音楽ナタリー Power Push - ROLAND Stream Station UA-4FXII meets テンテンコ
宅録にライブに生配信に 手軽で本格的なオーディオインターフェース
テンコの機材選び
──テンコさんは宅録で音楽制作をするとき、どのようなセットで作ってるんですか?
今日持ってきたROLANDのサンプラーSP-404SXとTEENAGE ENGINEERINGのシンセOP-1、ほかにはROLANDのシンセTB-03とか、JMT SYNTHのちっちゃい手作りのシンセを使ってます。DAWソフトはGarageBandです。
──機材を買うときはどんな基準で?
まずは使いやすさですね。難しいものは難しいものでちょっと試してみたいなという気持ちも湧くけど、値段が高いものだとやっぱり不安なので、まずは触って確かめます。音のよさももちろん大事ですけど、ライブでの使いやすさ、演奏中に瞬時に対応できるかどうかを重要視します。
──ライブでどう使えるか、自分の演奏スタイルにハマるかどうかを考えて。
そうですね。自分だったらどう使えるか。
──衝動買いするのではなく、念入りに下調べをするタイプですか?
はい。ノリで買ったことはないです。衝動買いに憧れはあるんですけどね(笑)。お店で実機を見るとついテンションが上がって衝動買いしたくなるけど、その気持ちをグッと抑えて、あとで調べてから買います。
──下調べをしている時間も楽しい?
めちゃめちゃ楽しいです(笑)。YouTubeとかに上がってる解説の動画を観たり。
──外国のメーカーの方がひたすら英語で解説しているような。
そうそうそう! 外国人がめっちゃテンション高く紹介してるやつを観るのが好きなんです(笑)。デモ動画を観て「自分だったらライブでこんなふうに使えるな」って想像を膨らませて。周りの人にオススメしてもらった機材を調べることもありますし、あとは自分の好きなアーティストが使っている機材を調べたり。
直感と勉強
──曲はいつもどういう流れで作ってるんですか?
いつもだいたい夜中に作ってるんですけど、まずはGarageBandを開いて……私は打ち込みのピアノロールは使わずに、オーディオデータだけを重ねてます。
──曲作りは独学で、ソロになったときにいきなり始めたんですよね。
はい。
──最初に使い始めた機材は?
このSP-404SXです。いろんな人が使っているのを観ていいなと思っていたんですけど、特にMC MANGOという人がこれ1台を使ってライブをしているのを観て、すごくカッコいいなって。そこからいろんな動画を観て調べているうちに、これなら私にも使えそうだなと思ったんです。数値を打ち込んだりするのは難しそうだけど、SP-404SXならもっと直感的にやれそうな気がして。SP-404SXにOP-1とかで作った音を入れてループさせて、それをGarageBandに流し込んでからいろいろ重ねていきます。
──歌メロを浮かべてから肉付けするのではなく、SP-404SXで作ったループから曲のイメージを膨らませていく?
そうですね。ビートを作ってから、どういう上音を重ねようかなあと考えながら、OP-1とかJMT SYNTHを鳴らして……独学だからずっとよくわからないまま作ってたんですけど、機材を同期させるということを最近ようやく覚えたんです。2、3年やってきてようやく(笑)。TB-03を買って「なんかテンポがズレるなあ」と思って調べてみたら、SP-404SXとも同期できたんですよ。機材についてもっと勉強したほうがいいのかなと思いつつ、それでいいのかなあって……。
──独学ならではのハプニング的な音作りから、本格的な打ち込みにシフトしていいのかという葛藤が?
はい。OP-1とTB-03を同期させたいなと思って調べてみたら、やってる人がいっぱいいて。持ってる機材は全部むちゃくちゃ使い込んでるんですけど、どの機材も持ってる機能の半分も使えてないと思うんですよ。100%使えるようになったら表現の幅も広がるかもしれないけど、偶然の面白さみたいなものは減っちゃうかもしれない。難しいですね。
もっと怒られるようなことをやったほうがいい
──12月14日に発売される新作ミニアルバム「工業製品」は∈Y∋(BOREDOMS)さん、Illicit Tsuboiさん、七尾旅人さん、LOGIC SYSTEMといったそうそうたるアーティストがアレンジや作曲で参加しています。全部自分でやるという選択肢もあったと思うのですが。
私は自分で打ち込みしてノイズものっぽい曲を作るのも大好きだし、歌を歌うのも大好きだし、どれか1つを選べないので、なんでもやっていこうと思ってるんです。打ち込みだと1人の世界に没頭しちゃうけど、歌ものだと「このアーティスト面白いな」「この人と一緒にやってみたいな」と思うことがいっぱいあったので、今回は歌ものでやりたいことを実現させてみようかなと。私を通して、私1人が思い描くものとどこまで違うものができあがるか、それが見てみたかったというのもあります。
──テンコさん自身が好きなアーティストに声をかけたんだと思うんですけど、1990年生まれの女の子による人選とは思えないんですよね(笑)。
なんなんでしょうね。自分がカッコいいと思うものを突き詰めていったら、ここに行き着いちゃったんです。
──オフィシャルサイトにある「90年代からの“インディー霊”を全て背負っている」という1文がすごくよくわかるんですけど、テンコさんの資質もあってか、ポップに消化されているなと思いました。Illicit Tsuboiさんアレンジの「放課後シンパシー」はニューウェイブ、テクノポップ的な趣もあって。
「放課後シンパシー」はSigue Sigue Sputnikっぽい感じを出したくて、マネしてみました。どんな曲でもポップな作品になるようにいつも意識しています。
──これからメジャーシーンでどんなことをやっていこうと思っていますか?
私からはあまりメジャー感は出てこないと思いますけど(笑)、きっとレーベルも私にメジャーっぽいものを求めて呼んだんじゃないだろうなって思うんです。これまで2年間やってきたものは、手作業だし手探りだし、そのときできるものを常に探してやってきたんです。だから構成もちゃんとしてないし、原始的なものばかりやってたのにメジャーに呼んでくれたということは、まあそういうことなんだろうなって。自分でも「これがやりたいんだ」という気持ちがブレちゃいけないなと思っています。「工業製品」を作って見えてきたものもちょっとあるので、次はもっと怒られるようなことをやったほうがいいんじゃないかなって思いますね(笑)。UA-4FXIIを使えばこれまで以上に表現の幅が広がると思うので、いろいろチャレンジしてみます。
- 「ROLAND Stream Station UA-4FXII」2016年12月15日発売 / オープンプライス
- ROLAND Stream Station UA-4FXII
主な仕様
- オーディオ録音再生チャンネル数
- サンプリング周波数:44.1、48、96、192kHz
- 録音:2チャンネル
- 再生:2チャンネル
- サンプリング周波数
- AD / DAコンバーター:48kHz
- 出力インピーダンス
- LINE OUT L、R端子:660Ω
- PHONES / HEADSET端子:20Ω
- コントローラー
- ADVANCED EFFECTボタン
- エフェクトつまみ×4
- SELECTボタン
- ON AIRボタン
- LOOP-BACKボタン
- MIC / GUITARつまみ
- LINE INつまみ
- OUTPUTつまみ
- 接続端子
- MIC端子:XLRタイプ(バランス、ファンタム電源DC 48V、6mA Max.)
- MIC / GUITAR端子:標準タイプ(ハイインピーダンスに対応)
- LINE IN端子:ステレオミニタイプ
- LINE OUT L、R端子:RCAピンタイプ
- PHONES / HEADSET端子:4極ミニタイプ(マイク付きイヤフォン、プラグインパワーに対応)
- USB端子:MICRO USBタイプB
- インターフェース
- Hi-Speed USB
- 電源
- USB端子から取得
- 消費電流
- 400mA
- 付属品
- 取扱説明書、USBケーブル、保証書、ローランド ユーザー登録カード
- 外形寸法・質量(本体のみ)
- 幅 146mm / 奥行き 110mm / 高さ 42mm / 質量240g
収録曲
- くるま
[作詞:テンテンコ / 作曲:D.N.A.INSTRUMENTAL / 編曲:∈Y∋(BOREDOMS)] - 放課後シンパシー
[作詞:テンテンコ / 作曲:D.N.A.INSTRUMENTAL / 編曲:Illicit Tsuboi] - 次郎
[作詞:テンテンコ、JINTANA / 作・編曲:JINTANA] - 星の電車
[作詞:テンテンコ / 作・編曲:LOGIC SYSTEM(Hideki Matsutake & Jun Irie)] - くるま~助手席 school~
[作詞:テンテンコ / 作曲:D.N.A.INSTRUMENTAL / REMIX:のっぽのグーニー] - Good bye, Good girl.
[作詞:テンテンコ / 作・編曲:Papico] - 流氷のこども
[作詞:テンテンコ / 作曲:七尾旅人 / 編曲:エズミ・モリ]
テンテンコ
1990年8月27日生まれ、北海道出身。身長142cm。2013年にBiSに加入し、2014年のグループ解散とともにフリーランスとして活動を始める。2016年にTOY'S FACTORY / MIYA TERRACEとマネージメント契約。オーバーグランドとアンダーグランドを自由に行き来し、コメンテーターからバラエティのひな壇、ポップスからインダストリアル、朝から真夜中まで型にはまらない活動を行っている。2016年8月にファーストデジタルシングル「放課後シンパシー」をリリース。12月にソロとしては初のミニアルバム「工業製品」をリリースした。