Royal Scandal|3つの個性が集結した待望の1stアルバム

luz、奏音69、RAHWIAの3人によるクリエイターユニットRoyal Scandalが、12月18日に1stアルバム「Q&A -Queen and Alice-」をリリースした。

2014年の結成以降、童話をモチーフに音楽と映像によるシリーズ作品を展開してきたロイスキャ。初のフルアルバムには3人が制作を共にしてきた「クイーンオブハート」「REVOLVER」「ビーストインザビューティ」といった既存の曲に書き下ろしの新曲を加えた計13曲が収録される。結成から5年の歳月を経てようやくリリースされる1stアルバムの完成を記念して、音楽ナタリーではメンバー3人へユニットの結成秘話や、アルバムの制作背景をじっくり聞いた。

取材 / 倉嶌孝彦 文 / 下原研二

「チェリーハント」は“エピソード0”

──皆さんはそれぞれが個人として活動するクリエイターでもありますよね。なぜRoyal Scandalを結成することになったのでしょうか?

luz 僕らの最初の出会いはEXIT TUNESからリリースされたコンピレーションアルバム「EXIT TUNES PRESENTS STAGES」(2014年3月発売)で、僕が「チェリーハント」をカバーしたとき。当時よく聴いていた「チェリーハント」をカバーするにあたって、スタッフさんから「好きな絵師さんにオファーして、オリジナルのミュージックビデオを作ろう」と言ってもらってオファーしたのがRAHWIAさんなんです。

奏音69 RAHWIAが作った「チェリーハント」のMVを観たときに、強烈な衝撃を受けたんです。もともと私はsupercellのようなクリエイターユニットに憧れて動画の投稿を始めたんですけど、当時は一緒にやれる人が周りにいなくて、ユニットを組みたいという思いも薄れていたんです。でも「チェリーハント」のMVを観て、「私がやりたかったのはこういうクリエイターと一緒に作品を作ることなんだ」と初期衝動がよみがえってきた。それくらい衝撃的なMVでした。RAHWIAが描くキャラクターが魅力的だったのはもちろん、luzの歌声にも惹かれるものがあって、すぐに「この3人で活動をしたい」と思ったんです。

RAHWIA 私にとっても「チェリーハント」は“エピソード0”のような感覚ですね。当時はまさかこんなに長く続くプロジェクトになると思っていなかったので、ある程度好きにキャラクターを描いていたんですよね。だから実は今続いているRoyal Scandalの世界観と微妙に違うところもあるんです。今のRoyal Scandalは中世のファンタジーのような世界観を描いていますが、「チェリーハント」の頃はどちらかというとロサンゼルスのカジノをイメージしたビジュアルでした。ちょっと近代的というか。マイクも出てきますし。

奏音69 そうそう。最近のMVでは描かれていないけど、「チェリーハント」のMVにだけ近代のマイクが描かれているんです(笑)。

──その後、3人が作品を一緒に作るのは「クイーンオブハート」(2014年10月に発売されたluzの1stソロアルバム「tWoluz」の収録曲)です。

Royal Scandal「クイーンオブハート」MVに使用されているイラスト。

luz 初めてのソロアルバムを作るにあたって、奏音69さんにはオリジナルの曲を書き下ろしてもらいたくて。それに「チェリーハント」のMVで僕も手応えを感じていたから、MVを作るなら絶対にRAHWIAさんにお願いしたかったんです。そうしたら奏音69さんが「どういうふうに活動していけるかわからないけど、この3人で何かやれたらいいよね」と言ってくれて、Royal Scandalとしての活動の原型が見えてきたんですよね。

奏音69 それで私が「このプロジェクトに名前を付けよう」と提案したんです。それを2人が快諾してくれてRoyal Scandalというグループが誕生しました。私としては長年の夢が叶って本当にうれしかったですね。

舞台でスイッチが入った

──Royal Scandalとしてライブや音源制作が活発になってきたのはここ1、2年ですが、グループの活動が充実化するにあたって何かきっかけはありましたか?

luz 昨年「LIVE THEATER『Royal Scandal~秘恋の歌姫[ディーヴァ]~』」という、僕らの楽曲を原案とした舞台のお話をいただいてから、Royal Scandalの活動が活発化した感覚があります。それまでは各自の活動が忙しくてユニットとして動けていなかったんですけど、舞台化が決まったことで僕らのスイッチが入ったんです。3人でいろいろ考えることが増えて、舞台が終わってからはRoyal Scandalとしてのツアーの開催やアルバム制作が見えてきた感じですね。

──舞台の経験はRoyal Scandalの活動にどういう影響を?

luz 舞台での表現は3人共やったことがなかったので、とてもいい経験になりました。パフォーマンスの見せ方は、今のRoyal Scandalのライブにもつながっていると思います。僕のソロライブがガンガン盛り上げて一体感を高めていくイメージだとしたら、Royal Scandalのライブは作り込まれた世界観でお客さんを魅了する感じなんですよ。

──ライブの魅せ方はluzさんのソロライブともluzさんがオーガナイザーを務める「XYZ TOUR」とも違って、独特な世界観がありますよね。

luz Royal Scandalとしてライブをするにあたって僕が実現したかったのは「奏音69さんと一緒にパフォーマンスをする」ということだったんです。最初、奏音69さんは「私は基本的に歌わないし、歌うとしても1曲とかでいい」とおっしゃっていたんですけど、僕はユニット感を強く出すためにも奏音69さんと一緒に歌いたくて。

Royal Scandal「ビタースウィート」MVに使用されているイラスト。

奏音69 このユニットでの自分の立ち位置は裏方だと思っていたので、自分から前に出ていくイメージがなかったんですよね。ただluzにそう言ってもらって、ステージに立ってみたら……。

luz 試しに「ビタースウィート」のラップパートをライブで歌ってもらったときに、お客さんの反応がすごくよくて。それ以降は、Royal Scandalのライブでは僕と奏音69さんが2人でパフォーマンスをする形が定着したんです。

奏音69 ライブとなると、どうしても私とluzがメインに見えちゃうんですよね。私としてはRoyal Scandalはあくまで3人のユニットだということは絶対に伝えたいと思っていたので、ツアーではRAHWIAの私物のぬいぐるみをステージに置いて、ちゃんと3人いることを表現しているんです。

luz グッズの監修だったり、キービジュアルとなるポスターのイラストを描いてもらったり、RAHWIAさんにはライブが開催される前の段階でがんばってもらっていますからね。