍宮城ならではの武道館公演ができる、という自信・確信がある?
S そうですね。心構えとしては「武道館と戦う」という気持ちが強くなっていますね。
──もともと武道館に強い思い入れを持っていた人はいますか?
KEIGO 僕としては「ライブと言えば」と真っ先に浮かぶ会場でした。オーディション期間中にも、目標は「武道館でライブをすること」と宣言していたくらい。パフォーマンスの世界に入ったときから武道館のステージに立つことを目標にしていたので、それが現実になることがすごくうれしいです。
──武道館って特殊な空間ですよね。1万人近く収容できる会場ではあるんだけど、観ている側も、おそらくステージに立っている演者も「近い」と感じる距離感で。あの空間に自分たちが立っている姿はイメージできていますか?
Ray メンバー全員で先輩たちの武道館ライブを観させていただいたり、どういうステージでどういう演出にするかという話し合いを進めていく中で……開催を発表した当初よりはイメージできているし、龍宮城にしかできないライブがあの空間だからこそできる、ある意味で「日本武道館と親和性の高いグループ」なんじゃないかと思っています。
──「龍宮城 日本武道館『裏島』」という明朝体の字面からすでにしっくりきている感じがありますよね。
Ray あははは。そう思います(笑)。
──龍宮城のYouTubeチャンネルには、スタッフがメンバーに「武道館を押さえた」と報告をする場面からを追ったドキュメンタリー映像「龍宮城、武道館に至る道」がシリーズでアップされています。映像ではITARUさんが率先して思いを語っていましたが、現時点ではどういうお気持ちですか?
ITARU もちろん楽しみですが……1つ大きく異なるのは、普段のライブではステージから客席に対し正面を向いてパフォーマンスしていますが、武道館はいろんな方向から観てもらえる 空間なので、やっぱり空間に見合ったものを用意していかないといけない。僕らが表現することや曲に込めたメッセージは変わらないけど、いつもとは違った見せ方を研究しなくちゃいけないなと思っています。
ライブパフォーマンスの変化
──龍宮城は今年、春に「龍宮城 SPRING TOUR 2024 -DEEP WAVE-」、夏に「龍宮城 LIVE TOUR『ULTRA SEAFOOD』」と2つのツアーを行っています。どちらも拝見しましたが、春と夏で印象が大きく違ったんですね。「荒くなった」というと聞こえが悪いですけど、歌や振りを“うまくやる”ことよりも感情を優先しているような荒々しさ、生々しさが夏のツアーでは劇的に増しているように感じて、「この短期間で何があった?」と思ったんです。
KENT 龍宮城のライブはMCも少ないですし、舞台上での表現を完璧にやりすぎることは人間らしくないんじゃないか、というのは僕たちも考えるようになって。この音楽がもっとリアルに届くようにと考えたときに、MCでももっと思ったことを話すといいんじゃないかとか、コントのようなものを入れて少し場が和らぐ時間を作ったりとか、そういう見せ方の部分を自分たちで考えるようになって、より成長を実感できています。夏のツアーではそれが春よりもはっきりと体現できたんじゃないのかなって。
──確かに演出面での変化もありましたよね。それ以上に、パフォーマンスの部分でも「もうはみ出してもいいや」みたいな思い切りを感じたんですけど、皆さんにその実感はありません?
齋木春空 夏のツアーの前に、ダンスの強化期間があったんです。GANMIの方たちに入ってもらって。7人それぞれ踊りたい踊り方、見せ方を強化期間に学んでいって、それをライブで発揮できたのも大きかったと思います。今までは「7人でそろえる」という意識が強かったけど、「ここはそろえるけど、ここはそれぞれの個性を出したほうがいいよね」と1曲の中でも細かいところまで考えるようになりました。
──夏のツアーはセットリストもメンバーが考えたんですよね。
冨田侑暉 これまでのライブも、僕らから「どういうライブにしたいか」という思いを龍宮城の意思をブラッシュアップして作ってはいて。
KEIGO 「僕たちが龍宮城を作り上げている」という意識がより強くなったことは確実で。外部のイベントでも、ツアーとはまた違う見せ方を考えて、どうやったら初めて観る人を取り込めるかなと7人で試行錯誤していたことが、夏のツアーにも反映されていたと思います。もちろん失敗とか「ここはこうしたほうがよかったね」という反省はたくさんあって。でも、この活動が今後の僕たちにきっと生かされていくだろうという実感もありますね。もっと工夫できるところ、改善できるところは年明けのツアーや武道館で反映させていきます。
──前回のインタビュー(参照:龍宮城「DEEP WAVE」特集)でRayさんが言った「応援よりも熱狂が欲しい」という言葉はすごく印象に残りました。おそらく記事を読んだファンの方にもそれは伝わっていて、会場の空気も少し変わったなと思いつつ、「もっと自由に狂っていいのに」とも感じます(笑)。これだけヤバいパフォーマンスが目の前で起きているんだからもっとおかしくなってもいいよ……って思いません?
齋木 思いますね(笑)。
KEIGO 僕らが直接求めているわけじゃないけど、だんだん客席から飛んでくる声が大きくなってきていて。お客さんの熱量が上がってきているのはすごく感じますし、僕らもそれに応えようと、さらに枠から外れるようなエネルギーを爆発させようという気持ちになっているので、それがさっきおっしゃっていただいた「荒くなった」雰囲気として出ているのかなと思います。もっと会場全体でライブの熱狂、狂気的なまでのおかしさを作り上げていきたいですね。
ステージとは違う表情の「龍TUBE」を始めた理由
──龍宮城の存在をどう広めて、日本武道館に新たなお客さんを連れてくるか。いろんな作戦を考えているかと思いますが、YouTubeチャンネル「龍TUBE」には驚きました。ステージでのテンションと違いすぎて。
一同 ハハハハハハ!
──作り込まれた龍宮城の世界観からはみ出して、完全に素の顔を見せるような内容で。あれはどういう発想で始めたんですか?
Ray 僕からみんなに提案しました。楽屋でダラダラ話している時間とか、普段遊びに行ったりする時間も含めて、この7人の空気感が僕は大好きで。そこを見せてもいいのかなと思ったし、これがあることでステージでの作り込まれたパフォーマンスもさらに際立ってくるんじゃないかなと思ったのが動機です。「龍TUBE」での姿が素でステージ上の僕らは作り物、ということではまったくなくて。どっちも僕らだよ、というのだけはしっかり伝えられるようにしたいし、ステージ上でやることは変わらないです。
──活動を始めてからの1年くらいは、おそらく「いかにこの龍宮城という特異な世界観に溶け込めるか」に皆さん心血を注いでいたと思うんですね。今はそこから気持ち的に解き放たれた余裕が出てきたようにも見えます。もうそこまで意識しなくても龍宮城としての自分が身に付いているのかなと。
Ray ライブの感想としてよく「舞台っぽかった」「演技がよかった」と言われることが多いんですけど、僕は正直それが悔しくて。「別に演技してないんだけどな」と思ってる。「ガチなんだよ」というのを伝えるためには、おっしゃっていただいた荒さ、雑さ……この世界観に収まらずいかにブチ壊してどう新しいものを作っていけるかを、全員が意識的にか無意識にか考えるようになった結果、気持ちの余裕が出てきたところはあると思います。
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龍宮城の幅広い音楽性を伝えられるフルアルバム