リアクション ザ ブッタ「酸いも甘いも、好きも嫌いも」特集|コロナ禍を経て新境地に到達 (2/2)

宮田‘レフティ’リョウとのコライトで生まれる挑戦

──収録曲のうち「クッキーアンドクリーム」のブラスを取り入れたサウンドには驚きました。ブッタの楽曲でブラスの音が入ったのはこれが初めてでは?

佐々木 そうですね。すごく挑戦的な楽曲になったと思います。夏の対バンツアーで「クッキーアンドクリーム」を披露したとき、お客さんに「かわいい曲ですね」と言ってもらえたのがうれしかったし、対バン相手からも褒められる機会が多くて。あまり同業者に曲を褒められた経験がなかったから、手応えを感じています。

──「クッキーアンドクリーム」は佐々木さんとレフティさんがコライトで作曲したそうですね。

佐々木 レフティさんとコライトで初めて作った曲は「Loopy」(2022年11月発売のミニアルバム「Scarlight」の収録曲)で、そのときは僕がスラップをしながら歌うことをアイデンティティにしていたから、そこをフィーチャーした曲を一緒に作ったんです。今回はテーマありきで作ろうという話になって「片思いの曲を作ろう」という話から始まりました。

──「クッキーアンドクリーム」というタイトルは片思いを表している?

佐々木 はい。クッキーとクリームってもともとまったく別のものだから合わせることはできるけど、微妙に溶け合わないというか、完全には混ざり合わないですよね。そういう部分を片思いに見立てられると気付いてからは早く作業が進みましたね。4時間くらいで曲ができて、そのあとに歌詞を付けて。レフティさんのスタジオで僕がベースを持って適当な英語のメロディを歌いながら作っていきました。

リアクション ザ ブッタ

リアクション ザ ブッタ

──木田さんや大野さんはどの段階で曲作りに参加したんですか?

木田 メインは佐々木とレフティさんですが、僕らもレフティさんのスタジオには一緒にいて、フレーズを模索するところでは随時参加しています。

大野 レフティさんはギターもベースも弾けるから、とにかくすべての工程が早くてすさまじいですね。1日に2曲作れちゃったこともあるし。

佐々木 「クッキーアンドクリーム」はいろいろなアイデアが出た結果、ブラスのサウンドが入って華やかになりましたが、同じく佐々木とレフティさんのコライトで作った「Wet & Dry」ではベースを生で弾いていなかったり、ドラムも打ち込みになっていたり、バンドとして挑戦したことのなかったサウンドが作れたのも大きいですね。ずっとチャーリー・プースのような空気感の曲をバンドでやってみたいと思っていて、僕ら3人だけだったらそれは形にできなかっただろうから。

──今の話に出てきたように、「クッキーアンドクリーム」も「Wet & Dry」もスリーピースバンドらしさを感じさせるサウンドではないですよね。ブッタはライブにサポートメンバーを入れることもないので、制作する音源と演奏のギャップを感じるようなことはないのでしょうか?

木田 10代の頃は「ライブで3人で演奏できる曲を作ったほうがカッコいいんじゃないか」みたいに考えていたかもしれませんが、今は3人以外の音が鳴ることに対して抵抗感はなくなりました。

佐々木 カッコいい音であればアレンジは自由に考えたいタイプなのかな。ライブのときの再現性をあまり難しく考えてなくて、数ある音の中から一番カッコいいフレーズを木田が弾いて、宏二朗がリズムを刻んで、僕がベースボーカルで歌えば間違いなくブッタのライブになりますから。

木田 今まで考えたことがなかったけど、佐々木がベースボーカルなのが大きいかもしれないですね。

──どういうことですか?

木田 ギターボーカルだとどうしてもコード主体のギターを弾くことになっちゃうじゃないですか。でもブッタはベースボーカルだから、スリーピースだけどギターがしっかりメロディに専念できるので。

木田健太郎(G, Cho)

木田健太郎(G, Cho)

──なるほど。とはいえ、佐々木さんのベースもシンプルなものではないですよね。

佐々木 はい(笑)。特に「一目惚れかき消して」はこれまでの曲の中で一番難しいかもしれない。ウォーキングベースを弾きながら歌わなきゃいけないから。

木田 「Curtain Call」(2022年11月配信リリースのミニアルバム「Scarlight」収録曲)でウォーキングベースをやっといてよかったよね。

佐々木 本当にそう。でもあのときより難しいんだよな。

木田 「Curtain Call」のウォーキングベースは僕が作ったものだったんですよ。だからギタリストの音階で作られたちょっと簡単なウォーキングベース。でも今回はベーシストでもあるレフティさんが作る本物のウォーキングベースだからかなり難しくなってる。

佐々木 レコーディングでは演奏に専念できたけど、ライブでは歌にも集中しなきゃいけないから、もっと練習しないとなあ。

人生観を表すアルバムタイトルを

──「酸いも甘いも、好きも嫌いも」というアルバムタイトルはどういった経緯で決まったんですか?

佐々木 収録する8曲を何度も聴くうちに、曲に登場する主人公が「酸いも甘いもどちらも体験しているな」と気付いて。だからといって「酸いも甘いも」という言葉だけでは足りない気がして、そこに「好きも嫌いも」という言葉を加えてみました。恋愛のことを歌っている曲が多いので、それを表す言葉も欲しかったし。

──先ほどは人の弱さを歌うことについて伺いましたが、楽曲によっては前向きな決意を歌う「Voyager」のようなポジティブな曲もありますし、確かにさまざまな感情をまとめたアルバムですね。

佐々木 個性のある曲たちなのでアルバムタイトルでうまく表現できるか不安でしたが、「酸いも甘いも、好きも嫌いも」という言葉が見つかったときにすごくスッキリしたんですよね。

──唇をハートに見立てたアルバムのアートワークもおしゃれですよね。

佐々木 シンプルだけどおしゃれなアートワークにしてみました。このハート、ちょっと割れかけているようにも見えて、そういう部分も含めて僕ららしいなと感じています。

リアクション ザ ブッタ「酸いも甘いも、好きも嫌いも」配信ジャケット

リアクション ザ ブッタ「酸いも甘いも、好きも嫌いも」配信ジャケット

節目となるツアーファイナルに向けて

──今回の取材は、2024年3月に開催が予定されているブッタのツアー最終公演の会場である渋谷CLUB QUATTROで行わせていただきました。渋谷CLUB QUATTROはバンドにとって憧れの場所だそうで。

佐々木 この会場で先輩や後輩がワンマンをやる姿をたくさん見てきたので、自分たちもあそこに立って、ワンマンをやりたいとずっと思っていました。バンドをやるうえで誰しもが必ず立ちたい場所の1つだと思いますから。

木田 勢いがあって売れていくバンドは、クアトロでワンマンをやるという道を通っているイメージがあって。クアトロでワンマンをやって、そこからどんどん勢いを付けていく人たちをたくさん見てきたし、逆に失速してしまうバンドがいるのも知っている。だからバンドマンにとって節目になるような会場だと思っています。その節目の場所に僕らが立つ番が来たことはうれしい反面、クアトロでのパフォーマンス次第で今後僕らがどんな道を歩むのかが決まってしまうような気がしていて、緊張感もありますね。

大野 仲間のバンドマンのライブをたくさんクアトロで観てきて、これまでは見送るだけというか、応援するばっかりだったんですよね。それがずっと悔しかったから、自分がついにクアトロのステージに立てるのはうれしい。木田さんの言う通り、勢いを落としてしまうバンドも見てきたけど、僕はそんなに心配していなくて、前に進んでいくイメージが湧いています。ライブをするのが楽しみで仕方ないですね。

──もちろん、今回のアルバムの収録曲もこの会場で演奏することを想定して作っていたわけですよね。

佐々木 そうですね。「クアトロだと狭いね」と思ってもらえるくらい、もっと大きなところで演奏している姿が想像できるような曲を作ったつもりです。来てくれた皆さんにバンドの未来を感じてもらえるようなライブになったらいいな。

リアクション ザ ブッタ

リアクション ザ ブッタ

ツアー情報

リアクション ザ ブッタ Tour 2023 A/W

  • 2023年11月3日(金・祝)千葉県 千葉LOOK
  • 2023年11月10日(金)宮城県 enn 2nd
  • 2023年11月17日(金)広島県 広島セカンド・クラッチ
  • 2023年11月19日(日)大阪府 LIVE SQUARE 2nd LINE
  • 2023年11月24日(金)北海道 PLANT
  • 2023年12月1日(金)福岡県 LIVEHOUSE OP's
  • 2023年12月3日(日)香川県 高松TOONICE
  • 2023年12月8日(金)神奈川県 横浜BAYSIS
  • 2023年12月15日(金)愛知県 ell.FITS ALL
  • 2023年12月17日(日)埼玉県 西川口Hearts

リアクション ザ ブッタ ONEMAN TOUR 2024

  • 2024年2月3日(土)大阪府 Shangri-La
  • 2024年2月4日(日)愛知県 ell.FITS ALL
  • 2024年3月17日(日)東京都 渋谷CLUB QUATTRO

プロフィール

リアクション ザ ブッタ

佐々木直人(B, Vo)、木田健太郎(G, Cho)、大野宏二朗(Dr)からなるスリーピースバンド。2009年に行われたバンド選手権「TEENS ROCK IN HITACHINAKA 2009」で最優秀賞を受賞し、同年夏に開催されたロックフェス「ROCK IN JAPAN FES.2009」への出演を果たす。2014年にはバンドオーディション「RO69 JACK」で優勝した。2017年には「SANUKI ROCK COLOSSEUM」「HAPPY JACK 2017」「NUMBER SHOT 2017」「ap bank fes 2017」などさまざまなライブイベントに出場し、その知名度を高めていく。2022年にはTBSで放送されたドラマ「村井の恋」のエンディングテーマとして「虹を呼ぶ」を書き下ろした。2023年11月にアルバム「酸いも甘いも、好きも嫌いも」を配信リリース。同年11月から12月にかけてツアー「リアクション ザ ブッタ Tour 2023 A/W」を実施中。2024年2月から3月にかけては、過去最大規模のワンマンツアーの開催が控えている。