ロイ-RöE-が9月30日に配信シングル「少女B* / チャイナアドバイス」をリリースした。
自身のアーティスト名にちなみ、61曲の既存楽曲をカバーして毎日1曲ずつTikTokで発表するプロジェクト「61Filter(ロイフィルター)」を7月から8月にかけて行ったロイ-RöE-。楽曲のアレンジに加えてイラストと動画の制作も自ら行い、相対性理論「チャイナアドバイス」のカバーはTikTok内で4万回以上使用されるなど話題を呼んだ。もう一方の配信シングル収録曲「少女B*」は、セルフプロデュースプロジェクト“Atelier RöE”の第1弾として制作されたオリジナル曲。アレンジャーのThe Anticipation Illicit Tsuboi、イラストクリエイターのJARRYにロイ-RöE-自らオファーをかけ、やりとりを重ねて作品を作り上げた。
音楽ナタリーではロイ-RöE-にインタビューを実施。彼女に「61Filter」や配信シングルの制作エピソードについて話してもらった。
取材・文 / 高岡洋詞 撮影 / 四十物義輝
音楽も絵も表現できるTikTok
──いきなりですが、「少女B* / チャイナアドバイス」に収録されているオリジナル曲「少女B*」はすごくいいですね。これまで発表されている楽曲の中で一番好きです。
ホントですか? うれぴー。
──ははは(笑)。詳しくは追ってお話しするとして、既存楽曲のカバープロジェクト「61Filter」の話から始めたいんですが、これはどういうきっかけで始めたものなんですか?
曲はずっと作っていましたけど、コロナ禍でレコーディングが難しくなったり、撮りたいミュージックビデオが撮れなかったりして、活動が制限されるのがすごくイヤで。「部屋にこもってるだけじゃなくて、ちゃんと生きてますよ」と伝えるためにも何か発信はしたかったんです。でも日常を発信しようにもプライベート地味だし(笑)。自分ができることといったらアレンジや歌、絵だから、それが全部表現できることを……と考えて、ちょうど去年始めたTikTokに慣れてきていたし、影響を受けた曲をいっぱいカバーしてTikTokにポストしていこうと思いついたんです。
──いろいろあるプラットフォームからTikTokを選んだ理由は?
まず尺が1分とかでちょうどよくて、いろんな年齢層がいるコミュニティ内でみんなで盛り上がれる感じがいいなと思って、それでいて拡散力もあるし。あと、自分が発信したいことは1個だけじゃなくて、音楽と絵と……みたいにいくつかあったから、それを全部合わせても違和感ないのがTikTokだったんですよね。
──TikTokをやっていない僕にとっては、15秒の間にダンスするとか、面白動画みたいなイメージが強いですが、いろいろなことをやっている人がいるんですね。
私も最初そう思っていたんですけど、実際に見てみたら、けっこうアート界隈がにぎわっていて。本格的に4Dでイラストを発表していたり、有名なダンサーさんが踊っていたりもするんです。私は最初はひたすら絵を描いて投稿していました。顔を出すことに少し抵抗があって。ただ、最初のほうはiPhoneで描いていたんですけど、あまりにつらすぎて(笑)。iPadを買って、それから本格的に絵を描き出しました。
61曲カバーして学んだこと
──「61Filter」の一環としてアニメ「うる星やつら」のオープニングテーマ「ラムのラブソング」もカバーされていました。このアニメーションも自分で作ったんですか?
はい。iPhoneを使って指で描いたんですよ。目が痛いし肩も痛いし、死ぬかと思った(笑)。でもiPhoneだったらどこでも描けるんですよね。トイレでも描けるし、駅のホームでも描けるし。これは1週間ぐらいで完成させました。
──速い!
毎日、常に描いてましたから。でも台本とか決めきれないから「次はこうしよう」とか描きながら展開を決めていって、最後は「インパクトあるオチがいいけ、殺そう」みたいな感じで(笑)。
──いいですよ、あれ。クオリティ高いし、かわいいし。
よかった。かわいらしいけどちょっと狂気的な感じな感じのある映像にしたかったんですよね。目が笑ってないみたいな(笑)。そんな感じを出したくて、ちょっとがんばりました。
──そこから毎日TikTokにカバー曲を投稿したんですよね。名前にちなんで61曲!
だいぶしんどかったです。7月から企画を始めたんですけど、6月からずっと作っていて「アレンジできた!」と思ったら「動画作らなきゃ」みたいな感じで、あんま寝れんかったし。自分で選んだ好きな曲だけだからやりきれました。ただ流行っているからという理由で曲を選んでたら絶対続かんかったと思います。
──それだけ苦労されたわけだから、学んだものや得たものもあったでしょう。
全部自分でリアレンジしたから、同じ曲を何回も聴いたし、「こういう音ってこうやって出すんや」と知ったり、坂本九さんとかの昔のアナログな音を聴いたり、そういうのがすごく楽しかったですね。普段そこまでは聴かんけど、よく聴いてみたらこんなカッコいいコーラス入っとんや、みたいな。すごく勉強になりました。
カカロットを常に探している
──8月にはTikTokで発表した曲の中から厳選して、5曲入り音源「61Filter」を配信リリースしました。それくらい反響があったということですよね。
2月に「ラムのラブソング」のカバーをアップしたら、ガーッと再生数が伸びたんです。それがあったから「61Filter」もやってみようと思ったんですけど、好きなのを選んだら意外と普段から自分は古い曲ばっかり聴いてるんだと気付きました。私的には「全部有名やろ」ぐらいに思ってたんですけど、知らない子も多くて、ジェネレーションギャップを感じました(笑)。
──自分が生まれるよりも前の曲をどうやって知ったんですか?
サブスクが多いです。私、音楽は全部見た目から入るんですよ。だいたいジャケットが好きだと思ったら曲も好きな系統なことが多いので(笑)。なのでまずジャケットで掘っていきますね。そしたら下に「これもおすすめ」みたいに出てくるじゃないですか。そこからジャケットがいいのを選んでどんどん聴いていきます。あとはYouTubeですね。YouTubeもサムネで選びます。そうやって聴く曲を選んでいたら、周りの人とズレることもあって「この曲が好き」みたいな話がなかなかできないんですよ。今回はそれも伝えられたのがよかったですね。
──なるほど。リアレンジをする際にこだわったのはどんなところですか?
全部サントラを意識してやりました。自分がよくサントラ聴くし、教科書みたいな感じだから。「雨」(オリジナル:ペトロールズ)だったら雨の音を入れようとか、「私の世界」(オリジナル:井上鑑)は元は子供の歌だからリコーダーを拙く吹いてみようとか、ミュージカル調に作るのが好きで。自分のオリジナル曲もそうやけど、楽器を楽器としてというより、おもちゃみたいな感じで入れています。サントラは変な音がいっぱい入ってるから楽しいんですよね。
──そういえばサウンドロゴやCMソングが好きだと言っていましたね。
広告っぽいのが好きなんですよ。サントラやCMソングは作品や商品があってのものじゃないですか。対象をいかに引き立たせるかというところに愛が感じられる音楽が好きなんです。商売人とアーティストの両方が全部出ているのがカッコいいなと。だからそういった意味でも菅野よう子さんが大好きなんです。
──タイアップなどなんらかの縛りがあったほうがやりやすいとも言っていましたが、それも関係ありそうですね。
あると思います。曲を作るときも「こういうの作ってみたら?」とか言ってもらったほうがいいんですよね。そしたら「作ってやるよ!」みたいになるから(笑)。挑戦状を叩きつけられるのが好きなんです。
──勝ちたい?
そう! 別に勝負じゃないのに、敵が欲しくなるんですよ。
──敵がいると燃える。「ドラゴンボール」の精神ですね。
ベジータ魂、受け継いでますから。カカロットを常に探してます(笑)。
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チャイナな音を入れまくった「チャイナアドバイス」