Ryu☆|音ゲーひと筋20年、原点と最新を詰め込んだ記念アルバム

DJとしてかけたい曲を

──これまでのRyu☆さんのオリジナルアルバムにはあまりカバーやコラボが入っていませんでしたが、今作ではその割合が大きいですよね。

Ryu☆
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この5年でちょっと考え方が変わったんですよね。自分が好きな曲をみんなに知ってもらえるし、ほかのコンポーザーの曲をリミックスをすることで新しい自分の引き出しも増えるんですよね。それにDJとしてステージに立つときにかけたい曲を、この際だから自分用に作っちゃえと思って。「IIDX RED Ending」とか「CoMAAAAAAA」はフロアをかなり意識した曲です。

──「CoMAAAAAAA」はいい意味でRyu☆さんっぽくない曲ですよね。こういうエスニック系の曲は初めてでは?

初めてですね。最近のEDMでいうところのビッグルームの流れを汲みつつ、ビーマニらしいゲーム感と、自分の持ち味であるキャッチーなメロディを組み込んだのが「CoMAAAAAAA」なんです。最初にDJでこの曲を流したときは反応があまりよくなかったんですよ。でもめげずに何度もかけているうちにアンセム化していったと言いますか、今では「Second Heaven」と同じくらい盛り上がる曲になりました。曲を現場で成長させるのも面白いなと思って。

──音ゲーのコンポーザーでありながら、DJとしての目線も持ち続けているわけですね。

どうしても「フロアで鳴らしたらどうなるか」を考えちゃいますね。アルバムの収録曲の中でいうと「Beautiful Harmony」もフロアを意識して作った曲で。ゲーム用に2分の曲を作ってからアルバム用にロングバージョンを作る普段の順序とは逆で、「Beautiful Harmony」はDJで使うことをまず考えて長い尺のものを作り始めたんです。「beatmania」への提供曲では基本的に4小節、8小節でリズムやメロディのパターンを組むことが多いんですが、「Beautiful Harmony」は16小節のパターンで組んだ曲なんですよ。ゲームだとちょっと長すぎて使えないアイデアを盛り込んだこともあってロングバージョンはすぐできたんですが、これを2分に縮めるのがけっこう大変で(笑)。先にロングを作って縮めることの難しさを痛感しました。

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裏テーマは1人「Dancemania」

──「beatmania」稼働開始20周年を記念して作られた「O/D*20」や、beatnation結成10周年ソング「crew」などが収録されているのも、今回のアルバムの1つの特徴だと思います。

ありがたいことにいろんな節目で曲を作らせていただく機会が多くて、どうせならそれらの曲も入れて、一緒にお祝いするような感じになればなと。それと実は「255」は「DanceDanceRevolution」の稼働20周年をお祝いして作った楽曲なんです。「DDR」には曲のBPMをそのまま作家名にするという伝説の方がいまして、僕もそれにあやかって「255」の作曲クレジットを255にしています。

──終盤になるにつれてBPMが徐々に上がってくるのは、例によって……。

はい(笑)。お察しの通り、これまでのアルバムと同じくコンピ盤の「Dancemania」を1人で再現する、という自分の裏テーマは変わっていないんです。ただ速くなるだけじゃなくて、ジャンルも多彩にしたかったから、新曲の「Dragon Dive」は、自分ではこれまでまだうまく消化できていなかったフューチャーベースのコード感を使った四つ打ちに挑戦していますし。moimoiが歌ってくれたボーカル曲も入っているし、CD1枚を通してかなりいろんなダンスミュージックを楽しんでもらえると思います。

音ゲー作家の強み

──アルバムの話からは逸れてしまうんですが、Ryu☆さんは昨今の音楽ゲームが増え続けている現状についてどう思っていますか?

多種多様な音楽ゲームが増えている現状はすごく面白いと思います。ゲームセンターでは各社のアーケードゲームが何機種もあるし、スマートフォンで音楽ゲームを楽しむ人もどんどん増えています。そんな中でKONAMIの音楽ゲームには強みがあると思っていて。

──それはどんな強みですか?

KONAMIの音ゲーは、オリジナル曲が主流なんですよね。音ゲーのコンポーザーが音ゲーのために書き下ろした曲を遊ぶことができる。そこは1つKONAMIの音ゲーの強みとして存在していると思います。ほかのゲームはアニソンとか、J-POPで流行したものをゲームでプレイするものが多いんですよ。それと、僕らが恵まれていることの1つは、DJとしてステージに立てることだとも思っていて。

──なるほど。

普通、作家としての活動が中心の方々ってなかなかステージに立つ機会がないんですよ。でも僕ら音ゲー作家はDJとしてステージに立つ機会があって、直接お客さんの前で音楽をかけられるんです。それに音ゲーの収録曲なのに、サントラではなくアーティスト軸でCDをリリースさせてもらえる。「beatmania」というゲームのもとに集ったみんなががんばってきたからこそ、こういう文化ができあがったんだろうなと思っています。20年も曲を書き続けてきたけど、まだまだ書いてみたい曲、攻めたいジャンルはたくさんあって。今はライブの開催が難しくなってしまいましたけど、やってみたいイベントもたくさんあるんですよね。皆さんが驚くような実験的な取り組みのアイデアをたくさん温めているので、また皆さんの前でステージに立てることを楽しみにしています。