ナタリー PowerPush - RIP SLYME
愛と宇宙に包まれた“素のRIP SLYME” アルバム「STAR」インタビュー&全曲解説
qみんなDJするようになって、4つ打ちの音楽に対して開いてきた
──FUMIYAさんをはじめ、近年はメンバー全員が活発にDJ活動を行っているRIP SLYMEですが、今作はサウンド面においてDJ活動で得たものが色濃く反映されているように感じました。
FUMIYA そうだと思います。DJ経験も踏まえて、最初はエレクトロとかハウス寄りの音がいいかなぁと思ってたんですけど、作ってくとどうも飽きちゃう感じがあって。やっぱりヒップホップも好きだし、ほかにこんなのもやってみたかったしなっていうのが出てきて、もうごちゃ混ぜでいいや、と。
PES 1曲目が4つ打ちの「The Beat Goes On」で、こういうのばっかりになるのかなぁーと思ったら、次の「Don't Panic」でものすごいヒップホップなトラックが来るもんね。
FUMIYA でもホントみんなDJするようになってから、4つ打ちとかの音楽に対して開いてきたというか、詞を乗せる感じも自由になってきたなっていう感じがします。
──というふうにFUMIYAさんから評価されていますが。
PES 変わってきたかなぁ。まぁ「センス・オブ・ワンダー」は、FUMIYAの「言葉詰めないで書いてみて」っていうオーダーのとおりに新しい乗せ方をがんばったつもりではありますけど、だからって別にDJやってることが反映したとかは……。
FUMIYA 反映したって言って!
PES 反映したっす、反映したっす。
FUMIYA いやいや真面目な話、DJやり出して、前のPESくんだったら絶対聴かないような音楽聴いたりしてるから、すごい面白いなって思うよ。
──ILMARIさんはいかがですか?
FUMIYA ケイスケくんも、前はそんなに聴かなそうだったハードなクラブミュージックにいってますよ。
ILMARI 俺、DJで使う曲決めるとき絶対FUMIYAに相談するんです。「これどうかな?」「あと何かいいのない?」ってFUMIYAに教えてもらう。で、その中に、女の子の声で「♪Put your hands up」ってずっと言ってる4つ打ちの曲があってなんか引っかかって。この曲で言ってるのはただ「手挙げろ」ってことだけで、そこにストーリーがあるわけでもない。こういう、意味がなくても聴いてて楽しい曲はいいねっていう発見はありました。
──アルバムでいうとPESさんの作った「Clap Your Hands」がそれに当たりますね。
ILMARI そう。途中SUさんがちょっとラップ入れてますけど、基本的に「♪Clap Your Hands」以外詞ないじゃないですか。音に乗ってただ楽しむだけの曲もいいんじゃないのと思って。
RIP SLYMEは生活を大切にしてます!
──アルバムを通して聴くと、曲の世界観にはドープな“宇宙”ともう1つ、“日常的な愛”みたいなものも感じました。
ILMARI 特に後半あたりですよね。「○×△□」で友だちになって、「Under the Skin」でつき合いだして、「Simply」で深まって、「BABY」でついには子供できちゃった、みたいな。
PES で、子供できても「Don't Panic」(=落ち着け)と。
──おぉー。
ILMARI 完全に後付けですよ?(笑)
──ですよね(笑)。でもちょっと、RIP SLYMEが今まで扱わなかったような、より身近な視点で愛を表現していると思うんです。それってみなさん個々の生活の変化、心境の変化が関係しているんでしょうか。
PES 僕は唯一結婚してないんで、僕のリリックに関しては「こうだったらいいな」っていうことですね。みんなはどう考えてるのか知らないです。子供生まれたり結婚したりすると大変なんでしょうけど。
ILMARI 僕は無意識ですね。今までそういうテーマが出てこなかったのも、このタイミングで多く出たのも特に意識はしてなくて、言われて気づいたって感じ。
FUMIYA 「BABY」は実際僕に子供が産まれたのでできたんですけどね。
──そうなんですか、おめでとうございます! 最後の曲でそうしたリアルな事情が出てくることも含め、アルバムを聴き進めていくうちにRIPのみなさんって生活を大切にしてるんだなぁと思いました。
PES 生活を大切に(笑)。しましょうよそこは。してますよ!
ILMARI 最初はアタック強い音でアゲてくのかなぁと思いきや、徐々に生活感が出てきたと。
PES あははは! あるよね、そういうの。引っ越したばっかはすげーオシャレな部屋にしようとするんだけど、なんか生活感出てきちゃう。米でパン焼くやつとか買っちゃったりして。
──あははは(笑)。
着飾ってない、狙ってない、素のRIP SLYME
──いよいよ「STAR」がリスナーの手元に届くわけですが、どんなふうに聴いてもらいたいですか?
ILMARI 一応リード曲は「センス・オブ・ワンダー」になってますけど、アルバム通して聴いてほしいですね。だいたいアルバムってシングルが入ってたら最初にそればっかり聴いて、だんだんアルバムの曲を好きになっていったりするでしょ。そういうのより、僕らの決めた順番で最後の「BABY」まで1つの作品として楽しんでほしいなって思います。
──全曲聴いてどんな反応があるのか楽しみですね。
FUMIYA どうなのかなぁ。聴く年代にもよるのかなぁ。でも“こういう感じがRIPか”って思ってくれれば。
──聴く年代にもよる、というのは?
FUMIYA RIPのホームページとかを見てると、最近は小学生のファンもいるんですよ。そうなってくると「BABY」とか、BABY側に近いわけですよね(笑)。だから聴くほうはどう感じるんだろう、やっぱ何言ってんのかわかんないって思われるかな、それとも……とか考えます。
──なるほど。では最後に、ナタリーをチェックしている音楽ファンがぜひ「STAR」を聴きたくなるような、魅力的な宣伝文句をお願いします!
FUMIYA 「これが素です」みたいな感じじゃないですかね。着飾ってない、狙ってない、素のRIP SLYME。
CD収録曲
- The Beat Goes On
- Don't Panic
- Pop Up なう
- センス・オブ・ワンダー
- フォーチュン・クッキー
- RIDE ON
- TOKYO STOMP
- 甘い生活~La dolce vita~
- Clap Your Hands
- ○×△□
- Under The Skin
- Simply
- BABY
RIP SLYME(りっぷすらいむ)
RYO-Z、ILMARI、PES、SU、FUMIYAからなる4MC&1DJヒップホップユニット。1994年に結成され、2001年3月にシングル「STEPPER'S DELIGHT」でメジャーデビュー。その後2ndアルバム「TOKYO CLASSIC」がミリオンヒットを記録する。さらに国内のヒップホップユニットとして初めての日本武道館ワンマンライブを行い、日本にヒップホップ文化を広く浸透させた。2005年にFUMIYAが病気療養のため一時ユニットを離脱するも、翌年8月に無事復帰。再び5人体制で精力的にリリースやライブ活動を行っている。2010年には、メジャーデビュー10年目を記念しベストアルバム「GOOD TIMES」とカップリングベストアルバム「BAD TIMES」をリリースした。