「大丈夫」に表れる心の変化
──12月24日には、今年3作目となる新曲「最後のバイバイ。」が配信リリースされます。明るめの楽曲が続いたあとにこの失恋ソングがくると、より刺さるものがありますね。
「最後のバイバイ。」は私の中で一番感情を乗せた曲だったので、メロディも歌詞もかなり切ない仕上がりです。しかも、これをクリスマスイブに出すというのがね(笑)。
──クリスマスという時節柄、ハッピーな曲でにぎわっている中でこの曲と向き合うと。
「最後のバイバイ。」というタイトルの、しっかりとした失恋ソングです(笑)。
──中には寂しい思いをしていたり、この季節だけど失恋してしまう方もいるでしょうし。
そうですよね。なので、この季節に失恋した方々にしっかり届いてほしいなと思います。
──この曲も実体験から生まれたものなんですか?
これも、1人の方との思い出をかなり擦った結果生まれたものです(笑)。ほぼ実体験なので、歌詞もかなりリアリティがあるんじゃないかと思います。
──読んでいてイメージが浮かびやすい歌詞だなと思いました。
語彙があまりない分、わかりやすい言葉を使って私が思っていることをすべて表現しているので、聴いた人も共感しやすいのかなと思います。
──りりあ。さんの歌詞には、どこか心の内側が言葉になってダダ漏れしているようなイメージがあって。序盤の「嬉しかった 寂しかった 苦しかった でも楽しかった」の流れは、その傾向がより強く表れていると思いました。
そうなんです。曲の中でもセリフ調の歌い方や語りかけるような歌い方をしていることが多いので、歌詞というよりは心の中のつぶやきみたいな感じですね。
──その結果、聴き手により自然な形で届いて、共感してもらえるんでしょうね。個人的に一番印象的だったのが、曲中に3回出てくる「大丈夫。」というフレーズ。どれも意味合いや込められている思いが異なるから、毎回ドキッとさせられるんです。
ありがとうございます。私の中でもこの「大丈夫。」は、結局「大丈夫だけど大丈夫じゃない」っていうオチなので、歌い方も物語の進行に沿って毎回変わっています。
──1番の「でも大丈夫。 大丈夫。」は2回続きますが、ちょっとした間があることで主人公の心情の変化が伝わってきますし。
ふふふ。そこはかなりこだわったポイントですね。
──レコーディングを通して、特に気持ちが入ってしまったフレーズはありましたか?
最初から最後まで、全体的に感情を失恋モードに全振りしている曲なんですけど、特に「これじゃあ私可哀想 ああ、もう泣きそう」というフレーズは本当に泣き出しそうな声で歌っていて。感情をより意識しながら歌ったところは、いくつかあります。
今年のりりあ。にびっくりした?
──それにしても、2023年に発表した3曲は内容的にどれもタイプが異なるものになりましたね。
確かに、ポジティブだったりネガティブだったりと、全部バラバラですね。私は“曲を出さなすぎるアーティスト”として知られていますけど(笑)、今年後半だけで3曲もリリースしたのでみんなびっくりしているんじゃないでしょうか。特に、11月に「恋って難しい。」が配信されて、「貴方の側で。EP」がCDリリースされたあとなので、年末に「最後のバイバイ。」が発表されたら「りりあ。、がんばってるね!」と思ってもらえるかもしれません(笑)。
──今くらいのペースが、ご自身の中では一番やりやすいんでしょうか。
そうですね。スタッフさんにはかなり待っていただいて申し訳ない気持ちもありますが、それを許してくださって本当に感謝しています。もちろん、もうちょっとペースを上げられたらという気持ちもあるので、今はいろいろがんばっているところです。
──メジャーデビュー前のインタビューで「締め切りが苦手」とおっしゃっていましたものね(参照:令和のアーティストとSNS 第3回 りりあ。が実践する、新しい音楽活動のカタチ)。
そう考えると、まったく成長していないですね(笑)。
──でも、「貴方の側で。」みたいなタイアップ曲は完全に締め切りありきですよね。
そうなんです。なので、かなり待っていただきました……。申し訳ありません!(笑)
──締め切りがあることで、自分の中でエンジンがかかったりするようなことは?
そういうときって、意図せず別の曲ができてしまうことがあって。
──まったく関係のない曲が?
そう。「こういう内容で」と意識して作っているはずなのに、そこから外れた曲が生まれるループに陥ってしまうんです。
──自分の中から湧き出るものがあるというのは、表現者としてはいい状態なんじゃないかなと。
そう……なのかな? ポジティブに受け取ることにします(笑)。失恋ソングは書きやすいけど、「貴方の側に。」みたいなハッピーエンドの曲を作るのが難しくて。そういう曲を作ろうと思えば思うほど、バッドエンドの曲がどんどん湧いてくるんですよ。
──ハッピーエンドの反動で、バッドエンドの曲が量産されていくと。なぜハッピーエンドの曲は難しいんですか?
ハッピーエンドの経験に乏しいからじゃないかな(笑)。だからなのか、失恋系やネガティブな曲のほうが感情を込めやすいんですよ。
来年はCMソングを作りたい
──りりあ。さんが初のオリジナル曲「浮気されたけどまだ好きって曲。」をリリースしてから、すでに3年以上が経ちました。以前のインタビューで「(音楽を)仕事って思いたくないんです。音楽で食べていきたい気持ちは全然ないので。生きていられればいいし、楽しく音楽をやれたら一番いいと思うので」と発言していましたが、いろいろ環境が変わっていく中でそのマインドに変化はありましたか?
何も変わっていないです。音楽が好きで今の活動を始めたけど、仕事として意識した途端、急に音楽を重荷に感じるようになって嫌いになることだけは避けたくて。もちろん、関わる人が増えたことで仕事と捉えることもできますけど、最終的には楽しく続けていきたいので、そこだけはブレずにやっていきたいです。
──音楽活動を始めてから、2024年でまる5年になるわけですよね。今年の経験を経て、来年はどんなことに挑戦してみたいですか?
これはずっと言っていることなんですけど、CMソングに挑戦してみたくて。CMソングと言っても、企業や商品の宣伝に使われる、耳に残るCMソングってあるじゃないですか。
──昨今のタイアップソングとは異なる、昔からある“コマソン”と呼ばれるもの?
そうです。その歌詞というよりも、メロディを作りたくて。
──自分のオリジナル曲がそのままCMに使われるのではなく、そのCM用に15秒程度のキャッチーなメロディを作りたいと。
はい。それこそ、TikTokに投稿していた頃は15秒くらいの曲を作っていたので、その感覚でよりキャッチーで耳に残るメロディを作ってみたいです。あとは……あまり言いすぎると自分で自分の首を絞めることになるから(笑)、これまでと変わらずやっていけたらと思います。
プロフィール
りりあ。
女性シンガーソングライター。2019年秋にTikTokやYouTubeで顔出しなしで弾き語りのカバー動画を投稿し始めると、エモーショナルな歌声と豊かな表現力が瞬く間に話題に。2020年5月に各配信サイトでリリースした初のオリジナル曲「浮気されたけどまだ好きって曲。」はLINE MUSICウイークリーランキング1位を獲得した。2022年5月公開のアニメーション映画「バブル」ではヒロイン・ウタの声優を務め、エンディングテーマ「じゃあね、またね。」も担当。2023年11月にシンガーソングライターのミテイノハナシとしても活動するAru.とのデュエットソング「恋って難しい。Aru. from ミテイノハナシ」、テレビアニメ「わたしの幸せな結婚」のオープニング主題歌を収録した「貴方の側に。EP」を発表。12月には「最後のバイバイ。」を配信リリースする。