ナタリー PowerPush - Ricky
待望のソロ活動ついにスタート! 虹色シンガーが語る「R☆POP」の正体
J-POPではない、集大成的なジャンル“R☆POP”
──レコーディングはどんな感じで進んでいたんですか?
樫原 実は今回は僕、Ricky、エンジニアの3つのスタジオをデータが渡り歩いていく形で制作したので、3人一緒に作業してないんです。それぞれの作業が終わるとデータを次の人に回していくんですけど、「あっ、こんなの入れてきた」とかみんないろんな仕掛けを密かにやるんですよ。Rickyがコーラスを多重録音すると、次にエンジニアがそれを加工して、面白いエディットやエフェクトを施す。そこから生まれたのが、結果として温かいサウンドだったんです。
Ricky 僕の声もそうですけど、サウンドメイク自体も……そういう温かな音を双方が呼び合ったんじゃないですかね。樫原さんの作ったトラックの上で歌うから、声の多重録音をやりたくなるし必要性を感じるんです。これがゴリゴリの音だったらそんなにコーラスはいらないだろうけど、今回は広げたくなっちゃったんですよ。
──いろんな要素が混ざっていて、これというジャンルのカテゴライズが難しい、独特な世界観ですよね。
Ricky 僕、このアルバムではワールドミュージック的なこともやりたいと思ってたんですよ。基本的に僕の歌はポップだと思うんですけど、そういう民族的なこともサウンドに取り入れてみたくて。だからパーカッシブな要素も入ってると思うんです。そういうところを含めて、カテゴライズされない感じに聴こえるのかもしれないですね。
──ボーカリストのソロアルバムというよりは、ひとつのプロジェクトをみんなで作り上げていった感覚に近いのかもしれないですね。相当作りがいがあったんじゃないですか。
Ricky そうですね、制作は実質2年くらいかかってますから。2007年の暮れから曲をためていって、その集大成といえるこのアルバムはJ-POPの枠には収まらない独自のものだと思ったので、“RickyのPOP=R☆POP”と自信を持って呼ぶことにしました。
──この音をどう呼ぶかといったら、確かに“R☆POP”という言葉がぴったりですね。
Ricky ありがとうございます。アルバムが完成する前にできた曲をiPodに入れて聴いてたんですけど、その時点でアルバムタイトルとして「R☆POP」と入れていたんですよね。
──じゃあ最初から“R☆POP”というキーワードがあったんですね?
Ricky はい。きっとこのサウンドじゃなかったら、他のタイトルになっていたと思いますよ。そのくらい、音に呼ばれたタイトルなんです。
聴くことで「自分は今幸せなんだ」と実感できる作品を作りたかった
──サウンド同様に、今回は歌詞も今まで以上にディープですよね。
Ricky エレクトロな分、人間くさい歌詞がいいなと。“生きる”……存在することに価値があるというコンセプトが僕の中にあって、DASEINから一貫してるんですよ。僕は弱っちいから、生きることにギリギリで。なんで生きているんだろうとか、生きてることが素晴らしいとなかなか思えないとか、そう考えてるのは絶対に僕だけじゃないと思うんです。だから、聴くことで「生きていることはすごいんだ」「自分は今幸せなんだ」と、実感できるアルバムを作りたかった。実際に歌っていることは僕のことだし、僕の存在を知ってくれというようなところが多いんですけど、でもみんなそういう気持ちがありますよね。自分はこうやって生きてるんだよとあえてストレートに伝えたいし、そこに共感してくれる人は絶対いると思うんです。
──Rickyさんの歌詞は韻の踏み方や音の響きが耳に残ることが多いんですが、実際に歌詞を読むとそれだけじゃない深みがあって。特に今回のアルバムの中ではその要素が強くて、そこも温かみのひとつの要素なのかもしれないですね。
Ricky DASEINの頃は歌詞を強調するために古語を使ったり百人一首から引用したりしてましたが、「R☆POP」では伝えたいことをよりストレートに表現してます。でも、ただストレートなだけだとだんだんもの足りなくなってきて、言葉遊びをして。韻も同じようなもんですよ。要はダジャレ好きなんです(笑)。
──「R☆POP」はとても現代的というか、確実に2009年の音ですよね。でも、耳に残るメロディがたくさん詰まっていて、非常に普遍性も高いと思う。そのバランス感が絶妙ですよね。
Ricky どんなサウンドになっても、僕はボーカリスト、シンガーソングライターであって、やっぱり歌を第一に考えてしまうんです。これがサウンドだけに偏ってしまうと、“R☆POP”は成り立たない。それはきっと、このアルバムの制作に携わったみんなもそう思ってるはずです。せっかくソロなんだし、もっとどっぷりとテクノ的なサウンドに挑戦したい気持ちもありますよ。「R☆POP」が完成してやっと“ソロアーティストRicky”の軸ができて、ここからどう楽しんでいこうかという。このアルバムはその第一歩ですね。
CD収録曲
- R.I.C.K.Yのテーマ
- 裸★KING
- 我儘EMOTION
- 流れ星みつけたその夜に
- I'm Alive ~album mix~
- 唯我独SONG ~R+ENG-F remix~
- NIGHT&DAY
- アオイツキ
- 雨のスパイラル ~A Rainy Spiral~
- 「現在」 ~此ノ場所~
Ricky(りっきー)
10月20日生まれの自称宇宙人ボーカリスト、本名Ricky Astrovich Primakov。2001年1月1日にDASEIN(元SEX MACHINEGUNSドラマー JOEとの2人組ユニット)のシンガーとしてメジャーデビュー。激しいドラムとハートウォーミングな歌声が融合した「HYPER BEAT ROCK」という独自のスタイルを打ち立て、2004年1月の解散まで精力的に活動する。その後はRicky自身が率いるバンドR*A*Pや、野村義男らによる仮面ライダーオフィシャルバンドRIDER CHIPSのボーカリストとして活躍。2009年にはテレビアニメ「鋼殻のレギオス」から生まれたヴィジュアル系バンドChrome Shelledに参加するほか、Ricky名義でのソロ活動も始動させる。シャンソンで基礎をしっかり学んだ歌唱力をもとに、状況に応じて声色を変化自在に操り、さまざまな楽曲を歌いこなす進化系ボーカリストである。