「いろんな生き方があっていいんだよ」
──テレビ番組出演以外にも、SNSでご自身の考えや意見をたくさん発信されてきました。
そうですね。バラエティ以外にも、情報番組とか討論番組とか、いろんな番組への露出が増えてきてからかな。最初は自分が真面目な番組に出ても大丈夫かな、何を言えばいいんだろうと思っていたんですけど、皆さんが僕なんかの話をちゃんと聞いてくれているのが伝わってきたので、これは真剣に話そうと思って。それで自分の思いを正直に話したら「違う一面が見れたよ」とか「悩んでたけどプラスに考えられるようになったよ」って意見をいただけて、笑わせる以外にも勇気とか元気を与えることができるんだと思えて。それからは自分の意見を言うことが大好きになりました。
──その考えを今度は音楽で表現して伝えていくわけですね。
バラエティだとどうしても限界があって、その日のテーマに関するお話しかできないので。運よく自分の意見を発信できる立場になれたんだし、僕の言葉で誰かの背中を押せるなら、もっとメッセージを発信したいなって。僕のような存在がいることで、生きることが楽しくなる子もきっといるはずなので。もっとみんなが個性を出せる社会になっていいし、いろんな人を愛していいと思うんです。「いろんな生き方があっていいんだよ」ってことを自分の経験を踏まえて話したいなと思って、1年くらい前から歌詞の断片のようなものを少しずつ書き始めて。
──そうなんですね。
それと、僕はファッションのおかげで自分を表現できたので、服とかメイクにはすごく感謝してるんです。そういう自分の世界観もミュージックビデオがあれば同時に伝えられるし、昔からミュージカルが大好きだったのもあって「歌ならもっとたくさんの人に伝えられるかもしれない!」と思って、デビューに向けて少しずつ準備してきました。
ポジティブになれる方法を映画から学んだ
──りゅうちぇるさんのSNSを拝見していると、ファッションやメイクにまつわることはもちろん、映画の話もよくされていますね。特にアメリカの青春ものから影響を受けたとか。
夢の世界に連れていってくれるお話が大好きなんです! 映画が終われば一瞬で現実世界に戻されるって人もいると思うんですけど、僕の場合はリアルでもああいうキラキラした人生にならないかなと思ってメイクで表現したり、ファッションを真似してきたので。ポジティブになれる方法を映画から学んできました。
──中でも人生を変えた作品を選ぶとすると?
えーっ、いっぱいありすぎて選べないかも(笑)。テレビドラマ「glee/グリー」は、はみだし者たちの話で自分にも共通する部分があったので、学生時代からずっと勇気をもらってました。あとは、内容よりファッションとか音楽がステキな作品も大好きです。後ろで3秒ぐらいしか映らないキャストさんでさえどんなファッションか気になるし、トータル的に見ちゃいますね。一番好きな映画はアリシア・シルバーストーン主演の「クルーレス」かな。アリシア演じるシェールという、とにかくダサいのが大っ嫌いな女子高生のお話で。
──シェールの趣味は、周りのイケてない生徒をおしゃれに変身させることでしたね。
そうそう! 内容はホント薄っぺらいんですけど(笑)、ファッションと音楽がステキで。ファッションと音楽の好みって比例するみたいで、80年代、90年代の服が好きだと、自然とその時代の歌も大好きになるんです。例えば、80年代のジェイソン・ドノヴァンさんとかバナナラマみたいなイケイケな感じが好きで。
──なるほど。確かに「Hands up!! If you're Awesome」のMVはビビッドな色使いだったり、80年代後半のミュージックビデオ発展期の頃のようなムードがありますね。
僕からしたらあの当時の映画や音楽は生まれる前の作品なので、すべてが新鮮だったんです。だから僕と同世代の若い子にはその素晴らしさを知ってほしいし、お母さんお父さん世代の方には僕を見てあの頃のキラキラ感を思い出してほしいなって思います。
参加クリエイターと理想的な関係性が作れた
──デビュー曲「Hands up!! If you're Awesome」は参加されているクリエイターの方々も豪華です。作曲は水曜日のカンパネラのケンモチヒデフミさん。アートディレクターは幅広い活動を行い、ファレル・ウィリアムズ「It Girl」のミュージックビデオも手掛けたファンタジスタ歌磨呂さんです。
今回関わってくださった皆さんは初めましての方ばかりで、実はケンモチさんや歌磨呂さんのこともよく知らなかったんです。「音楽好きな人は絶対知ってる、すごい有名な方だよ!」と驚かれる方もたくさんいると思うんですけど、逆に僕は知らなくてよかったなと思っていて。“こういうことをしてきた人だから大丈夫”じゃなく、まずは会ってお話ししてみないと、フィーリングが合うかどうかは正直わからないし。やり取りをしていくうちに「そうそう、これがしたかったの!」って場面がいくつもあって、結果的に皆さんのことを人としてすごく好きになれたし、理想的な関係性が作れたなと思います。
──楽曲の方向性はもちろん、ミュージックビデオの企画、衣装、ヘアメイクに至るまで、すべてご自身でディレクションされたそうですね。
そうなんです。この1曲で終わりじゃなくてあくまでもスタートなので、気合いを入れて「僕の好きな音楽はこういう感じです」「映像はこうです」って細かくお伝えしていきました。誰にも頼まれてないのに絵コンテを描いてみたり、服の資料を集めたり。自分の中のイメージを人に伝える難しさも感じたんですけど、ケンモチさんは想像をはるかに越える素晴らしい曲を作ってくださったし、歌磨呂さんは僕のイメージをうまく形にしてくださいました。
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「直したい」とか言っちゃって、みんな大変だったかも