ナタリー PowerPush - りぶ
40mP&みきとPと語る歌い手とボカロPの関係性
ネット発の実力派“歌い手”りぶが、ニューアルバム「Riboot」をリリースする。
ニコニコ動画の「歌ってみた」動画投稿を中心に活動し一躍人気を得た彼の新作には、じん「如月アテンション」、れるりり「聖槍爆裂ボーイ」などの人気ボカロ曲のカバーに加え、halyosy、40mP、みきとP、Neru、西沢さんP、風味堂による書き下ろし楽曲を収録。彼の伸びやかな歌声を生かしたアルバムになっている。
今回ナタリーでは、りぶと、アルバムに楽曲を提供した40mP、みきとPによる鼎談を実施。歌い手とボカロP、共通しているようで微妙に立ち位置の異なる3人にそれぞれのスタンスや価値観を語り合ってもらった。
取材・文 / 柴那典
ボカロPはボカロP同士で、歌い手は歌い手同士で……
──ボカロPと歌い手の両方に登場していただく記事というのは、実はナタリーでも今回が初めてなんです。
りぶ あ、そうなんですね。
──なので、アルバムの話に入る前に、まずはボカロPと歌い手というのが、普段からどれくらい交流があるのかを聞きたいなと思って。皆さんはどうですか?
りぶ みきとPさんは、曲を書き下ろしていただくのが今回が3回目で。ちょくちょくお仕事で顔を合わせることもあるんですけれども、みきとPさんも40mPさんも、歌を録音するときに立ち会っていただいたのは今回が初めてですね。プライベートな交流みたいなものは……。あ、1回飲みに行きましたよね。
みきとP 打ち上げかなんかだったかな? いや、あれは完全にプライベートの飲み会だ。
りぶ そうですね。でも、お会いする機会は少ないですね。
みきとP 基本的に、ボカロPと歌い手がプライベートですごく仲良くしてるっていう話はあんまりないんですよ。もちろんそれぞれに仲がいい人たちはいるし、頻繁に会う人もいるんですけど、全体的に見たらそうでもなくて。
40mP 僕はそもそもボカロPにもあんまり友達がいないので(笑)。でも、確かに、自分にとって歌い手さんは未知の存在な感じはありますね。ボカロPとして曲を作っている人には、価値観とかも似たような人が多いと思ってるんですけど、歌い手さんが普段どんな生活をしてるのかとか、全然想像がつかなかったりします。
りぶ やっぱり、ボカロPさんはボカロPさん同士で、歌い手は歌い手同士で、というふうになる傾向はありますね。例えばEXIT TUNES ACADEMYみたいに両方が一緒に出るライブイベントもあるんですけど……。
みきとP そういうときも、ボカロPはボカロPで固まってるみたいな傾向があるよね。
りぶ そうなんですよ。楽屋でも、ボカロPさんは機材の話とかソフトウェアの話とかで盛り上がってるんですけど、歌い手は歌い方の話とかになったりして。そういうところはありますね。
「歌ってみた」はインターネット版“路上ライブ”
──わかりました。では、りぶさんの新作の話に移ろうと思います。「Riboot」というアルバムは1年3カ月ぶりのリリースになりますが、これはどういうところから作り始めたんでしょうか。
りぶ 1stアルバムの「Rib on」を一昨年の9月に出しまして、それからしばらく、別のことで忙しくて歌い手としての活動に専念できない時期があったんです。でも、そっちのほうが落ち着いて、やっとまた歌い手ができるなっていう時期に2ndアルバムのお話をいただきまして「ぜひお願いします!」ということで作り始めたんです。
──歌い手って、そもそもニコニコ動画の「歌ってみた」というカテゴリーで動画をアップしていたところから活動が始まっているわけですよね。そこと比べると、プロとしてメジャー流通でCDをリリースしてライブもするという活動の形態って、地続きではあるけれど違うものだと感じているんです。そのあたりはどう思います?
りぶ 僕もやっぱり、全然違う、別物だなって思ってますね。根本のところで言うと、今の歌い手としての活動は、学生だった僕が「ちょっと面白そうだな」と思って、ボカロPさんたちが作ってる楽曲をカラオケみたいに歌ってインターネットに投稿したところから始まっているので。だから「歌ってみた」は、路上ライブのフィールドがインターネットに変わったようなものだと思っているんです。インターネットになったことで、路上とかライブハウスで歌うよりもさらに手軽にできるようになったわけで。前みたいにCDを1枚1枚配らなくてもよくなったし、インターネット上で聴いてもらえるから、発信することの費用対効果が高いんですよね。
──路上ライブの話で言うなら、例えばゆずの2人は横浜の路上でギターの弾き語りをやっていましたよね。でも、メジャーデビューしてからは路上時代と環境もミュージシャンとしての意識も変わったと思うんです。そういうふうにりぶさんの考え方もここ1年で変わったんじゃないかと。
りぶ そうですね。ゆずさんが横浜で路上ライブをしているときにどういう心境だったかはわからないですけど、僕は最初は本当に興味本位で歌を始めて。そこからやっていることを変えてるつもりはないんですけど、やっぱり聴いてくれる人が増えて、環境の変化に「うわ、すごいことになったな」っていう自覚はありますね。それで気を引き締めるというか、勉強させていただくことも増えて。
- ニューアルバム「Riboot」 / 2014年1月8日発売 / Victor Entertainment
- 初回限定盤 [CD+グッズ] / 2520円 / VICL-64093
- 通常盤 [CD] / 2205円 / VICL-64094
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CD収録曲
- ヨンジュウナナ
[作詞・作曲:みきとP] - 聖槍爆裂ボーイ
[作詞・作曲:れるりり&大柴広己(もじゃ)] - しわ
[作詞・作曲:buzzG] - ロベリア / Lobelia
[作曲:sequel / 作詞:ユミソラ] - スタートアウト・リピートショー
[作曲:TOKOTOKO / 作詞:りぶ、TOKOTOKO] - 如月アテンション
[作詞・作曲:じん] - ワンルーム・オール・ザット・ジャズ
[作詞・作曲:DATEKEN] - ジッタードール
[作詞・作曲:niki] - トビウオの夢
[作詞・作曲:40mP] - 秘密遊戯
[作詞・作曲:Task] - Whiter Than Snow
[作詞・作曲:halyosy] - 東京レトロ
[作詞・作曲:すこっぷ] - Afterglow
[作詞・作曲:ジミーサムP] - 人生は吠える
[作詞・作曲:Neru] - 夜を超えろ
[作詞・作曲:ラムネ] - さよなら告げた
[作詞・作曲:渡和久 / 編曲:風味堂]
- ヨンジュウナナ
りぶ
動画共有サイトを中心に活躍する男性シンガー。音域の広い透明感のある歌声が特徴で、2013年11月時点で歌唱動画の総再生回数が1200万回以上を誇るなど高い人気を誇る。2012年9月に1stアルバム「Rib on」を発表。ライブやイベントにも積極的に出演しながら、ネットシーン以外でも着実に知名度を獲得する。2014年1月に2ndアルバム「Riboot」をリリースした。
40mP(よんじゅうめーとるぴー)
ボーカロイドを使用したオリジナル曲を動画サイトで発表するボカロP。2008年からニコニコ動画にオリジナル曲の投稿を開始し、同年公開された2作目「Melody in the sky」で早くもネットユーザーから多くの注目を集める。2012年に東京、2013年に神戸と埼玉で、7人の歌い手と生バンド、ストリングス、ブラス、コーラス隊を率いたホールコンサート「虹色オーケストラ」を開催。2013年夏にはNHK「みんなのうた」に「少年と魔法のロボット」が選ばれ、ボカロ曲の採用が番組史上初ということもあって大きな話題になる。同年9月には自身のボーカロイド曲をリメイクしたベストアルバム「少年と魔法のロボット VOCALOID BEST, NEW RECORDINGS」をリリースした。
虹色オーケストラ 追加公演
2014年3月1日(土)
神奈川県 よこすか芸術劇場
みきとP(みきとぴー)
ボーカロイドを使用したオリジナル曲を動画サイトで発表するボカロP。「小夜子」のような心を揺さぶるシリアスなギターロックから「いーあるふぁんくらぶ」のようなアッパーなディスコポップまで、幅広いタイプの作品を発表している。またボカロPとしての活動のほか自身が歌った動画の投稿も行っている。2013年4月には初音ミクをフィーチャーした初のオリジナルフルアルバム「僕は初音ミクとキスをした」をリリースした。