部屋の中に1人でいる自分のことを正直に書いた「生活」
──今日のお話の中で一貫していますけど、音楽の中では正直でありたい、という気持ちが強いんですね。
松本 そうですね、見栄は張りたくないし、嘘はつきたくないです。
──例えば本作にも収録されていて、「青春日記」(今年3月リリースの1stミニアルバム)にも収録されていた「ノーマル」などは、直接的に心情が吐露されているような曲ですよね。でも、この「neo neo」に収録された新曲たちは、もっと物語的な描かれ方をしている曲が多くて。リュックと添い寝ごはんの“本音の伝え方”というのは、この短い期間でかなり形が変わったんだろうなと思うんです。
松本 それはそうかもしれないです。「ノーマル」も新曲も、どっちもリアルだけど、どこか違うというか。「ノーマル」は、まだ軽音楽部にいた頃に作った曲で、「変わりたい」とか、そんなことを考えていた時期に作ったんですよね。あの頃はなんというか……余裕がなかったというか。
宮澤 目の前のことに精一杯だった感覚だよね。でも、今はもっと柔らかくなった。
松本 そうだね。あと、生活感が出た感じがするかな。
──曲に刻まれる生活感は強くなりましたか?
松本 だと思います。
──まさに、8月に「生活」がシングルとして配信リリースされましたけど、この曲はどのように生まれた曲だったんですか?
松本 この曲は、2月くらいに曲自体はほぼ完成はしていたんですけど、そのときの歌詞が全然納得いかなくて。なので、自粛期間中に家で書き直したんです。やっぱり、この時期だからこそ書きたかった歌詞があったんですよね。さっきの寂しさの話につながりますけど、人間の愛がすごく欲しくなった時期で。部屋の中に1人でいる自分のことを正直に書こうと思って、「生活」の歌詞を書きました。
──この曲が出たとき、「生活」というタイトルにハッとさせられたんです。なぜこのタイトルにしたんですか?
松本 この歌詞の世界が“生活”だったから。これは自分の生活の曲だし、「生活」という2文字がかわいくて温かいな、とも思ったし。このタイトル以外は考えられなかったです。
──今の「生活」の話にも顕著ですが、この「neo neo」には、日々に宿る幸福感を詩的に美しく描いている曲たちが並んでいると思います。それは裏を返すと、根底に悲しみや不安があるからこそ、幸福な表現を求めるんじゃないか、という気もするんですよね。
松本 なんだか、占い師みたいになってきましたね(笑)。なんというか……口癖が「どうしよう」になってきたんですよね、最近。溜めこんでしまうんです。
堂免・宮澤 確かに。
宮澤 ユウくんは「考え事しているな」っていうときは、わかりやすいもんね。話しかけても無視されることもあるし(笑)。
松本 考えすぎちゃうんだよなあ……だから、音楽に開放感を求めているのかもしれないです。
──松本さんが根底に抱えているであろう感覚って、すごく普遍的なことだと思うし、今の時代を生きる人たちに自然と共感されていくものだとも思うんです。少し大きな質問ですが、「時代」というものは、曲を作るときに意識されたりしますか?
松本 今の時代というものを考えて作ったのが、「生活」「あたらしい朝」「ほたるのうた」あたりの曲です。この曲たちは、どれも部屋に1人でいる自分が主軸になっている曲で。特に「ほたるのうた」は、世界のことを歌にするなんて今までやったことなかったけど、初めてそういう歌詞を書きました。狭いところから広いところに行くような歌詞が書きたかったんですよね。
「ほたるのうた」は本当に大事にしていかなきゃいけない曲
──具体的に、「ほたるのうた」はどのように生まれた曲だったんですか?
松本 いろんな物事に「ほたる」を当てはめているような曲なんです。それは自分もそうだし、バンドだってそうだし。日々なくなっていくもの、失っていくものを「ほたる」に例えている感覚があります。
──自分自身やバンドも、失われていくものである?
松本 この曲を書いていた頃は、予定されていたライブもなくなってしまったし、この時期にできていたはずのことが失われてしまったのは、かなりショックだったんですよね。「ほたるのうた」は、そういうことについて書きました。些細な思い出も、小さなことでも、放っておくと忘れてしまうから。そういうことは忘れないようにしようと思ったし。
──「ほたるのうた」は本当に特別な曲だと思うんですけど、堂免さんと宮澤さんはこの曲をどのように受け止めましたか?
堂免 この曲は、本当に大事にしていかなきゃいけない曲だなって、できあがってすぐ感じましたね。
宮澤 聴いていると温かくなる曲というか。「ひとりじゃないよ」って、自分の支えにもなるし、この曲がいろんな人の支えになってくれればいいなと思います。
──「灯る灯る心のほたる 神様は灯さない」という一節は、どのようなところから生まれてきたんですか?
松本 この部分は、説明するのがすごく難しいんですけど……自分のことは自分でやらなきゃいけない、みたいなことを考えていたんですよね。なくなっていくもの、失っていくものを神様は灯さないし、自分のやりたいことや、これからやるべきことに対しては、自分で動いていかなきゃいけない……そういうことを考えていたというか。やっぱり、ここはうまく説明するのは難しいです。すごく考えて書いた歌詞なので、いろんな気持ちが頭の中で交錯してしまうところでもあって。
──うん、わかりました。松本さんの歌詞は、1ライン1ラインに本当に神経を研ぎ澄ませて書いていることがわかるので、簡略化して説明するのは難しいだろうと思います。ちなみになんですが、今の松本さんには「聴いている人にメッセージを伝えたい」という気持ちはどれくらいありますか?
松本 伝えたいことがあるというよりは、聴いた人なりに解釈してほしいです。曲にひとり歩きしてほしいというか。「僕はこう思っている」というのはあるけど、それを強要したくはないし、「僕らの曲は、あなたの曲にしてください」という感じです。
──わかりました。この先、リュックと添い寝ごはんはどうなっていくのか、すごく楽しみです。これから先も簡単に満たされることなく、常に理想を追いかけていくバンドなんじゃないか、という気がするんですよね。
松本 そういう話、この間みんなでしたよね?
宮澤 そうだね。「これが目標です」って決めてしまうと、それを達成したときに先が見えなくなっちゃうから、目標は日々、作っていきたいねって話しました。
松本 漠然とした目標に向かっていくほうが、ずっと、僕らの日常を表せるんじゃないかと思うんですよね。
ツアー情報
- リュックと添い寝ごはん 1st albumリリースツアー「neo neo」
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- 2020年12月15日(火)愛知県 APOLLO BASE
- 2020年12月17日(木)大阪府 Shangri-La
- 2020年12月23日(水)東京都 WWW
- 東京公演は生配信を実施!
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配信日時:2020年12月23日(水)19:00~
視聴チケット:1500円
※12月29日(火)21:00まで販売(12月21日(月)以降はクレジットカード支払い限定)