リュックと添い寝ごはん|3人の素直な思いを、より大きな世界へ

メンバー全員が10代のスリーピースロックバンド・リュックと添い寝ごはんが、12月9日リリースの1stフルアルバム「neo neo」でメジャーデビューを果たした。

リュックと添い寝ごはんは2017年に高校の軽音楽部で結成された、松本ユウ(Vo, G)、堂免英敬(B)、宮澤あかり(Dr)の3人によるバンド。みずみずしくさわやかな歌詞とサウンドで話題を集め、2019年には音楽配信サイト「Eggs」で年間1位を獲得、さらに「RO JACK for ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2019」で優勝して「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2019」に出演するなど、現役高校生バンドながら破竹の勢いでの活動を繰り広げてきた。

今年3月にメンバー全員が高校を卒業し新たな一歩を踏み出すと同時に、新型コロナウイルスの感染拡大により世界の状況も大きく変化していったが、希望を見失わず、大きな成長を遂げてメジャーデビュー作を完成させたリュックと添い寝ごはん。3人に「neo neo」制作時の思い、そしてこれから進む新たな道への意気込みを語ってもらった。

取材・文 / 天野史彬 撮影 / 曽我美芽

お客さんとの心の距離を近付けられるようなライブを

──2017年に軽音楽部で結成されてから3年、こうして最初のフルアルバム「neo neo」が完成しましたが、結成当時と今とでは、皆さんの音楽への向き合い方は変わっていると思いますか?

松本ユウ(Vo, G) 変わったと思います。最初はあくまでも軽音楽部の活動としてバンドを始めただけで、大きな目標があったわけではなくて。

宮澤あかり(Dr) 大会に出る、くらいだったよね。

松本 そうそう。でも今は、目標がたくさんできました。そのために、より音楽を深く知りたいと思うようになったし。

──具体的に、今はどんな目標がありますか?

松本 本当にたくさんあります。大きいのはライブですね。

堂免英敬(B) お客さんとの心の距離を近付けられるようなライブができたらいいなと思うようになりました。お客さんと一体になれるようなライブがしたいし、そういうバンドになりたいよねっていう話を、前にメンバーでしたこともあって。

宮澤 メジャーデビューが決まった頃に、そんな話をしたよね……ガストで(笑)。

──いいですね(笑)。

松本 僕らは普段からスタジオでもふざけ合っていますけど、そういう自分たちの空気感みたいなものを、音楽でも出せたらいいなと思うんですよね。だから曲も、縦揺れよりも横揺れがいいなっていう感じになってきて。

宮澤 聴く曲が変わってきたもんね。

松本 そうだね。昭和の歌謡曲とか、最近だとnever young beachやYogee New Waves、あとは、星野源さんだったり。拳を突き上げてブワーッと盛り上がるぜ!という感じよりは、曲に合わせて自然とダンスをしてしまうような感じがいいんですよね。そういう、ゆっくりとしたライブができるようになりたいなって思うんです。

──そういう空気感が、リュックと添い寝ごはんの3人の素の空間に近いものなんですね。

松本 そうですね、力まない感じ。そのほうが、自分たちはしっくりくるなと思います。ホント、僕らは普段のほほんとしているんですよ。

宮澤 「のほほん」って……(笑)。

松本 「ホント中身のない話しかしていないよね」って、スタッフの人にも言われたことがあるくらい(笑)。でも、それが普通に楽しくて。

宮澤 笑いのツボも合っているし、居心地はいいよね。

──自分たちの素の空気感を音楽に落とし込みたい。そう思うくらい、リュックと添い寝ごはんは3人でいるときが幸せなんだ、ということですよね。

宮澤 面と向かって言うのは恥ずかしい(笑)……でも、幸せですね。

音楽は自分にとって必要と改めて気付いた

──このたびメジャーデビューすることになりましたが改めて、自分たちの人生にとって音楽とはどのようなものですか?

松本 難しい質問ですけど、このコロナの自粛期間で、より音楽や芸術のことを考えるようにはなりました。ライブを生で見る機会も少なくなったし、そこで気付くことがあったというか。僕は、音楽がない人生は考えられないような気もするんです。音楽がなくなったら生きがいも感じないし、自粛期間は「なんのために生きているんだろう?」とか考えちゃったくらいで。本当に、音楽は自分にとって必要なものなんですよね。それは、今まで当たり前すぎて考えたこともなかったけど、改めて気付きました。

──宮澤さんはどうですか?

宮澤 私も、音楽はずっと聴いてきたし、やってきたことだから、それが急になくなっちゃったら、何も残らなくなるような感じがします。ニートになるんじゃないかっていうくらい(笑)。あと、前に観た何かの映画で「音楽は人から奪えない」というセリフがあったんですよね。もし楽器がなくなっても、音楽って脳内で勝手に再生されちゃうもので。すごくいい言葉だなと思ったのを、今のユウくんの話を聞きながら思い出しました……って、映画のセリフをそのまま言っただけなんですけど(笑)。

──でも、すごくいい言葉ですよね。

宮澤 はい。大事なことだなって思います。

──堂免さんはどうですか?

堂免 どんどんと自分が思い描くものが音楽で作れるようになってきたと思うんですけど、それを聴いてくれた人たちからも、自分がいいと思うポイントを「いい」と言ってもらえることがあって。それが僕はうれしいです。

──それは、音楽を生み出す人だからこそ得ることができる喜びですよね、きっと。

松本 僕らの音楽で作り出す空間に誰かがいることとか、その空間に流れる時間とか、それがすごく幸せだなと思うんですよね。だから音楽は大切だし、音楽が生み出す時間を大切にしたいって思うんですよね。