ナタリー PowerPush - RIP SLYME

「GOLDEN TIME」とリップの未来を考える

RIP SLYMEが約2年9カ月ぶり、通算9枚目となるオリジナルアルバム「GOLDEN TIME」を完成させた。本作は、テレビにおける一番華やかな時間帯=ゴールデンタイムをイメージして作られた。実際にラブストーリー、クイズ番組、旅番組などに似合いそうなナンバーが並ぶほか、大ヒットドラマと同じタイトルの「ロングバケーション」や、フジテレビ系ドラマ「リーガルハイ」の主題歌である「SLY」も収録されている。

今回はメンバー5人にインタビューを行い、キャッチーかつシンプルな傑作が生まれた感想を聞いた。さらに、アルバムのコンセプトにちなんでテレビ番組にありそうなパネルゲーム企画を用意。メンバー間の理解度を測るべく予想合戦や大喜利に挑戦してもらった。

取材・文 / 鳴田麻未 撮影 / 上山陽介

「GOLDEN TIME」インタビュー

テレビの一番華やかな時間帯のようなエンタテインメントを

──今作は、タイトル通りテレビのゴールデンタイムをイメージして作ったそうですね。このコンセプトの着想から聞かせてもらえますか?

左からILMARI、FUMIYA、SU、PES、RYO-Z。

RYO-Z テレビの一番華やかな時間帯のようなエンタテインメントが繰り広げられるアルバムになるといいな、というイメージはなんとなく出てきました。あと「GOLDEN TIME」みたいな枠組みだと猥雑な感じでいけるので、そういう意味でトラックも作りやすいし、バラエティに富んだ内容になるだろうなっていうのは最初の目論見でしたね。それから、ライブを目指して曲を作る意識がけっこうあるグループなんでね、僕らがよくライブする19時から21時ぐらいまでが、まさにゴールデンタイムだと。まあ、それはあとから思いましたけど(笑)。

──そういうアルバムの全体像を話し合っていたのはいつ頃ですか?

RYO-Z 去年の暮れから「来年アルバムを出してツアーをしよう」っていう流れはできていて、実際に動き出したのは年が明けてからですね。明けてからFUMIYAが「FAKE」とか「気の置けない二人」のオケを上げてきて、春ぐらいに先行シングルのスケッチングを始めて「ロングバケーション」っていうタイトルになって、それが余計に加速させたっていうか。徐々に曲が上がっていく中でイメージが膨らんでいきました。

──取材前に読んだ資料の中で、RYO-Zさんは「テレビの中に自分たちの育ってきたエンタテインメントがある」とコメントしていましたが。

RYO-Z そうですね。僕は特にテレビっ子です。まあ、この世代はだいたい子供の頃見てたものにエンタテインメントのルーツがあったりすると思うから、それがにじむだろうなと。

ILMARI 今みたいにネットとかなかったからね。本屋行くかテレビ観るかしかない。

──ほかのメンバーもそれには異論なく?

SU 同じですね。(即答)

RYO-Z (笑)。

ILMARI いいよ、無理しないで。

──無理しなくて大丈夫ですよ。率直な思いで。

SU ……。

ILMARI 黙秘? 黙秘?(笑)

SU ははは(笑)。えっ、インタビューに黙秘権あるの?(笑)

──黙秘権は使わないでください(笑)。それから、サウンド面でも“ゴールデンタイム”は意識しました?

FUMIYA まあ何作ってもいいんだなっていう感じでしたね(笑)。だから作りやすいっちゃ作りやすかった。中身はもうほぼ何も考えず作っていきました。ただ、イントロはスイッチの音から始まったり、テレビを点けてゴールデンタイムが始まるっていうのが表現できたらいいなっていうのがあったんですけど。ほんとはもっとCM的なスキットとか入れてもいいかなと思ってたし。

RYO-Z でも入れる時間がなかったね(笑)。最後にスイッチ切って終わろうかっていう話もあったけどね。

FUMIYA そうそう。それはやろうと思えばできたんだけど、なんか終わっちゃう感じがするなーと思って。終わんないほうがいいかなって。

SU かわいらしいですね、なんか。

RYO-Z 「終わらしたくない!」っていう。

SU かわいらしいコメントですね。

ラップで始まってラップで終わるのがいいかな

──各曲の持つ色がすごくバラバラなアルバムだと思いますが、メンバーそれぞれお気に入りの曲があったら教えてください。

ILMARI 俺「アプリオリ」が好きだったけど、最近「ROAD MAP」がすごい気に入ってますね。

──「アプリオリ」は女性ボーカル・宮原永海さんとILMARIさんのデュエットが大部分を占めるスローナンバーですね。

ILMARI 俺のパート多いですけど、曲として好きですね。いい感じ。切ない。

SU 俺、最近「気の置けない(二人)」ぃー!。

FUMIYA 俺「Butterfly Effect」かなあ。なんかオケもシンプルだし素直な感じっていうか。詞が、よくわかんないけど、なんかいいこと言ってるなって(笑)。

RYO-Z あはは、結果よくわかんないんだ(笑)。

──最初の曲「GOLDEN TIME」と最後の曲「Butterfly Effect」は1人ずつ順々にバースがつながれていくような構成で、頭とお尻は往年のリップらしさを感じる仕上がりだなと思いました。

FUMIYA そうじゃないのもある?(笑)

RYO-Z ほら、「アプリオリ」とか完全にデュエットだったりってことでしょ。そういう感じじゃなくて、しっかりバランスよく4人のラップがあって。

FUMIYA それはほんと。ラップで始まってラップで終わるのがいいかなっていうのはあったかもしれない。

RYO-Z 僕の中では今一番キてるのは「SLY」ですね。「ブロウ」なんかを踏襲した感じもあると思うんですが、今僕らがやりたい感じというか、年相応なダンスミュージック感が一番似合う感じで出た曲なんじゃないかと。あんまりやかましいゴチャゴチャした感じでなく、シンプルになっていくんだなっていう。

ニューアルバム「GOLDEN TIME」/ 2013年12月4日発売 / unBORDE
初回限定盤[CD+DVD] 3700円 / WPZL-30777~8
通常盤[CD] 3150円 / WPCL-11581
CD収録曲
  1. GOLDEN TIME
  2. FAKE
  3. SLY(Album version)
  4. AH! YEAH!
  5. ジャングルフィーバー
  6. 気の置けない二人
  7. ROAD MAP
  8. アプリオリ
  9. 恋のシンキングタイム
  10. 断捨離ズム
  11. Run with...
  12. ロングバケーション
  13. Butterfly Effect
初回限定盤DVD収録内容
  • 「RIP SLYME presents 真夏のWOW at STUDIO COAST」スペシャル映像(ライブ映像数曲入り)
RIP SLYME(りっぷすらいむ)

RYO-Z、ILMARI、PES、SU、FUMIYAからなる4MC&1DJヒップホップユニット。1994年に結成され、2001年3月にシングル「STEPPER'S DELIGHT」でメジャーデビュー。その後2ndアルバム「TOKYO CLASSIC」がミリオンヒットを記録する。さらに国内のヒップホップユニットとして初めての日本武道館ワンマンライブを行い、日本にヒップホップ文化を広く浸透させた。2005年にFUMIYAが病気療養のため一時ユニットを離脱するも、翌年8月に無事復帰。再び5人体制で精力的にリリースやライブ活動を行っている。2010年には、メジャーデビュー10年目を記念しベストアルバム「GOOD TIMES」とカップリングベストアルバム「BAD TIMES」をリリース。2013年12月には9枚目のオリジナルアルバム「GOLDEN TIME」を発表した。


2013年12月10日更新