ナタリー PowerPush - RIP SLYME
愛と宇宙に包まれた“素のRIP SLYME” アルバム「STAR」インタビュー&全曲解説
q昨年「GOOD TIMES」「BAD TIMES」という2枚のベストアルバムをリリースし、メジャーデビューからの10年を総括したRIP SLYME。気持ちも新たに発表された1年9カ月ぶりのオリジナルアルバム「STAR」は、シングルや先行タイアップ曲の一切ない正真正銘の“新作”。5つの点を結んだ形であるそのタイトルは、「5人で作る」という今作の制作テーマも表している。
今回、インタビューにはFUMIYA、PES、ILMARIの3人が出席し、時折笑いを交えつつアルバムへの思いを語ってくれた。さらに特集後半では、2月17日に東京・代官山UNITで行われた「J-WAVE×RIP SLYME "STAR" LISTENING PARTY」より、メンバー全員による全曲解説コメントを抜粋して紹介する。
取材・文/鳴田麻未
一番リラックスして作ったアルバム
──ニューアルバム完成おめでとうございます。昨年リリースされた「GOOD TIMES」「BAD TIMES」のような作品集もうれしいですが、やっぱり真新しいオリジナル作品はさらにうれしいです。楽しく聴かせていただきました。
PES ありがとうございます。作ってよかったな。
ILMARI うん。オリジナルアルバム出すのは1年9カ月ぶりらしいんですけど、そんな感じはしなかったですね。途中で「星に願いを」とか「SCAR」とか「Good Times」とか、新曲は作ってたんで。でも待っててくれた人にとっては「やっと出してくれましたね」って感じじゃないですか。その反応を見て初めて「あぁ久しぶりなんだな」って思って。
──今回はRIP SLYME史上初の、既発曲なしのアルバムとなりましたね。
ILMARI そうなんです。作る前は、シングル曲が入らないなんて初めてだからできるかなぁという気持ちもあったんですけど。
──先行シングルのないアルバム制作というのはいかがでしたか?
FUMIYA 楽しかったです。良い意味で力の抜けた感じになって。
ILMARI 今回、先に「STAR」っていうタイトルを決めて、1曲1曲それを意識しながら作っていったんですよ。シングルがあるとそういう作り方はできないんです。シングル出すときにアルバムのテーマとかタイトルってまだ考えてないことが多いから。そういう意味でも、10年目に来て新鮮な気持ちで制作できたなって。うん、思ってたより楽しかった、シングルがないアルバムのレコーディング。
──シングル曲ってアルバムの中に入れるのが難しかったりするんですか?
PES んー、でもシングル曲があるから色が決まるっていうのもありますからね。
──ではシングルを基軸にアルバムを考えていく?
FUMIYA これまではそういう流れが多かったかもしれないです。
PES シングル制作ってカップリング含めて2、3曲作るじゃないですか。そうするとそのままアルバム作る感覚になっちゃうんですよね。ぶっちゃけシングル曲生み出すのは心も体も結構疲れるんで、今回みたいな作り方はいいなと思いました。
──また、これまでのアルバムと比較して、今作にはどういう印象を持ってます?
PES みんな、一番リラックスして作ったアルバムだと思いますよ。狙って派手にしたり、あんまり無理したりしてない。
FUMIYA 「死にそうだったなぁ今回の……」みたいな感じではないですね。時間的にはいつもどおりなかったけど、焦らずサラッとできました。
気づいたら最後まで5人で完走できた
──ではアルバムのテーマについて訊かせてください。まず今作の一番のテーマは「5人で作る」ということだそうで。
PES ですね。「GOOD TIMES」のキャンペーンが終わった9月頭ぐらいにスタッフの人たちと会議をして、次のアルバムはできるだけ自分たちでやってみようっていう話になって。
FUMIYA フィーチャリングとかもほぼ入れずに5人だけでやろう、と。
PES まぁ絶対ほかの人入れないって固執してたわけじゃないんでちょっと手伝ってもらったりはしたんですけど、気づいたら最後まで5人で完走できましたね。あと「STAR」っていうタイトルも同じ夏終わりぐらいに、みんなで話し合って決めました。
ILMARI 5個の点を結ぶと星になるっていうところから。
──なるほど。そもそも、5人だけで作ろうという発想はどこから出たんですか?
PES そのミーティングでスタッフの人から「5人だけでやってるの聴いてみたいな」って言われたからだと思います。「5人だけでホントにできんの?」みたいな(笑)。
──5人だけでやらない期間がそんなに長かったんですか?
ILMARI やっぱアルバムになると1曲はフィーチャリングモノとか入ってたから。
FUMIYA 今まではメンバーそれぞれが誰かにトラック頼むとか、ほかの人と一緒に作るとか、結構バラバラの作業になってた。
──個々に作った曲を持ち寄ってできるアルバムだったと。
FUMIYA っていうやり方も結構多かったんですよね。今はPro Toolsっていう便利な機械があるんでバラバラに録っていくこともできるし。でも今回は基本的にまとまってやろうってことで、僕んちのスタジオに集まって録ることが多かった。
PES うん。前は人が声録ってても結構放っといたりしてたんですけど、今回はボーカルのディレクションをみんなでやったりもして。今誰が何やってるのか、お互いの状況を把握できる環境だったので進行がスムーズでしたね。
──そのように団結して制作することで、何がどう変わるんでしょうか。
PES んー、まだツアー始まってないですけど、ライブに対するイメージのすり合わせみたいなのは早いですね。何を思って書いたかみんな知ってるから。あと、密度濃くやって良かったこと……。
FUMIYA 飲みに行く回数が増える。レコーディング終わった後、もうこのまま飲んじゃおうっていうことで。
PES そこ必要なのかっていうとこだね(笑)。
──なんだか、全然ピリピリしていない和やかなムードの制作現場だったんですね。
FUMIYA 何せ自宅のスタジオだからまさにアットホームですよ。そこではエンジニアも入れず全部俺が作業やるんで、俺がスクラッチ録るときはケイスケ(ILMARI)くんに録音のスイッチ押してもらったりして。
ILMARI そうそう。ていうか家だから、FUMIYAなんて途中でごはん食べに行っちゃうしね。
FUMIYA その間みんな待ってる。
PES 俺らのごはんも作ってくれればよかったのに。
CD収録曲
- The Beat Goes On
- Don't Panic
- Pop Up なう
- センス・オブ・ワンダー
- フォーチュン・クッキー
- RIDE ON
- TOKYO STOMP
- 甘い生活~La dolce vita~
- Clap Your Hands
- ○×△□
- Under The Skin
- Simply
- BABY
RIP SLYME(りっぷすらいむ)
RYO-Z、ILMARI、PES、SU、FUMIYAからなる4MC&1DJヒップホップユニット。1994年に結成され、2001年3月にシングル「STEPPER'S DELIGHT」でメジャーデビュー。その後2ndアルバム「TOKYO CLASSIC」がミリオンヒットを記録する。さらに国内のヒップホップユニットとして初めての日本武道館ワンマンライブを行い、日本にヒップホップ文化を広く浸透させた。2005年にFUMIYAが病気療養のため一時ユニットを離脱するも、翌年8月に無事復帰。再び5人体制で精力的にリリースやライブ活動を行っている。2010年には、メジャーデビュー10年目を記念しベストアルバム「GOOD TIMES」とカップリングベストアルバム「BAD TIMES」をリリースした。