歌い出しの1行としては100点

──多保さんとRihwaさんがこだわったアイリッシュ感、アイリッシュミュージックは、どんなふうに取り入れていったんですか？

多保さんはアイルランドという国自体も大好きで、よく現地のフェスにも行っているらしいんです。国の歴史にも詳しくて、その昔迫害があった悲しい過去や、その影響で世界に散らばったアイルランド出身の偉人がいっぱいいるって聞かせてもらったんですね。どんな逆境にもめげずに前を向いて立ち向かっていった人たちの話は聞くだけでちょっと勇気をもらえたし、そういうポジティブなスピリットも曲に込められたらいいなって。実は私の先祖も移民なんですよ。だから、その話を聞いたとき妙に共感する部分があったし、自分もルーツとして持ってることなのかなって。具体的な音の部分では、アイリッシュサウンドに欠かせない楽器のティンホイッスルとフィドルを入れています。

──結果、オシャレな異国感漂うサウンドが完成しましたね。

日本でこういうことをやった人は多分いないんじゃないかなって。新しいことをやりたいとずっと思っていたので、それができて純粋にうれしいです。

──歌詞は、先ほどおっしゃったポジティブなメッセージが自分自身をも鼓舞するように描かれていて。HeavenstampのSally#Cinnamonさんとの共作ですね。

最初は1人で書いていたんですが、歌詞をもっとよりよくしていこうと多保さんと話してたときにSallyさんを紹介していただいて。ある程度まとまった状態から入ってもらったので、言いたいことがあふれてる私の歌詞を整理整頓してもらった感じです。全体的な歌詞のイメージとしては、アイルランドの人たちが一族で海を渡っていくような感じ。そのストーリーのアイデアはSallyさんが出してくれて、聞いた瞬間「めちゃくちゃいいですね」って。

──私は歌い出しのフレーズ「生まれた意味を探しているの」が胸にスッと入ってきました。ストレートな歌声も相まってなんですけど、冒頭からすごく引き込まれるなって。

ありがとうございます。この歌詞が完成するまで何度も書き直して、それに多保さんも本気で向き合ってくださったんですけど、この一文が出てきたときにめちゃめちゃ褒めてくださったんです。「歌い出しの1行としては100点」とも言ってもらえて、すごくうれしくて。なので今、「冒頭から引き込まれる」って感想を言っていただいて「やっぱり多保さんすごいな」って（笑）。

──あはははは（笑）。

大きなことを歌っているようで、きっとみんなどこかで考えていたりするテーマなのかなって思います。

多保さんは「ガイドの神」

──歌詞を何度も書き直したということですが、1人で書いていたときはだいぶ苦戦していたんですか？

この曲の作詞をするときに、幸せってなんだろう？ 強さって何？ 自分が生まれた意味って？みたいなことをバーッとノートに書いて整理したんです。そういう部分とちゃんと向き合う作業は初めてだったんですけど、考えていくうちに、生まれた意味を1つひとつ見つける旅をすることが「生まれた意味」なんじゃないかなって。テーマが壮大な分だけ難しかったんですけど、煮詰まりながらも、自分が信じるものや意思を持って行きたいところへ向かっていくというストーリーを描けたんじゃないかと思ってます。誰かの背中を押せるような、自然と力が湧いてくるような曲になっていたらいいな。

──作詞の仕方や表現に関して、多保さんからいろいろ教わったこともあるんですか？

多保さんってとてもフランクで、よく笑う少年みたいな方なんですよ。それで、こっちがリラックスできる環境を自然と作ってくれるのがまずはすごいなって思います。あと作詞に関しては、ひと言で言うなら「ガイドの神」（笑）。私が悩んでるとき、多保さんの中ではもう答えが見えてて、そこへすごくナチュラルに導いてくれるんです。今までは、ダメ出しされると「自分にはまだ力がないんだ」ってネガティブになったり、自分が削がれていく感覚があったんですけど、多保さんのアドバイスはものすごく愛情深くて、「この歌詞はもっとよくなる」って完全に信じてくれてる。アーティスト側の気持ちをとにかく理解しているから、「わかるよ」って共感してくれたり、「どうしたい？」って聞いてくださることも多くて、私も「絶対いいものを完成させよう」って高い士気のまま制作ができました。

──ネガティブな感情が顔を出すことはなく？

こんなに苦労したのに、まったくなかったです。むしろすごくやる気が湧いてきましたね。音楽やアーティストに対してとても真摯に向き合われる方なので、またぜひご一緒したいです。

──ちなみに、ちょっと珍しいこのタイトルの意味は？

「MY LIFE IS BEAUTIFUL」の部分は、自分の意思や勇気で人生は美しくできるよってことを言いたくて。あと「パイント」はギネスビールの単位なんですけど、ギネスビールはアイルランド発祥ってことで、せっかくならアイリッシュっぽい言葉を入れたいなと。歌詞に「溢れそうな1パイントの勇気」っていう一節があるので、そこから取って付けました。サブタイトルを付けたのも今回が初めてで、世界に1つだけのものを作ろう、どんどん新しいことをやろうというモードの中だったので、絶対にほかとかぶらなさそうなこのタイトルとなりました。