Rhythmic Toy World|プロデューサーと語る5年間とこれから

初めて“Rhythmic Toy Worldとして”直孝が曲を書いてきた

川原 内面も外見もしっかりしてきて、これから音楽でずっと食べていくことへの腹の決め方もできての今回のメジャーデビューだよね。最近はどんな楽曲を作るか、どんなライブをしていくのか、どういうバンドであり続けるのか、みたいな話がよくできてるし。

内田 俺らのライブは「楽しい!」の一点突破がいい。その感じになってきましたよね。そうすれば、お客さんも受け取って持って帰るものがわかりやすい。終わったときにはもう、嫌なことを忘れて笑いながら帰ってる。そういうライブを、来てくれる人に届けていかなきゃいけないバンドなんじゃないかって。

昔のアーティスト写真を真似するRhythmic Toy World。

川原 そのあたり、4人でちゃんとわかってきたよね。俺は最近までメンバーと横並びにいた感じだったけど、成長してくれたから一歩離れられたというか。よりお客さん側でバンドを見てるし、そういう観点でセットリストにも意見するようになったかな。前作の「TALENT」(2017年9月リリースの3rdフルアルバム)がセルフプロデュースだったのも大きいよ。

内田 ドラムの音量についての悩みもやっと晴れた感じ。歌を食ってしまってるんじゃないかってところで、前作ではドラムの音を下げてみたけど、下げたら下げたで悪い意味で「ポップス寄りな聞こえ方」になっちゃってたことがわかったから。

磯村 ライブをやると、俺らとお客さんのイメージが乖離してる現象があったね。だから、歌を食わないで迫力を出すやり方を「SHOT」では模索して。

内田 スイートスポット的な音を貪欲に追求した点で、俺らとしては新しかったと思う。ビクターの大きなスタジオで、録り音もよくなったし。

川原 メジャー1発目でコケたくないしさ、今までの失敗をちゃんと踏まえようってのはあったよね。Rhythmic Toy Worldとして求められてる音楽をやることに、しっかり集中できた1枚だと思うな。前までは比較的お題みたいなものもなくバーッと30~40曲作ってもらって、挙手制で決めていく感じだったじゃん。

内田 「狙った」っていうと言葉がアレですけどね(笑)。

Rhythmic Toy Worldの中に入ってみた川原祥太(左から2番目)。

川原 初めて“Rhythmic Toy Worldとして”直孝が曲を書いてきたなって、俺はすごく思ったよ。以前は“内田直孝として”だったのが。それは聴いてくれる人にも伝わるかもしれない。だとしたら、いいことかなと。

内田 「歌詞の書き方、変わったね」って言ってくれましたよね。

 うん、そう思うなあ。

川原 前のほうが背伸びしてカッコつけてた。「こう思われたいんだな」みたいな。そういう人間が書いてた歌詞だったと思ってて、それはそれでよかったんだけどね。聴き手がわかったうえで聴いてれば。でも、メジャーだと今まで以上に不特定多数の人に届くチャンスが増えるわけで。となると、内田直孝って人間を知らないで聴くわけだから。なおさら本当に声に合った歌詞、等身大であってほしかったの。「思ったことをそのまま書いていいよ」って話はすごくしたよね。もうみんな30歳くらいだし、この5年で積み上げてきたものを素直に披露していい時期なんだよ。

須藤 確かにそうですね。

俺らの理念とすごく近いものを持ってるメジャーレーベル

川原 リズミックってたぶん2、3年前にメジャーへ行ける実力があったけど、あの頃にそうしてたら今みたいなバンドになれてなかったはず。メンバーも自分もそうだし、会社としても未熟だったからね。でも、いろんな経験が積めてかなり強くなって、そのタイミングでBLACK SHEEP RECORDと出会えたのは大きいと思う。俺らの理念とすごく近いものを持ってるメジャーレーベルって初めてだったのも。

磯村 メンタルはこの2、3年で各々鍛えられたよね。弱かったもん、俺ら。

内田 歌詞だけ見てもわかるくらい変わったから、それは財産だよ。理想を追い求めすぎるんじゃなくて、まず普段4人でいる素の状態を愛してもらえればいいと思えてきた気がする。背伸びしてても、いつかメッキが剥がれちゃうだけだしさ。「お前は何しててもふてぶてしいんだよ」って、最近も祥太さん言ってくれましたよね。

 着飾ってもしょうがないって意味ね(笑)。

内田 「今日のライブすごくよかった!」「MCやお客さんとの絡み方も抜群だった」みたいな話の中で、「何をやってもどれだけ謙虚にしてると思ってようが、お前のふてぶてしさは隠せないな」って(笑)。「だから、それを理解したうえでどういう言葉を聴き手に投げかけてあげられるか、そこに力を注いだほうがいい」って。謙虚に見せる努力をするくらいだったら。

須藤 MC1つ取ってもいろいろ言ってくれるんだよね、祥太さんは。

内田 年月が経てば経つほど、そのありがたみがわかってくる。

「さなぎ」は俺らのスタートの曲

磯村 今作収録の「青く赤く」の構成を考えてるとき、祥太さんが「昔の自分たちだったらどうしてた?」って聞いてきたじゃないですか。あれ、初めて言われた気がしたんですよね。

川原 これだけバンドが成長してくると、本来アーティストが持ってなきゃいけないわがままが減っちゃう気がしない? だから、メジャーのタイミングでもう1回思い出してほしかったんだよ。純粋に音を出して楽しい感覚がなくなったら、薄っぺらく聞こえちゃうもんね。

磯村貴宏(Dr)

磯村 はー、なるほど! 確かに言われて一瞬「え?」ってなっちゃったし、凝り固まってた部分もあったのかも。

川原 初期衝動と今のバンド脳がうまく融合したらどういう感じの音になるのか、聴いてみたいのもあったね。「青く赤く」は新しさが出てると思う。

内田 そもそもはラブソングじゃなかったしね、この曲。でも、あるとき変えてみたらよくなる気がしたんだよね。全然ラブソングを書かないバンドだったくせに(笑)。

川原 そうだよ。「なんで?」って話をしてね。

内田 「これだけパーソナルな思いを書いてるアルバムだったら、ものすごくストレートなラブソングがあったほうがより人間らしい1枚にできるんじゃないか」って。その意味でも新しい。「リバナ」もそうか。

須藤 もともとは違う歌詞だったね。

内田 これは今年1月26日の(TSUTAYA)O-EASTのツアーファイナルが大きい。

川原 そうだよね。

内田 やすえ(内田の母)がライブに来て、すごく喜んでくれたんだよね。お姉ちゃんも来てたんだけど、「お母さん、うれしくて泣いてたよ」って言ってくれたり。

 いいね。

内田 なんかね。迷惑かけながらもわがままに貫いてやり続けてるバンド活動で、親に今そういう気持ちになってもらえてることに、自分も胸を打たれた感じ。改めて親に対して、もっともっと音楽をやって恩返ししたいなって気持ちが、あの日ギュッと強くなってさ。ちょうど歌詞を書いてるタイミングだったんで、もう素直にそのまま書いたわ。

須藤 家族に感謝だね。

磯村 妹の話とつながった感じ(笑)。

 今まで応援してくれた人たちにもね。感謝。

内田直孝(Vo, G)

内田 そう。もちろん新しいリスナーに向けたアルバムでもあるけど、これまで支えてくれた人たちがいたから今の自分たちがいるじゃん。だからこそ、お客さんたちが発信して作ってくれたパワーワードをタイトルにした「ASOBOYA」って曲があってさ。俺らはライブで欠かせない楽曲にしたいと思ってるもんな。

 「ライブハウス」と「さなぎ」も録り直してね。

内田 「ライブハウス」を入れたいのは、4人とも思ってたんだよね。

須藤 実はそうだったっていう。

内田 いつしかお客さんの間で急に人気曲になったじゃん。

川原 最初は全然定番じゃなかったよね。

内田 MVがあるわけでもないし、限られたところでしか聴けないような曲だったのに、口コミで広まったというか。今では俺らのテーマソングって空気感でやれるようになってきたから、メジャーデビュー作に入れられたら「ライブハウス」の存在は確実なものになるんじゃないかなって。一方で「でも、祥太さんはどう思うかな?」ってのもあったんだよね。

磯村 そうだったね。

内田 そしたら、祥太さんが急に「『ライブハウス』入れない?」って言い出して。「えっ!? いいんすか!」みたいな(笑)。

川原 考えてることは同じだったな。

内田 「さなぎ」はそれこそ祥太さんが「自分の人生を変えてくれたほどの曲だから、その気持ちになってくれる人はまだ絶対にいるし、時が経っても俺と同じ衝撃を感じてくれるやつが絶対にいるから」って言ってくれたんですよね。メジャーデビューのタイミングで、出会いの曲としてもいいと思う。

川原 俺らが始まった、スタートの曲だからね。

新しい場所へ行くための変革の時期

 こういう信頼関係が結ばれてるバンドとプロデューサーって、なかなかいないと思うよ。

磯村 ライブの打ち上げでこの座談会みたいな話、毎回してるもんね。

川原 先輩後輩の感じがやっと抜けたよね、この1年半くらいで。俺もメンバーをよりリスペクトできるようになったし。逆にみんなの成長に追いつかなきゃいけない焦りもあるよ。自分も毎日がんばって、若い子たちの好きなものに触れたり、今まで避けてきたことをやってみたりね。

 あ! だから、最近「荒野行動」(スマートフォン用のバトルロイヤルゲーム)を俺らと一緒にやったりしてるんですね。

川原 そういうのも一環だね。ミュージカルを観に行ったりもしてるよ。

磯村 えー! 初耳ですよ。

内田 それで最近、ミュージカルのエンタテインメント性について熱く語ってたのか!

川原 すごく楽しかった(笑)。役者をやってる友達の舞台を観に行ったりね。そういうところで感じたことで、フィードバックできることがあればする。それもヘッドライトの役割かなって。新しい場所へ行くための変革の時期だからさ。

Rhythmic Toy Worldと川原祥太(写真中央)。
Rhythmic Toy World「SHOT」
2018年4月25日発売 / Victor Entertainment
Rhythmic Toy World「SHOT」初回限定盤

初回限定盤 [CD+DVD]
3564円 / VIZL-1373

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Rhythmic Toy World「SHOT」通常盤

通常盤 [CD]
3024円 / VICL-64993

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CD収録曲
  1. BOARD
  2. 僕の声[Album Ver.]
  3. ラストオーダー
  4. さなぎ[想像力の最前線ver.]
  5. 会えるように
  6. ペーパー人間
  7. ブッシャカ
  8. 青く赤く
  9. ライブハウス
  10. 27時
  11. 革命の唄
  12. ASOBOYA
  13. リバナ
初回限定盤DVD収録内容
  • 「キオク」

インディーズ初期からメジャーデビューに至るまでを追いかけたドキュメンタリー映像

Rhythmic Toy World「SHOOTING TOUR」
  • 2018年5月16日(水)千葉県 千葉LOOK
  • 2018年5月22日(火)秋田県 秋田LIVE SPOT 2000
  • 2018年5月23日(水)岩手県 the five morioka
  • 2018年5月25日(金)神奈川県 横浜BAYSIS
  • 2018年5月27日(土)富山県 Soul Power
  • 2018年6月19日(火)福岡県 小倉FUSE
  • 2018年6月20日(水)大分県 club SPOT
  • 2018年6月30日(土)静岡県 Shizuoka UMBER
  • 2018年7月5日(木)栃木県 HEAVEN'S ROCK Utsunomiya VJ-2
  • 2018年7月8日(日)長野県 ALECX
  • 2018年7月13日(金)岐阜県 yanagase ants
  • 2018年7月14日(土)兵庫県 MUSIC ZOO KOBE 太陽と虎
  • 2018年7月16日(月・祝)岡山県 CRAZYMAMA 2nd Room
  • 2018年7月17日(火)香川県 DIME
  • 2018年7月19日(木)京都府 GROWLY
  • 2018年7月27日(金)群馬県 前橋DYVER
  • 2018年7月29日(日)埼玉県 西川口Hearts
  • 2018年8月8日(水)三重県 club chaos
  • 2018年8月19日(日)福島県 郡山CLUB #9
  • 2018年8月25日(土)茨城県 mito LIGHT HOUSE
  • 2018年9月14日(金)北海道 COLONY
  • 2018年9月16日(日)宮城県 enn 2nd
  • 2018年9月22日(土)広島県 CAVE-BE
  • 2018年9月24日(月・振休)愛知県 名古屋CLUB QUATTRO
  • 2018年9月28日(金)大阪府 Shangri-La
  • 2018年9月30日(日)福岡県 Queblick
  • 2018年10月29日(月)東京都 Zepp DiverCity TOKYO
Rhythmic Toy World(リズミックトイワールド)
Rhythmic Toy World
内田直孝(Vo, G)、須藤憲太郎(B)、岸明平(G)、磯村貴宏(Dr)からなる4人組ロックバンド。2009年に結成し、2010年に現在のメンバーとなる。2012年にアマチュアバンドコンテスト「RO69JACK」で入賞し、2013年にはグッドモーニングアメリカが企画するコンピレーションアルバム第3弾「あっ、良い音楽ここにあります。その参」に参加。2013年から2014年にかけて3部作としてミニアルバム「軌道上に不備は無し」「オリンポスノフモトニテ」「XNADIZM」をリリースした。2015年に1月に1stシングル「いろはにほへと」、3月に1stフルアルバム「BUFFeT」を発売。「輝きだす」が森永製菓「DARS」のCMソングに使用されると、知名度はさらに広がる。2016年7月にニューアルバム「『HEY!』」を発表。東京・赤坂BLITZでのワンマン公演を含めたツアー「『HEY!』の『HEY!』による『HEY!』の為のツアー」を大成功に収めた。2017年9月に初めてのセルフプロデュースによるアルバム「TALENT」をリリース。2018年4月にビクターエンタテインメントのBLACK SHEEP RECORDSからメジャー1stアルバム「SHOT」を発売した。