音楽ナタリー Power Push - Ryu☆

古川未鈴対談&ソロインタビューで紐解くベスト盤

Ryu☆ ソロインタビュー

「Plan 8」は最後に持ってきたかった

──前回、アルバム「Plan 8」の特集(参照:Ryu☆「Plan 8」インタビュー)のときに、Ryu☆さんが「アルバムの裏テーマがある」とおっしゃっていました。

Ryu☆

言ってました。コンピ盤の「Dancemania」を再現する「1人Dancemania」にしたいと。

──「Ryu☆BEST -STARLiGHT-」のDISC 1を聴いたとき、今作でもこの“裏テーマ”を意識して作られていることに気付きまして。

最初にキャッチーな曲を置いて、アルバムのラストまでBPMを上げ続けていくっていう作り方は今回も変えませんでした。多分「Plan 8」のときより「Dancemania」っぽさが強くなってると思います。収録曲をノンストップにすれば、もうこれは「Dancemania」ですね(笑)。

──最後の曲は200BPM超えの「Plan 8」で終わっていますが、この曲を最後に持ってきたのはただ速いだけが理由ではありませんよね?

そうですね。この曲には自分のデビュー曲である「starmine」のメロディも入っていますし、もともと「Plan 8」という曲は高校生のときに作った曲ですから。ベスト盤には「beatmania」に曲を提供する以前の部分も含めたいと思っていたので、「Plan 8」は最後に持ってきたかったんですよね。

7枚でひと区切り

──「beatmania」のトラックメーカーとしてデビューしてからすでに15年以上経っていますが、いつ頃からベスト盤を作ろうと考えていたんでしょうか?

Ryu☆

前作の「Seventh Heaven」(2015年2月発売)を出したときに「次はベスト盤だな」とは思っていたんです。

──それはなぜですか?

実は前々から7枚アルバムを出したら区切りを付けようと思っていたんです。と言うのも、もともと3rdアルバム「Rainbow☆Rainbow」を出すまでは「3部作にしよう」と考えていて。それをやり切ったときに「Rainbowってタイトルのアルバムを作れたから、それにちなんで7枚目までアルバムを作ろう」というのを密かな目標にしていたんです。

──そして昨年、その目標が達成されたと。

そうですね。それに前々からベスト盤を出すなら2作品を同時リリースしたいと考えていたんですよ。僕は「beatmania」シリーズのトラックメーカーという一面と、それ以外にEXIT TUNESというレーベルの一員という一面を持っていますから。音ゲー中心のベスト盤と、それ以外の仕事のベスト盤を同時リリースしたいと思っていて。「MOONLiGHT」のほうはレコード会社をまたいで楽曲収録の許可をもらうわけですから、本当にいろんな方の協力があって実現したベスト盤だと思っています。

──古川さんとの対談で「STARLiGHT」のお話は伺いましたが、今回のリリースに当たってはもう1曲「MOONLiGHT」も書き下ろし曲として制作されています。

「STARLiGHT」がハイテンションかつ今までの集大成のような曲になったので、「MOONLiGHT」はメロディアスなちょっと聴かせるナンバーに仕上げたかったんです。「beatmania ⅡDX 10th style」に提供した「Narcissus At Oasis」というアートコアの楽曲に近いテイストで、音ネタなどはそんなに入れずにメロディを美しく聴かせることを意識して。「STARLiGHT」とは違った軸で自分らしさを出せた楽曲になったと思っています。

ヘビーなオーダーを形にした「ドアラのテーマ」

──ベスト盤「MOONLiGHT」には、アイドルソングのリミックスやアニソン、歌い手への提供曲など、さまざまな音源が収録されていますが、こういう音楽ゲームの提供曲以外の仕事というのは、Ryu☆さんにとってどういう位置付けなんでしょうか?

自分の中ではメインはビーマニの曲だと思ってるんですけど、音ゲーの曲ばっかり書いていると、どうしても凝り固まってきてしまうんですよ。ゲーム用に2分に収めなければいけないという制約もありますし。そういう自分の中のクセや制約を壊してくれたのが、「MOONLiGHT」の収録曲たちなんです。やっぱり新鮮な仕事が多いですし、いろんなお客さんに向けて曲を書くわけですから自然と視野が広がるんですよね。

──中でも特に思い入れの強い曲はどれでしょうか?

Ryu☆

やっぱり「ドアラのテーマ」ですね。中日ドラゴンズのマスコットキャラクターのドアラを「DJドアラ」として活動させるタイミングで、僕に「オリジナル曲を書いてほしい」という依頼が来まして。

──そもそもなぜRyu☆さんに依頼が来たんでしょうか?

名古屋ってすごくクラブが盛んな街で、昔からユーロビートとかトランスが流行ってたんです。それで「DJドアラにトランスをやらせる」っていうのは先に決まっていたらしく、トランスが書ける人を探していたみたいなんですよね。ただ、オーダーがけっこうヘビーで、「DOALAのアルファベットを1文字ずつシャウトさせてください」とか、「曲調はアントニオ猪木の登場曲『炎のファイター』みたいな感じでお願いします」とか……。

──それらのオーダーすべてに応えることは難しいのではないですか?

ものすごく困難でしたが、全部応えましたね。曲の最初が南国風のドラムのループから始まるんですけど、その部分で「炎のファイター」っぽさを表しています(笑)。ちなみに曲を作ってる途中で「ジュリアナのテイストも入れてください」とも言われまして、曲中にはそれっぽいパートも入れてるんです。中日ドラゴンズのホームゲームでは、7回裏の攻撃前のドアラが出て来るときにこの曲が流れるみたいなんです。曲を書いてから7、8年経ってますから長らく使ってもらっているのは、ありがたいですね。

──そのほかベスト盤には「炉心融解」や「ぽっぴっぽー」といったボカロ曲のリミックス音源も収録されています。Ryu☆さんとVOCALOIDの組み合わせって珍しいな、と思ったのですが。

僕自身、ボカロには疎かったんですけど「炉心融解」や「ぽっぴっぽー」を聴いたときに「あ、これはいいかも」と思いまして。特に「ぽっぴっぽー」はジャンル的はバブルガムダンスというものに当たるんですけど、僕が作った「bass 2 bass」とかに非常に近い洋楽ダンスポップ調の曲なんですよね。「ボカロの曲の中にはこういうのもあるのか」と驚きました。

ライブ情報
EXIT TUNES DANCE PARTY 2016-SOUND VOLTEX FLOOR ANTHEM & beatnation summit-

2016年3月5日(土)東京都 豊洲PIT
OPEN 14:00 / START 15:00
<出演者>
dj TAKA / DJ YOSHITAKA / Sota Fujimori / L.E.D. / kors k / 猫叉Master / Ryu☆ / DJ TOTTO / PHQUASE / RoughSketch / P*Light / かめりあ / OSTER project / Hommarju / VENUS / TAG / wac / Cody / U1-ASAMi / SUPER STAR満-MITSURU- / BlackY / Yooh / C-Show / cosMo@暴走P / 源屋 / kamome sano / lapix / siromaru / MAD CHILD / Daisuke Ohnuma / kanone / t+pazolite / 黒魔 / Team Grimoire / はるなば / Hate / Brilliance / ginkiha / Ayatsugu_Otowa / nora2r / Shiron / ke-ji / Yu_Asahina / 上村香月 / かぼちゃ / SOPHY / みゅい / ぁゅ / みかん汁 / Kuroa* / SOUND HOLIC / ビートまりお / ARM(IOSYS) / Mayumi Morinaga / Prim / Dai. / Yossy / Starving Trancer / Xceon / and more
Laser Show Designer:MIU
VJ:MotionCombat

Ryu☆(リュウ)
Ryu☆

男性ダンストラッククリエイター。2000年、コナミの音楽ゲーム「beatmania IIDX 3rd style」の公募に送った楽曲が同ゲームに採用され、以来「beatmania」シリーズの主力トラックメーカーとして活躍。2009年にRyu☆名義の1stアルバム「starmine」を発表して以来、ゲームのサントラを多数手がけている。またその一方でトラックメーカーStarving Trancerとプロデューサーユニット、Another Infinityを結成。「beatmania」シリーズに楽曲を提供するほか、女性ボーカリストDaisy×Daisyの歌うテレビアニメ「FAIRY TAIL」のオープニングテーマ「永久のキズナ」を制作し、Another Infinity feat. Mayumi Morinaga名義でアニメ「ゆゆ式」エンディングテーマ「Affection」を発表している。2016年2月、ベストアルバムとして「Ryu☆BEST -STARLiGHT-」「Ryu☆BEST -MOONLiGHT-」の2作品を同時リリースした。