音楽ナタリー Power Push - RIZE
KenKen×石野卓球対談 ベースヒーローとテクノDJの共通点
2回繰り返すと間違いじゃなくなり、3回聴いたら味が出る
石野 リミックスのオファーといえば、最近「EDMにしてください」っていう依頼も多いんだよね。そんなこと俺に言われても(笑)。
KenKen ちょっと信じられないっすね(笑)。
石野 この前、若いEDMのDJに挨拶されて「若いね、年いくつ?」って聞いたら、「いや、すいません。年齢非公開なんで」だって。「うわあ、DJ業界にそんな奴が現れたか」ってびっくりした。
KenKen へえー、隠して何か得するんですかね?
石野 ねえ? しかも俺、客じゃねえしさ(笑)。
──ある程度はアイドル的な見せ方が必要とされているのかもしれないですね、EDMの場合は。
KenKen 機材が進化したことで“DJっぽいこと”が誰でも簡単にできるようになっちゃったから、っていうのもあると思いますよ。ミックスするときテンポも勝手に合わせてくれるし。
石野 最近の人、ヘッドフォンしてないもんね。こないだ若い子に「卓球さん! さっきのテンポがちょっとズレてたやつ、どうやってやるんですか?」とか言われたの。SYNCさせてるからズレるって概念がないんだよ。
KenKen すげえ。
石野 最初何を言ってるのかわかんなくて、「テンポ合わせ失敗してたぞ」ってDisられてるのかなと思った(笑)。よく話を聞いたら「ああそうか、今は合わせようとしなくても勝手に合っちゃうのか」って。
KenKen バンドも最近、クリックに合わせすぎちゃって、結局バンドのグルーヴがまったくなくなってる音源がめっちゃ多い気がしてて。
石野 そうだよね。
KenKen バンドの演奏って、誰かがズレたときにそれを救おうとして全体が歪む感じがカッコいいんですよ。間違えることは間違いじゃないんです。
石野 そうそうそう。1回ミスするのはただの間違いだけど、2回繰り返すと間違いじゃなくなる。
KenKen 3回聴いたら味が出る。
石野 曲を聴いてて「なんかここ、すげえ引っかかるな」と思ってたら、実はミスタッチだったとかさ。音楽ってそういうの大事だよね。
KenKen RIZEはほとんどクリックを聴かないでレコーディングしてるんですよ。しかも毎回ワンテイクで終了。
石野 あ、そうなんだ。それはいいねえ。
KenKen だからCDなのにライブ感がすげえある。だいたい、1回目のAメロと2回目のAメロがまったく同じテンポなわけないじゃないですか。そういう感覚をRIZEは今復活させようとしてるんです。まあ俺らは、90年代に観てたLAのカッコいい外タレたちがやってたことを見本にしてるだけなんですけどね(笑)。
石野 でもそういうの大事だよ。俺だって外人になりたいもん。猫ひろしみたいにカンボジア国籍を取りたい。
KenKen 結果どっちの国でもオリンピック代表になれないっていう(笑)。
石野 日本にいんのにビザ必要になっちゃてさ(笑)。
KenKen ははは(笑)。いやでもホント、ドキドキする音楽ってそういうところに要素が隠れてるものだと思いますよ。
石野 俺もコンピュータで打ち込みをやってると、どうしてもきっちりしちゃうから、どうすればきっちりした感じにならないかっていうのを気にしてるよ。例えば今回のリミックスはTB-303を使ってるんだけど、あれはプログラミングできないから一発勝負なのよ。
KenKen なるほどな。ついこないだ、初めて電気のステージを袖から観たんですけど、手押しでどんどん音を入れていく姿がホントにライブって感じだった。Dragon Ashのスタッフに「あれは何をやってて」みたいなことを説明してもらいながら観てたんですけど、「こんなにバリバリ動いてるんだ!」ってすげえ感動しました。
石野 PCの打ち込みがベースだと、どうしてもただデータを流すだけみたいなライブになっちゃうからね。それだとやってるこっちも飽きるから。
コツは「乳首をいじるように」
──もともと「PARTY HOUSE」をリミックスする予定だったと言っていましたが、あとで完成した「PARTY HOUSE」を聴いて、卓球さんはどう感じました?
石野 「あー、なるほどね」って、最初にそっちを頼みたかったっていうのがすごくよくわかった(笑)。それはそれでまた機会があればぜひやらせてください。別にリップサービスではなく。
KenKen ぜひぜひお願いします! なんだったら一緒に1曲作れたら最高なんですけどね。
石野 あ、いいね。やろうやろう。
KenKen 一度、卓球さんが曲を作ってるところを見させてもらいたいな。目視して勉強してみたい。
石野 勉強になるところなんか1つもないよ(笑)。
──KenKenさんはサポートを含めるとかなりいろいろなアーティストとレコーディングをしていますが、「こういう人と一緒にやりたい」という基準は自分の中にありますか?
KenKen 俺はサポートとは言っても仕事っぽいことは絶対しないし、素のまんまの俺を呼んでくれるとこにしか行かないから。なんか「これだけやって」って制約されるようなのは興味ないっていうか。バックバンドならやるつもりもないし。
石野 そういうの嫌だよねー。奴隷って感じでね(笑)。そうそう、さっきのリミックス依頼かアレンジ依頼かって話だけど、「これはアレンジじゃん」っていうのを俺がやるのは奴隷感覚(笑)。それなら俺よりもっとうまくやれる専門の人がいるからね。
KenKen ちなみに曲を作るときはいつも何から作るんですか?
石野 ベースだね。ベースラインがあったらさ、いろんなもん乗っけられるじゃん。そしたらもうほぼできたも同然っていうか。逆に上モノだけ決まってても、ベースが決まんなきゃだめだからさ。ベースっていう名前の通り、曲の土台だからね。だから俺、ベーシストがすごく好きで。
KenKen いやー、そう言われると自信つくわ(笑)。スラップが必要なときはいつでも呼んでください!
石野 スラップ得意なの?
KenKen めっちゃ得意っす! いくらでもやります!
石野 前にムスタングベース買ったのね。ショートスケールのやつ。でもやっぱ全然弾けなかった。俺が左利きなのにベースが右利き用だったことにあとで気付いたんだけど(笑)。そのときスラップも弾いてみたけど、指が痛くなるだけ(笑)。あれ弾いてると指の形変わるでしょ?
KenKen 俺はもう骨の形が変わってきましたね。
石野 キース・リチャーズとか、もう指がLの字型になってるもんね。職業病っていうかさ。俺も“パイオニアのミキサーだこ”ができてる(笑)。
KenKen DJがミキサーのつまみ操作するのって、どの楽器を演奏するよりも一番手首を痛めそうだなと思うんですけど。
石野 いや、素人は手首をひねりながらやりがちなんだけど、あれは指先で動かした方がいい。乳首をいじるのと一緒。
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- RIZE 配信限定シングル「PARTY HOUSE」iTunes Storeにて配信中 / TENSAIBAKA RECORDS
- RIZE 配信限定シングル「PARTY HOUSE」
収録内容
- PARTY HOUSE
- NOTORIOUS Takkyu Ishino's Acid Sucker Mix
- PARTY HOUSE(Music Video)
- PARTY HOUSE(MV making movie)
RIZE(ライズ)
幼なじみのJESSE(Vo, G)と金子ノブアキ(Dr)を中心に、1996年に結成されたロックバンド。2000年8月にシングル「カミナリ」でメジャーデビュー。楽曲に込められた圧倒的な熱量とバンドの姿勢が支持を集め、多くのリスナーを獲得した。以降、怒濤のライブツアーを繰り返し、全米ツアー、アジアツアーを成功させるなど、ワールドワイドに活躍の場を広げている。2006年3月に金子の実弟・KenKenがベーシストとして加入。その後もRIZEとしての活動を精力的に展開しつつ、JESSEはThe BONEZのボーカル&ギター、金子はソロワークや俳優活動、KenKenはDragon Ashなどさまざまなバンドのサポートメンバーとしても活躍。2014年10月には「LOVEHATE」、2015年7月には「PARTY HOUSE」をそれぞれ配信限定シングルとしてリリースした。2015年9月からは1年ぶりの全国ツアーの開催を予定している。
石野卓球(イシノタッキュウ)
1967年生まれのDJ / プロデューサー / リミキサー。インディーズバンド・人生を経て、1989年にピエール瀧らと電気グルーヴを結成。1995年には初のソロアルバム「DOVE LOVES DUB」をリリースし、この頃から本格的にDJとしての活動も開始する。1990年代後半からはヨーロッパを中心に、海外での活動も積極的に展開。1998年にはベルリンで行われたテクノ最大の野外フェス「Love Parade」のファイナルギャザリングで150万人を前にプレイした。また、1999年からは日本最大級の屋内テクノフェスティバル「WIRE」を主宰。2006年には川辺ヒロシ(TOKYO No.1 SOUL SET)と新ユニット・InKを結成した。2010年に約6年ぶりのオリジナル作品であるミニアルバム「CRUISE」を発表。2012年には、1999年から2011年までに「WIRE COMPILATION」に提供した楽曲を集めたDISC 1と、未発表音源などをコンパイルしたDISC 2からなる2枚組アルバム「WIRE TRAX 1999-2012」をリリースした。