音楽ナタリー Power Push - RIP SLYME

10thアルバムに見るリップの現在形

RIP SLYMEが通算10枚目のオリジナルアルバムを発表した。その名もズバリ「10」。さまざまな案が出たが、全体に通ずるテーマやキーワードはなく、特に意味を持たないこのタイトルに落ち着いたという。見方を変えれば、約1年10カ月の間に彼らが作り溜めた多種多様なナンバーがシンプルに堪能でき、今のグループの輪郭が自然と浮かび上がってくるアルバムでもある。

今回は、RYO-Z、ILMARI、PES、SUの4人とDJ FUMIYA単独に分けてインタビューを実施。MC陣には1人ずつ「10」の中から今の気分で“推し曲”を選んでもらい、DJ FUMIYAにはサウンドプロデューサーならではの視点でトラックメイキングとメンバー4人について語ってもらった。

取材・文 / 鳴田麻未 撮影 / 上山陽介

RYO-Z、ILMARI、PES、SUインタビュー

10って切りのいい数字を使えるのはここだけだから

──「10」は、タイトルも“通算10枚目のオリジナルアルバム”という意味ですし、一貫したテーマはないアルバムですよね。

SU インタビュアー的には厄介なアルバム?(笑) 「こんな感じ」とか言いづらい?

──正直、そうですね。

ILMARI 僕らもゴールを見ないでというか、最終的にどうパッケージするか考えずに作ったところがあるので、そうだと思いますよ。

PES タイアップの話をいただいたりしたら随時新曲を発表していたので、アルバムにはそれを集めつつ、今年入ってから作った曲が混ざってます。だからそこにコンセプトとか「次のアルバムはこうしよう」みたいなことを考える余地はなかったんです。(アルバムタイトルを)数字の「10」にしたのは、見た感じもかわいいし、シンプルだからジャケットとかでデザインしやすいだろうと思って。あと、10って切りのいい数字を使えるのはここだけだから。

──確かに。

PES タイアップ曲もスタッフの意見を取り入れた曲もいっぱいあるので、スタッフも含めて“RIP SLYME”っていうものを机の上に置いて、みんなで「じゃあこっちに転がしてみようか、こっちはどうだろうか」っていじったような、そんな過程を過ごしてできたアルバムだと思います。今までで一番客観的な目線で作ったかなっていう。RIP SLYMEを皆さんにいじってもらった。そういう感覚。

RYO-Z 制作期間的には1年10カ月ぶりのアルバムということで、前作の「GOLDEN TIME」の制作が終わってからすぐにいろいろやり始めて、去年の3月くらいにもう40トラックぐらいはあったんです。なかなか長い制作期間の間でできたっていう意味では「FIVE」(2001年発売の1stアルバム)の感じに近いかもしれない。

ILMARI その中でアルバムに入ってないものもいろいろ作ったんですよ。なので僕はできあがってから2週間ぐらい置いて、1回耳をフラットにして聴いてみたんですよね。アルバムとしてどうまとまってるか、客観的に聴いてみたくて。

──どうでした?

ILMARI 曲の並び順もあって、けっこういいアルバムだなって思いました。テーマみたいなものは別に感じないけど、1つひとついい曲だなと思うし、始まりの曲と終わりの曲がちゃんとしてるからまとまりは出たかなと思ってますね。

RYO-Zの推し曲
「時のひとひら」

RIP SLYME

──1曲1曲持っている色がバラバラなアルバムなので、今回MCの皆さんには「10」収録曲の中から“推し曲”をそれぞれ選んでもらいたいのですが。

RYO-Z 「時のひとひら」は最近グッときますね。アルバムをダーッと通して聴くと、この曲があることで全体が締まってる感じがするんで、読了感もとい“聴了感”っていうか、すごい後味がいい。

──この曲の作詞クレジットは4人ではなく、RYO-ZさんとPESさんのみですね。

RYO-Z 僕のラップのパート以外はPESくんが作りました。

──人と人が出会う奇跡を歌った、ロマンを感じさせるリリックだと思います。PESさんはトラックからどんなイメージを受けて、この詞を書いていきましたか。

PES FUMIYAのトラックに時計の秒針の音が入ってて「『時間』をモチーフに、エモくお願いします」って言われたんです。それだけを必死に守りました。

RYO-Z 歌詞のタッチがPESくんだよね。

PES そうですね。

RYO-Z FUMIYAは最初、アルバムのイントロ(1曲目)のつもりでこれを作ったみたいなんです。だからもう一度1曲目に戻れる感じもあるし、「なんかよかったな」って気持ちにさせる曲。

PESの推し曲
「いつまでも」

RIP SLYME

PES 私は「いつまでも」ですかね。「いつまでも」は、Nami(※Nami Miyahara。「GALAXY」「Hot chocolate」「ジャングルフィーバー」などRIP SLYMEの楽曲に度々コーラスとして参加しているシンガー。PESの同級生でもある)に作詞とサビの歌をちょっと手伝ってもらったりして。で、その次に来る「青空」はもう全面的にNamiの書いてきた詞に俺らが乗っかったっていう形。この2曲の並びは好きですね。

ILMARI PESくんのファルセットがいいですよね。

RYO-Z うん。普段から高くしてれば、どんどんさかなクンみたいな感じになっていくかもね(笑)。

PES 201ギョ年!

一同 あはは(笑)。

PES ギョ期待ください!

SU 完璧だね!(笑)

10thアルバム「10」2015年9月30日発売 / unBORDE
3240円 / WPCL-12240 / Amazon.co.jp
初回プレス盤
通常盤
収録曲
  1. Powers of Ten
  2. ピース
  3. POPCORN NANCY(Album ver.)
  4. KINGDOM
  5. だいたいQuantize
  6. いつまでも
  7. 青空
  8. 気持ちいい for Men
  9. TIDE
  10. Happy Hour
  11. JUMP with chay
  12. Vibeman feat.在日ファンク
  13. メトロポリス
  14. この道を行こう
  15. 時のひとひら
RIP SLYME(リップスライム)

RIP SLYMERYO-Z、ILMARI、PES、SU、DJ FUMIYAからなる4MC&1DJヒップホップユニット。1994年に結成され、2001年3月にシングル「STEPPER'S DELIGHT」でメジャーデビュー。その後2ndアルバム「TOKYO CLASSIC」がミリオンヒットを記録する。さらに国内のヒップホップユニットとして初めての日本武道館ワンマンライブを行い、日本にヒップホップ文化を広く浸透させた。2010年には、メジャーデビュー10年目を記念しベストアルバム「GOOD TIMES」とカップリングベストアルバム「BAD TIMES」を発表。2015年9月には通算10枚目のオリジナルアルバム「10」をリリースした。