音楽ナタリー Power Push - RIZE
KenKen×石野卓球対談 ベースヒーローとテクノDJの共通点
俺を観てベースを始めたって言われるのが一番うれしい
KenKen 今は誰でもDJができるし、実際に山ほどDJがいるのに、卓球さんみたいに長い間ずっとDJとして名前がある人って何かしらの理由があるはずなんですよね。
石野 「ほかに何も仕事ができない」とかね。やばいよ俺がビル清掃とかやってたら絶対下着泥棒とかで捕まってたもん(笑)。
──でも確かに、若い頃に先鋭的な音楽をやってお茶の間レベルで人気者になった人が、デビューから25年以上経った今もこうやってシーンの第一線に居続けてるっていうのはすごいことだと思います。
石野 別に第一線にいる気はないけどね。特殊ってだけ。
KenKen 大型特殊免許って感じ?
石野 いや、特殊小型船舶(笑)。船舶だから信号機関係ねえし、なんとなくそこに浮いてるだけだから、そのフィールドを脅かす人いないしさ。だって「第一線」とかって、プレッシャーがデカいじゃないですか。そういうの嫌だし、好きにやってるだけです。
KenKen ははは(笑)。
石野 自分でも気付いてなかったんだけど、好きなことをやってたらそれがたまたま特殊だったっていう。若い頃は、自分がやってることをほかに誰もやってなかったから「もしかして俺、金脈掘り当てちゃったかな?」「今は静岡の田舎の高校生だからまだ評価されてねえけど、俺が今やってることが陽の目を浴びちゃったらダントツでヒットチャート1位だよな?」ぐらいに思ってたね(笑)。だから「早く大人になりてー」とか言ってたけど。いざ東京出てきたら「あれ、俺って特殊?」みたいな(笑)。
KenKen 謎の自信って大事ですよね。俺もそれだけで生きてきましたもん。
石野 まあ、運がよかったのと周りに恵まれたっていうのもあるけど、好きなように活動ができてて、それが長く続いてるっていうだけで、別に自分が第一線に立ち続けてるとは思ってないな。だから自分よりバカな奴を見るとホッとするもんね。「あいつがやれてんだから俺もできんだろ」みたいなさ(笑)。
KenKen ホントっすね(笑)。俺はあと5年以内に若手から突飛でヤバいベーシストが現れる気がすごくしてるんですけど、今までは全然アホな奴がいなかったんですよね。自分が15歳のとき、周りでベース弾いてる人に「ベースヒーローになる!」みたいなタイプが誰もいなくて。だったら自分が行くしかない!って思ったし。
石野 そのとき誰がヒーローだった? フリー(Red Hot Chili Peppers)とか?
KenKen フリーですね。あとは311、Primusとか90年代のバンド。でも憧れてたのは今のRed Hot Chili Peppersの感じじゃ全然ないんですよ。ガンガン尖ってたから昔は。あんなAerosmithみたいな立ち位置じゃなかったし。
石野 そうだね、今はAerosmithみたいだよね(笑)。
KenKen もちろんバンドがずっと続いてるって素晴らしいことだけど、なんか俺らがシビレてたものとはちょっと違うものになってるからさ。それで「KenKenってレッチリに憧れてるらしいぜ!」みたいに言われても、それじゃないんだよ!っていう(笑)。だからなんか今の子とその話をしても合わないし、もどかしい気持ちになる。
──どうしてベースヒーローになろうと思ったんですか?
KenKen 俺は自分がカッコいいと思ってるいろんなものを吸収してベースを弾いてるので、みんなにも同じように、俺を観てベースを始めてほしいんです。
石野 今けっこういると思うよ、そういう子。
KenKen 増えてますね。「いつも聴いてます」って言われるより「ベース始めるきっかけになりました」みたいな子がいてくれるのが一番うれしい。
石野 音楽やってる人ならベースの重要性ってわかるんだけどさ、そうじゃない人にとっては「バンドを始めようと思ったときにじゃんけんで負けた奴がやる楽器」じゃん?(笑)
KenKen そのイメージを覆そうとずっと思ってるんですよ。
石野 KenKenみたいに見た目も派手でこれだけ押しが強い人ならできるかもね。「自分もああいうふうになりたい」って思われるのが大事だからさ。
KenKen 俺みたいなのを「あんなのベーシストじゃない」って言う人もいるだろうけど、別に賛否両論あっていいと思う。そういう人が「こうあるべき」と思ってるようなベースも俺は弾けるし、そっちのほうが弾いてて楽しいときもある。ただやっぱ、俺が小3の頃にベーシストを観てシビレたキャッチーなインパクトを、今のキッズにも与えたいんですよ。
次のソロアルバムはレコーディングしてから10年後に出したい
石野 若いバンドを観に行ったりすんの?
KenKen 基本的にあんまり他人に興味ないんですよ。でも興味が出たらめっちゃ観に行きますね。そういう意味でも、こないだのフジロックは楽しかったなあ。
石野 出るのは初めてだったんでしょ?
KenKen RIZEでは初めてです。渋さ知らズとか、Charaさんのサポートとかで出たことはあったけど。
石野 渋さ知らズもやってんの?
KenKen そうなんですよ。振れ幅がすごくて。堂本剛さんと一緒にやった次の日にザ・スターリンのライブだったり。
石野 それは幅広くてすごいね。
KenKen そういう人たちに自分が必要とされるっていうのはすごくうれしいです。今みたいな人生を目指してたから、このまま死ぬまでこうだったらいいなってホント思ってる。1日でも多くベースを弾きたい。チャートで1位なんて獲らなくていいから、このスタンスでいつまでもやっていけたら最高。何が幸せかっていうのは人によって違うし、「世界中で活躍するんだ!」が夢の人もいれば、場末のスナックで歌ってんのが幸せって人もいると思うけど、俺も自分なりの幸せを目指してたらこうなってた、って感じです。
──KenKenさんにとって、ベーシストとしての一番の武器は何だと思いますか?
KenKen 業界に敵が全然いないっていうこと。みんな友達!みたいな。なんか昔から、イガイガしてる人たちを仲裁するのがすごく好きで。
石野 あー、ベーシストだな(笑)。
KenKen 20代を振り返ると、解散しそうなバンドを助けてばかりの日々だったなって感じがするんで、そろそろ自分のこともやろうかなと思って。
石野 ソロアルバムは出してないの?
KenKen もう2枚出してます。20歳で1枚出して、22歳で2枚目を出して。3枚目は23歳のときに録ったんだけど、33歳になったら出してみようかなと。作った10年後に。で、33歳になったら同じ曲を録って、2枚組で出してみようと思ってる。「10年経ったら演奏ってこんなに変わるんだ」みたいな作品ができたら面白い。バンドだったらそんなことできないけど、ソロってそういう遊びができるなって。俺は自分が一生風化しないものを作ってる自信があるから、これは「ホントに10年後に出せるのか」っていう自分との勝負なんです。
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- RIZE 配信限定シングル「PARTY HOUSE」iTunes Storeにて配信中 / TENSAIBAKA RECORDS
- RIZE 配信限定シングル「PARTY HOUSE」
収録内容
- PARTY HOUSE
- NOTORIOUS Takkyu Ishino's Acid Sucker Mix
- PARTY HOUSE(Music Video)
- PARTY HOUSE(MV making movie)
RIZE(ライズ)
幼なじみのJESSE(Vo, G)と金子ノブアキ(Dr)を中心に、1996年に結成されたロックバンド。2000年8月にシングル「カミナリ」でメジャーデビュー。楽曲に込められた圧倒的な熱量とバンドの姿勢が支持を集め、多くのリスナーを獲得した。以降、怒濤のライブツアーを繰り返し、全米ツアー、アジアツアーを成功させるなど、ワールドワイドに活躍の場を広げている。2006年3月に金子の実弟・KenKenがベーシストとして加入。その後もRIZEとしての活動を精力的に展開しつつ、JESSEはThe BONEZのボーカル&ギター、金子はソロワークや俳優活動、KenKenはDragon Ashなどさまざまなバンドのサポートメンバーとしても活躍。2014年10月には「LOVEHATE」、2015年7月には「PARTY HOUSE」をそれぞれ配信限定シングルとしてリリースした。2015年9月からは1年ぶりの全国ツアーの開催を予定している。
石野卓球(イシノタッキュウ)
1967年生まれのDJ / プロデューサー / リミキサー。インディーズバンド・人生を経て、1989年にピエール瀧らと電気グルーヴを結成。1995年には初のソロアルバム「DOVE LOVES DUB」をリリースし、この頃から本格的にDJとしての活動も開始する。1990年代後半からはヨーロッパを中心に、海外での活動も積極的に展開。1998年にはベルリンで行われたテクノ最大の野外フェス「Love Parade」のファイナルギャザリングで150万人を前にプレイした。また、1999年からは日本最大級の屋内テクノフェスティバル「WIRE」を主宰。2006年には川辺ヒロシ(TOKYO No.1 SOUL SET)と新ユニット・InKを結成した。2010年に約6年ぶりのオリジナル作品であるミニアルバム「CRUISE」を発表。2012年には、1999年から2011年までに「WIRE COMPILATION」に提供した楽曲を集めたDISC 1と、未発表音源などをコンパイルしたDISC 2からなる2枚組アルバム「WIRE TRAX 1999-2012」をリリースした。