ナタリー PowerPush - ROCK'A'TRENCH
5人の良さを最大限に詰め込んだ 2ndアルバム「Bohemia」
何度プレイしても同じ演奏にならないのがバンドの面白さ
──アルバムのオープニングナンバー「Are Ya Ready」にも、現在のROCK'A'TRENCHのバンド感がダイレクトに出ていて。
山森 勢いがあって、しかもオトナっぽいクールな感じもある曲にしたかったんですよね。実際にライブで演奏したときも、すごく評判が良くて。
オータケ うん。シンプルな曲ほど、ライブでやると派手になったりするし。
山森 アレンジを進めている段階で、「ライブを考えると、このアイデアはやめたほうがいいね」ってこともあるんですよ。再現性を求めるというか、さっきも言ったとおり、今回はなるべく5人だけのアンサンブルでやりたかったので。
オータケ 自分でデモを作るときはまず、3ピースバンドをイメージするんですよ。できるだけシンプルに構築しておいて、その上で5人で演奏する意味を考えていくというか。いつもね、ケーキを思い描くんです。メロディと歌がスポンジで、そこにいろんな味付けを加えていく感じ。たまに「ちょっとフルーツを盛りすぎたかな」ってこともあったり(笑)。
──(笑)。洋楽テイストのサウンドに和風の歌が乗っている「春風」も印象的でした。
オータケ 山森君がデモを持ってきたときに、「こういうサビ頭の曲、好きでしょ?」って言われて。洋楽でいうとGREEN DAY、日本でいうとPENPALSみたいな。
山森 シンプルなエイトビートなんだけど、ちょっとハネてて、しかもパワーがある。こういうリズムを叩かせると、オータケはホントにカッコいいので。歌詞に関しては、かなり日本っぽさを意識しました。そういう取り合わせが面白そうだなって。
──「Dream Spider」に関してはどうですか? 抑制の効いたビートが特徴的だと思うんですが。
オータケ 最初はレニー・クラヴィッツのイメージというか、黒人アーティストがノリノリでファンキーなロックをやったら、みたいな感じだったんです。そのストーリーは持ったまま、今のROCK'A'TRENCHらしくやってみたら、自然とクールな手触りになっていって。
──なるほど。レゲエをベースにした「Yeah Yeah Yeah」も重要な曲ですよね。ROCK'A'TRENCHのルーツミュージックがはっきり見えてくる。
山森 そうですね。これ、最後のほうに作った曲なんですよ。横揺れというか、緩めの曲が欲しいなって。
オータケ しかもこの曲、何度プレイしても全然飽きないんですよね。ライブで演奏するたびに表情が変わるし、絶対、同じにはならない。人力でやってるから当然かもしれないけど、それがバンドの面白さなんですよね。
どの曲も独りよがりなところはないと思う
──恋の始まりを描いた「am I am I」もいいですね。こういう淡いラブソングも、今まではあまりなかったんじゃないですか?
山森 そうかもしれないですね。この曲で歌ってるのはもう、中高生くらいの淡い恋心ですよね(笑)。「アマイアマイ恋の予感です」という歌詞からできたんですけど、30歳を過ぎてから“あの頃”のことを振り返ってみるのもいいんじゃないかって思って。バンドでやってみたら、爽快でストレートな曲になりましたね。ちなみに転調を繰り返すところは、ユニコーン先輩へのオマージュです。すごく好きなので。
オータケ 僕は通ってなかったんですけどね、ユニコーン。むしろ活動を再開した後から聴き始めて。
──ROCK'A'TRENCHとの共通点もあるかもしれないですね。メンバー個々のキャラが立ってて、それが組み合わさっていくっていう。この曲はポップスとしても非常に優れていると思いますが、そのあたりも意識してました?
オータケ それはもう、全部の曲で意識してると思います。J-POP、J-ROCKの枠の中で、どれだけ面白いことができるか?っていう。だから、どの曲も独りよがりなところはないと思うんですよね。人に聞かせたいっていう意思がちゃんとあるし、背中を押したいっていうメッセージ性もあって。
──確かに。もうひとつ、アルバムの最後に収録されている「君へ」の「素敵なことだけ描いてみて」というフレーズは、今の社会にとって大切な意味を含んでいると思います。震災後、「何を歌うべきか」ということは考えましたか?
山森 一瞬は考えました。でも、元々僕らは音楽を通してポジティブな表現をやってきたわけだし、この先も同じことを続けていくしかないなって。
オータケ この曲は、山森君の芸風の濃い部分が出てる曲だと思うんですよね。山森君の書く歌詞って、ドキュメンタリーっぽいところがあるんですよ。例えば映画を見たとして、そこで感じたことを歌詞にしていくのが山森君で、僕はその映像の中に入り込んで書くタイプじゃないかなって。
2ndは「B」で始まるタイトルにしたかった
──このアルバムを作り上げたことで、きっと「このバンドだったら、なんでもできる」という手応えを得たと思うのですが……。
オータケ いや、プログレはちょっと無理かも。
山森 そうだね(笑)。
──(笑)。アルバムをリリースしたあとのビジョンって、どんな感じなんですか?
オータケ サウンドやアレンジに関しては、かなり狙ったものが作れるようになったと思うんです。デモよりも確実にいいものになるっていう手応えもあるし。だから、大事なのは曲そのものですよね。どれだけ表情豊かな曲を作っていけるかっていう……。根本的なことなんですけどね。
山森 ライブのことも考えながら制作したアルバムだから、(収録曲を)全曲演奏するライブを早くやってみたいですね。ツアー(「ROCK'A'TRENCH Steady Rock vol.7 ~ボヘミアニズム~」)に入ってからになると思いますけど。
オータケ 楽しみですね。曲がさらにシンプルになっていくのかなっていう気もするし。
──ライブで演奏していくことによって、楽曲のポテンシャルもさらに引き出せるでしょうね。では最後に「Bohemia」というタイトルについて教えてもらえますか?
山森 1stアルバムが「A」で始まるタイトルだったから、2ndは「B」で始まるタイトルにしたかったんです。で、すぐに「Bohemia」を思いついたんですけど、意味を調べてみたら「自由」とか「縛られない」っていう意味があったから、これだなって思って。エスニックな感じと都会的な雰囲気が両方あって、まるでこの言葉をテーマにしてアルバムを制作したみたいにピッタリだったんですよね。
──じゃあ、次のアルバムは「C」で始まる……?
山森 恐らく(笑)。ベースの真は、「CARP」にしたいって言ってますけどね。
オータケ あいつは(広島)カープのファンですからね(笑)。
CD収録曲
- Are Ya Ready
- 光射す方へ
- everybody clap
- 日々のぬくもりだけで
- 春風
- Dreamer Spider
- Yeah Yeah Yeah
- am I am I
- 言葉をきいて
- Trippin' Band
- ビューティフル サン
- Music is my Soul
- 君へ
初回限定盤A DVD収録内容
- 言葉をきいて -Live ver.(ビデオクリップ)
- Music is my Soul(ビデオクリップ)
- 日々のぬくもりだけで(ビデオクリップ)
- 光射す方へ(ビデオクリップ)
- 君の瞳と(ライブ映像 / Zepp Osaka 2010.05.09)
- Secret of the night(ライブ映像 / Zepp Osaka 2010.05.09)
- JUMP STAR(ライブ映像 / Zepp Osaka 2010.05.09)
初回限定盤B DVD収録内容
- アコースティックライブ映像を含む全7曲を収録
ROCK'A'TRENCH(ろっかとれんち)
山森大輔(Vo)、畠山拓也(Key, Trombone)を中心に2004年に結成。バンド名は彼らがリスペクトするボブ・マーリーの名曲「Trench Town Rock」に由来。2006年11月に豊田ヒロユキ(G)、河原真(B)、オータケハヤト(Dr)が加入し、バンドとしての基盤を固める。2007年7月にシングル「Higher」でメジャーデビューし、2009年に全国ドラマ「メイちゃんの執事」の主題歌「My SunShine」が着うた・配信などを中心に100万ダウンロードを突破。2009年7月に1stフルアルバム「ACTION!」を発表した。
2010年12月から2011年6月にかけては、シングル「Music is my Soul」「日々のぬくもりだけで」「光射す方へ」を3作連続リリース。中でも「光射す方へ」はテレビ東京系連続ドラマ「鈴木先生」オープニングテーマに起用され、注目を集めた。そして9月に2ndアルバム「Bohemia」を発表した。独自のエンタテインメント性を持つライブパフォーマンスと変幻自在なオルタナティブサウンドを特徴とする。