ナタリー PowerPush - ROCK'A'TRENCH
自信のシングルで勝負を賭ける!「言葉をきいて/ビューティフル サン」
メンバー5人で「人生賭けようぜ」って話をした
──ここにきて、危機感が強まってきた、と。具体的にはどんな会話があったんですか?
山森 メンバーそれぞれに考えてることはあるんですけど、僕としては「こういう音楽性で、こういうふうにやっていきたい」っていう話をして。あとはもう、情熱ですよね。「ここでもう、人生賭けようぜ」って。そういう話を飲みながらしていて。
豊田 デビューしてから、5人だけでしっかり話すことがあまりなかったんですよ。マネージャーとかレコード会社の人を交えて話すことはあったんですけどね。
──でも、バンド結成の頃は「こういう音楽をやりたい」っていうビジョンがあったんですよね?
山森 あの、「あやふやなことをやる」っていう明確なものがあったんですよ(笑)。例えば「スリーコードのロックンロールをやろう」って決めちゃうんじゃなくて、自分たちが聴いてきた音楽、好きな音楽をどんどん取り入れるっていう。それを続けているうちに「ルーツミュージックとロックを混ぜた楽曲が、自分たちのオリジナリティだな」ってことに気づいたんですよね。それを一番の武器にしつつ、バラードだったりポップな曲も歌えるし、メンバーそれぞれのキャラが立ってるっていうところも生かしていこうっていう感じですよね。
──なるほど。今回のタイミングで、それを再認識したと。
豊田 もともとはツアー(4月から5月にかけて行なわれた「Steady Rock vol.6~春のライライラライツアー2010~」)前の決起集会だったんですよ。でも、ツアーのことだけじゃなくて、もっと広い話になっていって。
山森 もちろん、そのあたりの気持ちの変化はツアーにも出てますけどね。無敵感があるというか「どう考えてもカッコいいじゃん」って思ってライブをやれてるっていう。それさえあれば、他の演出だったり「こうやって楽しむんだよ」みたいなことを言わなくても、グイグイ引っ張れるんですよ。こんなにいい曲だし、演奏もうまい。それがカッコよくないわけないじゃん! って。実際(オーディエンスの)反応もいいし、スタッフも喜んでくれてるし、お酒も美味しく飲めてるし(笑)。
豊田 やっていることは基本的には変わらないと思うんですけど、何かが違うんですよね。精神的なところが大きいと思いますね、やっぱり。
「やっぱり自分たちの曲はカッコいい」って思えた
──今と昔の心境の違いは?
山森 メジャーで活動するようになって、超キャッチー、超J-POPっていう世界を見て。そのことによって「今までの曲はマニアックだったのかな」って思っちゃったんですよ。途中で急にダブになるアレンジとかも「伝わりづらいかな」とか。でも、世界的なところで考えると、絶対にこっちがカッコいいんですよ。それはね、引越ししたときにテレビを買わなかったことも影響してるんです。テレビを見なくなって、CDとか海外のラジオとかを聴く時間が増えたんですけど、そうすると「やっぱり自分たちの曲はカッコいい」って思えた。それは俺が大口を叩いてるわけじゃなくて。
──なるほど。
山森 いろいろ考える中で、自分たちは何が得意なのか? ってことを思い返したんですよね。海外の音楽をずっと聴いてきて、ルーツミュージックも自分たちの中にあって、そこからオリジナリティのある曲を作ってきて。見た目がいいとかトークがうまいとか踊れるとかじゃなくて、バンドがうまいんですよ。曲を作って演奏するのが得意な人たちの集まりなんです、ROCK'A'TRENCHは。
──ミュージシャンとしてはきわめて真っ当なことだと思いますけど、ものすごい再認識ですね、それ。
山森 そうですよね(笑)。もちろん、もっともっと練習しなくちゃいけないですけどね。ライブの音源を聴いて反省したり、息が上がらないように筋トレをやったり。世界の一流のアーティストと比べると、やっぱりまだまだなんですよね。次元が違う。例えばBACKSTREET BOYSにしても、めちゃくちゃ歌がうまいでしょう。そうじゃないと上には上がれないんですよ。面白いことを言える人が歌も売れるとか、そういうおかしなことは起こらない。自分たちもそういうレベルに行きたいんですよ。いまライブの音源を聴くと、何曲かは「これはいい」って思う曲もあるけど、そうじゃない曲もあるんです。そこをしっかりやっていけば、おのずとシーンのなかでも目立っちゃうと思うし。
──ポップなことだけやってるバンドじゃない。なめんじゃねえ! って気持ちもありますか?
山森 うん、それはもちろん。音楽が好きな人が「あのバンドはいいよ」ってちゃんとわかってくれるところまでは行きたいと思うし。まあ、ライブを見てくれれば、すぐわかると思うけど。
ROCK'A'TRENCH(ろっかとれんち)
山森大輔(Vo)、畠山拓也(Key,Trombone)を中心に2004年に結成。バンド名は彼らがリスペクトするボブ・マーリーの名曲「Trench Town Rock」に由来。結成当初はサポートメンバーを迎えながらライブを行っていたが、2006年11月に豊田ヒロユキ(G)、河原真(B)、オータケハヤト(Dr)が加入し、バンドとしての基盤を固める。2007年、7月にシングル「Higher」でメジャーデビュー、そして2009年、全国ドラマ「メイちゃんの執事」の主題歌「My SunShine」が着うた・配信等を中心に100万ダウンロード突破。2009年7月に1stフルアルバム「ACTION!」を発表。ロック、レゲエをベースにした陽気なサウンドと、ポップかつオルタナティブな音楽性は、ライト層からコア層まで多数の音楽ファンの支持を得ている。