ナタリー PowerPush - rice
活動休止の真相と、Raphael復活
櫻井有紀(Vo)、村田一弘(Dr)によるロックユニット、riceがニューシングル「Fake star」をリリースした。この曲は櫻井が、前身バンドであるRaphael(リーダー・華月の急逝に伴い、2001年に活動休止)在籍中に制作した作品。「音楽を続けていく。決してあきらめない」という思いを込めて2001年のrice旗揚げ公演から演奏してきたこの曲を彼らは、華月の13回忌にあたる今年、ついに音源としてリリースする決心をしたのだ。同時に2人は、12月25日の東京・赤坂BLITZ公演を最後にriceの活動を休止することも発表。10月31日、11月1日に行われたRaphael再演ライブへの思いを含め、これまでの経緯とこの先の展望について話を聞いた。
取材・文 / 森朋之 インタビュー撮影 / 佐藤類
意外にも華月が「すごくカッコいい」って言ってくれた
──まずは「Fake star」をシングルとしてリリースすることに決めた経緯を教えてもらえますか?
櫻井有紀 「Fake star」が生まれたのは僕らの前身バンドであるRaphaelの頃なんです。リーダーの華月が絶賛してくれて、「いつかこの曲をシングルにしよう」と言ってたんですが、その後、彼が他界してしまって。ロックをやり続ける、歌い続けるという決意表明を込めて、riceの旗揚げ公演からずっと演奏し続けていたんですけど、華月の13回忌にRaphaelの再演を行なうこともあり、ひとつの節目としてこの曲をリリースしてはどうだろう、と。
──「Fake star」を書いたときのことは覚えてますか?
櫻井 18、19歳くらいのときですから、記憶も“点と点”という感じではありますけど……。
村田一弘 そうだね。
櫻井 当時、Rahaelのメインコンポーザーは華月だったんです。作詞は100%、作曲も90%くらい彼が手がけていて。僕も曲を書いてたんですけど、華月にはヤキモチ焼きなところがあって、いい曲を持っていくとスネちゃうことがあったんですね(笑)。
村田 困ったことに(笑)。
櫻井 シングルのタイトル曲、アルバムの収録曲については当時のプロデューサーがジャッジしてたんですが、要するに僕がプロデューサーに褒められると華月は面白くないっていう。僕自身「作曲は控えよう」と思ってたんですけど、自然と浮かんでくるものをガマンするのはどうかな? っていう気持ちもあったので、夜中、事務所でコツコツ作ってたんですよ。で、ちょうど「Fake star」の原型を作ってるときに、華月がいきなり事務所に入ってきたんですよね。「またイジケちゃうのかな……」って思ってたら、意外にも華月が「すごくカッコいい」って言ってくれたんです。「詞のイメージも沸いてきた」って喜んでくれて、僕もすごくうれしくて……。結局、まともに会話したのはそれが最後だったんですよね。そのときはまだ歌詞がついてなかったから、華月が他界したあと、自分でゼロの状態から書いていきました。
──そうだったんですね……。他人からはうかがいしれないほど深い思いが込められていると思いますが、聴いた人がそれぞれの思いを重ねられるような普遍的な内容を持った曲だな、と。
櫻井 ……そう言ってもらえるのはすごくうれしいですね。19歳なりに一生懸命に考えて書いたんですよ、この歌詞は。「今流行りの最先端でなくてもいいから、10年後も歌い続けられる曲にしたい」って。
「13回忌の年までがんばって続けよう」と思ってた
──レコーディングはどうでした? 特別な意味がある曲だからこそ、音源にするのはかなりプレッシャーもあったと思うんですが。
村田 意外とすんなりいけたと思います。ずっとライブでやってきて、フレーズに関しても体に染み込んでるので。
櫻井 この先もずっと繰り返して聴いてもらえるように、ライブとは違うアレンジも加えてるんですけどね。ミュージックビデオの監督と「どんな絵が浮かぶか?」ということを話してから楽曲のアレンジを手直しした部分もあるし。
──そういうアレンジのテクニックも、この時期だからこそ実現したのかも。華月さんの13回忌、Rahaelの再演を含め、いろいろなタイミングが重なった2012年にこの曲をリリースするのはひとつの必然だったのかもしれないですね。
櫻井 riceをスタートさせたときから、「13回忌の年までがんばって続けよう」と思ってたんですよね。周囲からはいろんな意見がありましたけど、とにかくここまで続けてきたし、riceを12年間続けた意味、その証を示したいという気持ちもあるので。あと、初めてこの曲を聴く人にも「カッコいい」と思ってもらえるような作品にしたかったんですよね。
村田 うん。
櫻井 例えば「riceの応援歴は2年です」というファンの方もいるんですよ。昔から応援してくれる人も、最近riceを好きになってくれた人も、このタイミングで初めて知ったという人にも気に入ってもらいたいですからね。そこはもう、可能な限り僕らが先回りして、いろんな準備をしておかなくてはいけないので。
──riceのキャリアも今年で12年ですからね。どの時代にファンになったかによって、微妙な温度差があるかもしれないし。
櫻井 熱心なファンの中にも「Raphaelのことを知らない」という世代の方がいるんですよ。そういう意味でも、ここで活動を止めて、一度フラットに戻すべきじゃないかなって。昔からのファンの中には「2人が背負っているものを自分たちにも分けてほしい」ってう気持ちがあるみたいなんです。それは本当にありがたいことだけど、「じゃあ、新規のファンはどうなるの?」っていうこともあるし。Raphaelの再演もあるし、「Fake star」をリリースして、いったんrice活動を休止することで、みんなが平等になれると思うんですよね。ちょっと荒治療かもしれないけど。
- ニューシングル「Fake star」 / 2012年10月24日発売 / YURO-RECORD
- ニューシングル「Fake star」CD+DVD 2100円 / YURO-033
- ニューシングル「Fake star」CD 1575円 / YURO-034
初回限定盤CD収録曲
- Fake star
- Friends the nation
- Re:Bye
通常盤CD収録曲
- Fake star
- カサブランカ
- Re:Bye
初回限定盤DVD収録内容
- 「Fake star」PV
rice(らいす)
ヴィジュアル系バンドRaphaelのメンバーである櫻井有紀(Vo)と村田一弘(Dr)により、 2001年4月に結成されたロックユニット。ストリングスやピアノなどを取り入れた壮大なスケールのサウンドに定評があり、2007年にはアジアとヨーロッパを巡る海外ツアーを成功させた。2012年12月25日に東京・赤坂BLITZにて開催される「rice Presents 『最後の聖戦!! ありったけスーパーライブ2012~壮絶で猛烈な12000秒のX'masプレゼント~』」を最後に、無期限で活動休止することを発表した。