ベースを始める前は声優になりたかった

KenKen　作品って、いろんな人の役割が重なって1個のものになると思うんですけど、アニメ「銀魂」の場合、面白さの軸をみんなで共有するとき、どこに気を遣うんですか？

樋口　一番は監督のビジョンをどこまで現場が共有できるかですね。今、監督が3代目なんですけど、初代（高松信司）、2代目（藤田陽一）、3代目、それぞれ持ち味があって、そのときどきの監督のビジョンで現場は決まっていきます。初代、2代目もある種すごいイケイケなところがありつつ。

KenKen　男子校みたいなノリありますよね（笑）。

樋口　ここ最近、業界全体で女性のスタッフが増えているかなと思うんですけど、今の宮脇千鶴監督も初代、2代目のいいところを引き継ぎつつ、彼女にしかできない、いい味付けが入っています。

KenKen　楽器もそうですもん。女の人が叩くドラムとか弾くベースは全体的にふくよかな感じ。あと、「銀魂」って面白い部分だけじゃなくて、いろんな要素があるじゃないですか。俺、あんなにイジられてた将軍（徳川茂茂）がまさか本当に死んじゃうとは思わなかったからけっこうショックで……。ミクスチャーバンドじゃないけど、そういう誰でも絶対どっかハマる要素があるからこんだけ続くんだろうなあと思って。

樋口　アニメ「銀魂」は原作のテイストもあるんですけど、現場ではよく“幕の内弁当”と呼んでまして。ギャグあって、シリアスあって、アクションあって、泣きがあって。ファンの方にいろんな味を楽しんでもらえるようなアニメとして力を入れてます。

KenKen　やっぱそうなんだ……いやあ、今日の対談楽しいなあ（笑）。こんな日が来るとは。樋口さんは今おいくつですか？

樋口　38歳です。

KenKen　じゃあ、JESSEとほぼ同世代だ。アニメ業界を志そうと思ったきっかけは？

樋口　大学時代にアニメ映画を観たことです。今敏さんや当時を代表される監督たちのさまざまな映像表現に魅せられて。

KenKen　今敏監督の作品、俺もけっこう観てます。「パプリカ」とか「千年女優」とか。あと少年バットの出てくるやつ、なんだっけ……「妄想代理人」だ！

樋口　さすがお詳しいですね。びっくりしました。

KenKen　ははは！（笑） 大好きなんで。

──アニメに詳しく、ベースもバリバリ弾けて。

KenKen　楽器の練習はオタク要素ないと絶対無理だから。練習しないと絶対うまくなんないし、引きこもってナンボの世界なとこあるんで。ゲームで言うと、ひたすら「スペランカー」やってる感じ（笑）。曲が弾けるようになっていくにつれ、「倒せないボスが倒せる！」みたいな。

樋口　なるほど。

KenKen　本当に楽器うまい人は友達いなくても「楽器だけいりゃいいや」みたいな感覚の人が多いんじゃないかな。俺もアニメ観てるとき、ずっとベース弾いてるし。

──しかも超早熟ですよね。

KenKen　始めるのが早かったからね。小学校3年生のときにベーシストになろうって決めて。 当時、小学生でベース弾いてるヤツなんて日本に1人もいなかったと思う。それで「これはもう天下とるしかねえ」と。人生の目標がすぐ決まったんで学校にも行かなくなるし、ベース以外の時間にやることはゲームとアニメ。もともと「幽☆遊☆白書」世代で、小3でベース始めるまではアニメ「幽☆遊☆白書」で蔵馬役をやっていた緒方恵美さんが好きすぎて、声優になりたかったんです。

樋口　へえーっ！ 僕も世代は少し上ですけど「幽☆遊☆白書」世代です。

KenKen　その世代は、海外でもジャパニメーションとして一段階盛り上がってましたよね。ホント、アニメとゲームは日本が誇るべき文化だと思います。

兄弟そろって好きなことを曲にできたシングル

──RIZEも今年で結成20周年。KenKenさんはオリジナルメンバーではないですが、結成時から一番近くでご覧になられてきたんですよね。

KenKen　1回目のライブから観てますからね。

──逆に20周年と聞いて「もうそんなに？」と思う人もいるでしょうね。

KenKen　デビューが早いですからね。JESSEが17歳、あっくん16歳。あんな尖ってて“オラオラ！”みたいな16、7歳、いないと思うし、ドラマ「池袋ウエストゲートパーク」とか出てるもんだから、そのイメージで止まってる人からはいまだにストリートギャングだと思われてて（笑）。全然怖くないから！ 気のいいあんちゃんだから！ 俺がRIZEに加入して11年。3代目のベーシストだけど在籍は一番長い人間なので、もう自分のバンドという認識でいます。1人は兄弟だし、もう1人も俺がお腹の中にいる頃から知ってる人だし。

──今回のシングルのカップリングにはKenKenさんのベースで再録した代表曲「日本刀」のスタジオライブバージョンが収録されています。

KenKen　昔からある曲だけど、タイトル的にも「銀魂」のシングルに入るのは不思議とつじつまが合うというか。もう1曲のWOWOW「NBAバスケットボール16-17シーズン」のイメージソング「ONE SHOT」も、うちの兄貴がオールスター戦のゲスト解説出れるぐらいバスケが好きすぎて、オファーをいただいたもので。兄弟そろって好きなことを曲にできるのはすごくうれしいし、意味のある1枚になるんじゃないかなと思ってます。

──「日本刀」の歌詞に「1970年代からJAPANESE ROCKは死んでない」とありますが、メンバー皆さんの親御さんであるジョニー吉長さん、金子マリさん、Charさんも1970年代、10代の頃から第一線で活躍されて。

KenKen　ミュージシャン家系だから生まれたときから音楽ができて当たり前と思われるし、人の30倍やんないと1人の人間として見てもらえないんだよね。だからこそ超練習したし、ハードル高いからこそみんな超うまくなった。誰よりも筋通しとかないと、一瞬で足元すくわれるから。RIZEも、今のパフォーマンスがいつまでできるかはわからないけど、おじいちゃんになっても超へドバンしていたいね。すごいヨボヨボで出てきたけど、ベース持ったら超動くみたいな（笑）。

──KenKenさんがTwitterにあげていた、老人になる写真アプリで撮った自撮り画像が本当にジョニーさんそっくりでびっくりしました。

KenKen　96%同じ顔だよね（笑）。今思い出したけど、うちの親父が生きてた頃、いきなり家に泊まりに来て、一緒に「銀魂」観たことあるんだよな。そしたら「続きが気になるから観せろ」みたいな話になって。まーちゃん（加部正義 / ザ・ゴールデン・カップス、ピンククラウド）も、今一番好きなアニメ、「銀魂」って言ってた。昔から超アンテナ高い人で「ドラゴンボール」も超好きで。「まーちゃん最近何観てんの？」って聞いたら「『銀魂』、おもろいよね」って。横浜・本牧の重鎮で、もう70歳近いのにさすがだよね。それだけいろんな人に響いてるってことだと思います。

「銀魂」愛を伝えられたことが一番大きい

──そろそろ対談も終盤ですが、せっかくですのでほかにも何か樋口プロデューサーに質問したいことがあれば、ぜひ。

KenKen　いや、ここまでいろいろ言ってもらえたら満足です。俺、好きなものには掌の上で踊らされたいタイプなんで。好きなゲームの攻略本は読まないような感じ（笑）。今回そもそも、「銀魂」チームに「銀」と「魂」のデモを聴いてもらって、「銀魂」愛を伝えられたことが僕的には一番大きくて。「救われたな」みたいな。俺、「決まんなくてもいいや」と思ったの。このままお蔵入りで終わったとしても……まあ、勝手に作ってるだけだからお蔵入りもクソもないんだけど（笑）。そういえば、こないだジャンプ編集部に行く企画でエリザベスと会ったんだけど、すげえ興奮しました。口の中のぞいてみたり（笑）。

樋口　RIZEさんも出演される3月5日の両国国技館イベント（「銀魂華祭り2017（仮）」）にもエリザベス来ますよ。

KenKen　やった！ 「ひさしぶり！」みたいな仲だね、もはや（笑）。「銀魂」のイベント、毎回お客さんとして応募して外れてたんですよ。それがついに……しかも出る側だぜ、みたいな（笑）。どんな格好しようか今から超悩んでて。和服でコスプレしちゃおうかな？ 髪型的には桂（小太郎）ならいけそうだから前髪切っちゃおうかな？ そのために（笑）。

樋口　センターステージですので、お客さんに360°囲まれた中でのパフォーマンスが楽しみですね。

KenKen　いや、超めでたい！ 20周年イヤーが幸先よすぎて怖いぐらい。「ホントいいんですか？」って感じ。これで「やりたかったー」と思いながら死なずに済みました（笑）。でも、やっぱ好きなものってずっと好きだから。いちファンとしてできた作品がオフィシャルになるのは、やっててよかったなと思う瞬間です……まだもう1曲、「魂」もあるんで（笑）。「銀魂」用の新曲、あと5曲ぐらい作っておこうかな？

樋口　ぜひともお待ちしています（笑）。

KenKen　まさかこうして樋口さんと対談させていただけるなんて思ってなかったし、これを機に「ベースで効果音作ってくれ」でも、お力になれることはなんでもやらせていただきますので。お通ちゃん（寺門通）の新曲とか、さっちゃんのキャラソンも作りたいし。夏の実写映画も新井（浩文）ちゃんが岡田似蔵やってたり、（堂本）剛ちゃんが高杉晋助やってたり、友達が何人か出てるからすげえ楽しみ。ぜひ2作目も作ってもらって、俺も天人でいいから出たい！（笑）