チャイナな音を入れまくった「チャイナアドバイス」
──相対性理論「チャイナアドバイス」のカバーにも笑い声を入れたりしていますね。
はい。めっちゃ遊んで楽しく作りました。だから「めっちゃサントラっぽい!」と思って、できたときから気に入ってたんですよ。もともと相対性理論さんは好きだったんです。上京する前ぐらいに映画の主題歌で知って、普段も聴いてて。で、カバー曲をやるときに、みんな何を歌ってほしいんやろう?と思って、インスタでリクエストを募ったんですよ。そしたら「チャイナアドバイス」がきて、「いいね」と思って速攻でやりました。リクエストがなかったらカバーしてなかったかも。
──好きだったけど、カバーしようとは思っていなかった?
だっていいんやもん、本家が(笑)。カバーする必要ないと思っとった。でもしてみたらすごい楽しかったし、あのアレンジができて、やる気につながったというか。やっぱり人に言われるのが好きなんやなと思いました。
──オリジナルはバンドサウンドだから、まったく違うのが面白いです。
最近チャイナ系にハマってるんです。自粛中にずっと「らんま1/2」を観ていて、チャイナ系マジかわいい、らんまと結婚したいと思って、YouTubeで知らん人がカンフーしよる動画とか観てました(笑)。「61Filter」でもチャイナ系は4、5曲ぐらいやりましたね。「フライディ・チャイナタウン」とか「らんま」の主題歌「じゃじゃ馬にさせないで」とか。チャイナ系の女の子を描くのも好きだし。それで「チャイナアドバイス」のリクエストが来たときに、相対性理論も好きやし、この歌も好きやし、チャイナも好きやし、ぴったりやと思って。アレンジするときはチャイナな音を入れまくりました。
──曲の序盤に銅鑼の音が入っていますよね。
アジア系の民族楽器の音色が好きなんですよ。ゴダイゴさんの「モンキー・マジック」とか、MONKEY MAJIKさんの「Around The World」とかもすっごい好きやし。自分もチャイナっぽい曲作りたいな。
──ジャケットのイラストも自分で描いたんですよね。
はい。「チャイナアドバイス」のジャケットは3日前ぐらいに描いたんですよ。急きょ配信が決まって「ジャケットもう1枚必要なんだけど」と言われて一晩で描きました。
男の荒っぽい要素が欲しかった
──ようやく「少女B*」の話になるんですが、カバープロジェクトの経験はこの曲にも生きていますか?
いや、生きてないです(笑)。
──中森明菜さんの「少女A」もカバーしているから、てっきりアンサーソングかと。
作ったのは「61Filter」をやるより前なんですよ。ちょうど完成したころに自粛期間に入っちゃって、最初に言ったようにMVの制作を中断したんです。最初は自分の中で、こういう(「少女B*」のジャケットを指さして)金髪のやんちゃな女の子が遊園地で暴れまくって、家族連れとかにアタックするみたいなイメージがあったんですけど(笑)。これは無理やなと思って。でも自粛中にTikTokでイラストをいっぱい見てて、めっちゃカッコいい人を見つけたんです。JARRYさんという人で、1個だけ上げてた動画を観て「めっちゃ好き!」「この人とMV作りたい」と思って「好きです。アニメーション作ってください」とDMしたんですよ。そしたら引き受けてくれました。
──「少女B*」は制作のすべての過程をロイ-RöE-さんが仕切る“Atelier RöE”プロジェクトの第1弾だそうですが、JARRYさんに依頼したのもプロデューサーとしての仕事だったんですね。
今回は依頼とか連絡とかも全部自分でやりました。今まではスタッフさんと打ち合わせしていく中で意見を言って、細かいやり取りなどはお願いしていたことが多かったんですけど。アレンジャーのThe Anticipation Illicit Tsuboiさんも、自分で「この人がいい」と思って、直接メールしてお願いしました。作品に対してこだわりの強そうな人と一緒に作りたいと思ってて、2人ともそのタイプやったから、メールするときすごい緊張したんですよ。「誰がお前なんかと仕事するか!」みたいな返事がきたらどうしようと思って。でも2人ともすっごい優しくて、ギャップに惚れました(笑)。
──ロイ-RöE-さんが自らメールも書いたんですよね。資料も添付して。
資料は自分の公式サイトとYouTubeのURLを送りました。「ここを見てください」って。自分が典型的な女だから、女の視点でしか世界を見れてないんですよ。だけん、男の荒っぽい要素が欲しくて、そこを担ってもらったというか。お二人ともそのイメージにぴったりやなと思いました。例えば性的なイメージ1つ取っても、女視点のエロと男視点のエロは全然違うんですよね。そういうところがすごく面白かったです。
──実際に会いましたか?
Tsuboiさんとはレコーディングでお会いしていっぱい話して、めっちゃ楽しかったです。「デモからもうできてるじゃん!」と言ってもらえて、憧れの人にそんなこと言われて超うれしかったです。JARRYさんとは最初にZoomで打ち合わせをして、その後やりとりするようになったんですけど、今まで気付かんかっただけで、家でもできることいっぱいあるんやなと思いました。Zoomとか最初マジでわけわからんで、「どうやってつなげる?」みたいな感じやったけど、最近はもう手慣れたもんです(笑)。
──MVはまだ完成していないんですよね(取材は9月上旬に実施)。
はい。JARRYさんにはアニメーションだけお願いして、その素材を私が組み合わせて作っていて、もうすぐできそうです。めっちゃいいですよ。
思い付いたことを全部入れた
──楽曲の話に戻りますが、Tsuboiさんとのコンビネーションは僕もハマっているなと思いました。特にドラムがバッチリ。
そう! そこがよくてお願いしたんですよ。重たい、ちょっと荒ぶったドラムがTsuboiさんのアレンジやなと思ってて、「いつも通りやってください」とお願いしました。
──Tsuboiさんと一緒にやったのはちょっと意外でしたが、最初にインタビューしたときにもともとラップが好きだったって言っていましたよね。
それもあるし、この曲はちょっとオールドスクールなアレンジにしたくて、いろんな人の曲を聴いたんです。それでやっぱりTsuboiさんがいいなと思って。キエるマキュウとか、ちょっと遊び心がある感じがすごくいいなと思ったんです。今までドレスとかスーツみたいなイメージの曲が多かったから、今回は“裸の曲”にしたくて。だから「ありえんてぃー」とか意味わからん言葉も入ってるし(笑)。思い付いたことを全部入れました。
──それでアレンジにもサウンドにも荒々しさを欲したわけですね。
GEISHA GIRLSの「Kick & Loud」がすごく好きで、ああいうイントロにしたかったんです。でもやっぱり新しいものにはしたかったから、リスペクトはしながらも、自分だったらここはこうするとか、そういうふうに考えて作っていきました。
──“裸感”は伝わりましたよ。言葉遣いが……。
悪いんです(笑)。
──ははは(笑)。悪いとは思いませんけど、奔放だなと思いました。
普段の自分っぽいんですよね。インタビューのときみたいにしっかり話すときもあるし、「もうやだぁ♡」みたいにぶりっ子しちゃうときもあるし。どっちも自分だから、どっちも見られていいなと思って。
──そういうモードになったことには何か理由があるんですか?
今まで出してきた曲がかわいかったりとか美しかったりとか、そういう系統だったから、次はスッピンやなと思ったんです。あとライブをするうえで明るい曲が欲しかったというのもありますね。今回は「闇から出てきたけど重荷は全部捨ててきたぜ」みたいな。そっち系の曲が書きたくて、こんなんになりました。何やってもいいやろ、みたいな感じで、言葉選びも今回はなんも考えずにやりました。
──「AKINAがAなら わたしは少女B」というサビが痛快です。
パッと浮かんだんですよ。最初メロディが浮かんで、ベッドに横たわりながら「いい歌詞ないかなー」と考えてたら「AKINAがAならーわたしは少女B、これいい!」と思い付いて、そこからすぐできたんですよね。
──そこから膨らませていったんですね。僕は最初に言った通り、これまでで一番好きです。
よかったー。けっこう周りもそう言ってくれるんで、作ってよかったって思います。今まで遊びまくった方向性の曲は出してなかったから、ギャップが際立ったのかもしれないですね。
──歌い方も開放感があって。
大声で歌ったから腹筋が痛かったです。だってTsuboiさんがノせてくれるんですもん。「いいね! もう1回歌う?」とか言って(笑)。「デモテイクのボーカルでも全然いい」って言ってくれたし。
──Tsuboiさんはロイ-RöE-さんのデモをもとに、さらに強化してくれたような感じ?
そうです。ドラムを強化してくれたりとか、ブラスを生に差し替えてくれたりとか。よりよくしてくれるという感じで入ってくれましたね。
──デモも聴いてみたいですね。
ありますよ(スマホから流す)。今のやつよりオールドスクールな感じなんですよ。
──ある意味、よりヒップホップじゃないですか。
そうなんです。Tsuboiさんには「ポップス寄りにしてください」とお願いしました。
──なるほど。そのためには両方知っている彼がよかったと。
そうなんです。デモの段階だとヒップホップに寄りすぎてたから、オールドスクールっぽいけど、ちゃんと今のポップスにしたかったんです。「チャイナアドバイス」は全部家で録ったまんまですしね。ちょっとアレンジのクオリティも上がったかな、TikTokとかしよったら。わからんけど。
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