音楽ナタリー PowerPush - りょーくん
歌い手人生を振り返る ベストアルバム全曲解説
01. リセット
[Music & Lyrics:164]
──ここからはベストアルバムの収録曲について1曲ずつお話を伺えればと思います。1曲目は164さんが作詞作曲をした「リセット」ですが、ボーカルだけでなくオケの音も1stアルバム「Re:you」のときとは一新されたものになってますね。
ひろしさん(164の本名)のアルバム「THIS IS VOCAROCK」で使われたオケになっています。「THIS IS VOCAROCK」は全部生音で録音されていて、ボーカルトラックだけがVOCALOIDだったんです。今回僕が歌って、完全にすべてが生音になりました。
──「リセット」はライブでりょーくんがよく歌う曲の1つですね。
この曲は本当にライブで何度も歌った曲なんです。なので今回生音のバンドサウンドに歌を乗せるのも違和感なくできました。「Re:you」の音源と聴き比べてもらったら、僕の成長がわかると思います。
02. BE
[Music & Lyrics:164]
──「BE」は3rdアルバム「Re:road」に収録された、164さんからりょーくんへの書き下ろし曲ですね。この曲を最初に聴いたときの印象はどうでした?
まず歌い出しを聴いただけで「これは僕にしか書かないメロディラインだな」ってわかったんですよ。ボーカリストとしての僕のことを考えて作ってくれたっていうのが、本当にうれしくて。
──曲を渡される前に何か打ち合わせはあったんでしょうか?
まったくなかったですね(笑)。ひろしさんに関してはもう何も言わずとも「こういうのほしかった」って曲が飛んでくるんです。
──ベスト盤の頭から2曲続けて164さんの曲が並びました。164さんとりょーくんはライブで共演する機会も多いですし、ただの作家と歌い手という関係を越えているように見えます。
そうですね。プライベートで会う回数が一番多いアーティストかもしれないですし、ステージでも何度も共演してるので“盟友”みたいな感じだと思います。お客さんからしたらおなじみの2人って思われてるかもしれないですね(笑)。ひろしさんとステージに立ったあと、1人でステージに立つと寂しいんですよ。それくらい一緒にいて安心する人です。
03. Blackjack
[Music & Lyrics:ゆちゃP]
──「Blackjack」はりょーくんが2010年に“歌ってみた”動画として投稿した曲ですね。
僕が投稿した動画の中で最初に評価された曲が「Blackjack」なんです。僕がいろんな人に曲を聴いてもらえる、動画を観てもらえるきっかけになった曲ですね。
──数あるボカロ曲のうち、この曲を歌ってみようと思った理由はなんだったんですか?
この曲との出会いは本当に偶然で。当時の僕は音楽で食べているわけでなく、普通に働いていて「明日仕事だし早く寝ないと」と思いながらニコニコ動画を観ていたら、新着動画のところにゆちゃPが作った「Blackjack」が出てきたんです。それで何気なく聴いてみたらすぐにこの曲が好きになって。そのまま寝るのをあきらめて録りました(笑)。
──寝るのをあきらめて、レコーディングまでしたんですね。
公開直後だからVOCALOIDの声が乗った動画しかアップロードされてなかったんですけど、とりあえず歌だけはその日のうちに録って。自分でミックスしてオケだけの音源の公開を待ってたんです。だからオケが公開されてすぐボーカルを乗せて投稿して。「Blackjack」の“歌ってみた”動画の中で投稿順が2番目くらいだと思います。
──投稿した動画の反響はどうでしたか?
グングン再生数が伸びましたね。いわゆる「ジェバンニ」(※ネット上で使われるスラング。「DEATH NOTE」に登場するキャラクターの名前で、彼の劇中での活躍にちなんで、極端に短い制作期間で動画を投稿する制作者をこう呼ぶ)と呼ばれることをしたのはこれが初めてだったんですけど、こんなに評価されるとは思ってなくて。ビックリしたのを覚えています。
04. Re:alize
[Music & Lyrics:りょーくん]
──4曲目「Re:alize」は、2ndアルバムに表題曲として収録されたりょーくんの書き下ろし曲です。1stアルバムはボーカルに専念していた作品でしたが、作曲は2ndの制作時が初めてだったんですか?
りょーくんとして曲を書いたのはこれが初めてですけど、以前バンドを組んでいたときは曲を作ってたんです。だからこれがまったくの初体験ってわけではないですね。
──バンドを組んでいた背景があって、“歌ってみた”で「Blackjack」のようなロックナンバーが評価されていたのに、ピアノやストリングスのイントロから始まる穏やかな曲調の書き下ろし曲を発表したのは少し意外な気がしました。
ニコニコでは「Blackjack」以降、曲調が穏やかで優しい感じの曲がけっこう評価されていったんですよ。なので“ニコニコの視聴者さんたちが感じているりょーくんらしさ”を優先して、こういう曲を書いたんです。
──この曲の詞には「届けにいくよ 君のもとへ」「この想いが今 届いた」といった言葉が並んでいます。ネット上で観てもらうだけではなくて、ライブでステージに立ってお客さんの前で歌うことを強く意識した楽曲なんだと感じました。
確かこの詩は、去年の初ワンマンライブの開催が決定してから書いたものなんです。だから「実際に会いに行って気持ちを伝えたい」っていう思いが自然と詞になったんだと思います。
05. ワールド・ランプシェード
[Music & Lyrics:buzzG]
──「ワールド・ランプシェード」は、りょーくんが初めてボカロPに書き下ろしてもらった曲ですね。
そうなんです。この曲をいただく前に「かくれんぼ」っていうbuzzGさんの曲を“歌ってみた”動画で公開していて。当時僕はネットに疎くて、“ネチケット”を全然理解せずに無謀にもbuzzGさんのmixiに「本当にいい曲だったので歌いました。聴いてほしいです」みたいなメッセージを送ったんですよ。特に返事はなかったんですけど、後からbuzzGさんのTwitterを見たら僕の動画を紹介してくれてたんです。それがすごくうれして。
──その後、どういう経緯で初の書き下ろし曲をお願いすることになったんですか?
1stアルバムを出すことが決定していたときに同人CDの即売会の会場でbuzzGさんに挨拶する機会があって。で、「よろしければ書き下ろしをお願いしたいです」っていう話を直接したんです。そうしたら「ぜひやりたい」って言っていただきまして。
──本人が面と向かって楽曲提供をお願いするのは珍しい気がしますが。
僕らってネット上で活動することが多いんですけど、歌や音だけを聴いて何かやり取りするより、やっぱり直接会ってお願いしたかったっていうのがあったんです。
──書き下ろしてもらった楽曲を受け取ったときはどういう気持ちでしたか?
自分の曲だっていうのが本当にうれしかったです。しかもこの曲を聴いたほかの歌い手からとてもよい評価をいただいて。歌い手からはよく「難しい曲だ」って言われるんですけど、僕としてはそんなこと全然ないんです。歌いやすくて、ライブでやってるとすごく気持ちよくなれる曲なんです。
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- ベストアルバム「Re:set -The Best of Ryo-kun-」2015年3月4日発売 / EXIT TUNES
- 初回限定盤 [CD+DVD] 2808円 / QWCE-00442 / Amazon.co.jp
- 通常盤 [CD] 2268円 / QWCE-00443 / Amazon.co.jp
CD収録曲
- リセット
[Music & Lyrics:164] - BE
[Music & Lyrics:164] - Blackjack
[Music & Lyrics:ゆちゃP] - Re:alize
[Music & Lyrics:りょーくん] - ワールド・ランプシェード
[Music & Lyrics:buzzG] - 風待ちハローワールド
[Music:add9(ヘリP)、Lyrics:かなき] - 青
[Music & Lyrics:164] - 心拍数♯0822
[Music & Lyrics:蝶々P] - 永遠花火
[Music & Lyrics:謝謝P] - シリョクケンサ
[Music & Lyrics:40mP] - ネトゲ廃人シュプレヒコール(Under A Rock Arrange / suzumu)
[Music & Lyrics:さつきがてんこもり、Arranged:スズム] - No.69
[Music & Lyrics:スズム] - しわ
[Music & Lyrics:buzzG] - 夏の半券
[Music & Lyrics:みきとP] - S・K・Y
[Music & Lyrics:ライブP] - Re:set
[Music & Lyrics:りょーくん] - 僕は初音ミクとキスをした(※初回限定盤のみ)
[Music & Lyrics:みきとP] - 天ノ弱(※通常盤のみ)
[Music & Lyrics:164]
初回限定盤DVD収録内容
- Re:set
[Music & Lyrics:りょーくん] - ワールド・ランプシェード
[Music & Lyrics:buzzG] - Re:alize
[Music & Lyrics:りょーくん] - BE
[Music & Lyrics:164] - Documentary of Re:set(オフショット映像)
りょーくん
2010年に“歌ってみた”動画をニコニコ動画に投稿し、歌い手としての活動をスタートさせる。同年11月に投稿した「Blackjack」の“歌ってみた”動画が殿堂入りを果たし、2013年には1stアルバム「Re:you」をリリース。2014年には2枚のアルバムをリリースしたほかソロライブツアーを開催し、東名阪の3会場で約6000人を動員。「ETA」などボカロPや歌い手たちが多数出演するライブイベントにも多数出演している。2015年3月にベストアルバム「Re:set -The Best of Ryo-kun-」をリリース。同年4月開催のライブツアー「LAST LIVE TOUR 2015 -Re:set-」をもって歌い手を卒業することを発表している。